第52話 決着
覇王は起き上がってきた。その体躯の表面にさきほどまであった防御魔法のバリアは完全に消えていた。
起き上がってきた覇王は自分から防御魔法のバリアが消えたのを感じ、すぐに怒り狂い始める。咆哮し、全身を震わせる。そして今度は力を大きく高ぶらせてゆく。覇王は魔法攻撃から物理攻撃にでようとする。
覇王は狙いをソルに絞る。ベルーラスはいつも魔導士官よりも司教士官を憎む。どんなに魔導士官にダメージを与えても、即座に回復を行う司教士官がなにより憎かった。憎しみの覇王は突進を開始し、ソルを食いちぎろうとする。その動きはあまりに早かった。
それをまたバレンがかばっていた。しかし覇王の攻撃はとても盾で防げるものでもなく、バレンはソルを突き飛ばし、覇王の前にただ立ちはだかる。ソルは倒れる。
起き上がったソルが気づくと、バレンの左腕が食いちぎられていた。
左腕を食いちぎられたバレンは、地面に転がり、絶叫をあげる。残ったバレンの左肩から大量の血が流れ始める。
尚も覇王はソルに襲いかかろうとしてくる。
そこで宙に浮いていたアクリラがソルの側に寄ってくる。さらに配下のベルーラスとの死闘を終えたアクリラ隊の魔導士官が、いつの間にか覇王との戦いに加わろうとしてくる。やがてソルを中心にアクリラとアクリラ隊の魔導士官が立っていた。アクリラも第四段階の魔導魔法を何度も使ってせいで、ずいぶんと魔力を消耗させていた。
「何をしている。ザコがいくら集まって何になる。それにすでにボロボロではないか」
アクリラ隊は配下のベルーラスとの戦いで、魔力をほぼ使い果たしていた。とても覇王に何かできる状態ではない。
地面に転がったバレンのほうにもアクリラ隊と共に戦った司教士官達が駆けつけていた。しかし食いちぎられた左腕は、傷を治すグラリスではどうすることもできない。司教士官達はともかくバレンに止血を施す。
防御魔法のバリアがなくなったとはいえ、覇王はまだ無傷だった。
「ソル、今こそあれだ、あれを頼む!」
アクリラがそう言うとソルは魔力を急速に高める。覇王はその様子を見て、途端に嫌な予感を感じる。防御魔法のバリアが剥がれたといっても覇王の体力や魔力は十分なものだった。しかし次のソルの行動を許してはいけないという野生の勘が覇王によぎる。
覇王はすぐにギアッチの魔導魔法を唱えようとする。しかしアクリラはその行動を予測しており、覇王にフィアンマの魔導魔法を使う。
覇王がうろたえている間に、ソルの魔力が最高潮に高まる。そしてソルは第三段階の魔力を回復する魔法、マジリスを全体化にして唱えた。
「コム・マジリス!」
アクリラ隊の魔導士官とアクリラの魔力がみるみる回復していく。覇王はそれを信じられない現実が起きた目で見ていた。アクリラの魔力が尽きつつあったことで、防御魔法のバリアがはがされてもまだ覇王のほうに勝算は高かった。それがソルが唱えたコム・マジリスで一気に形勢は逆転してしまった。
覇王はともかくやられまいと再び魔力を高めて、なおもギアッチの魔法を使おうとする。しかしその覇王の行動を予期していたアクリラは、事前に魔力が回復した際には即座に魔力を高めるようアクリラ隊に指示していた。
覇王はギアッチを唱え終えようとする。しかしアクリラ隊のほうが魔力を高め、唱え終えるのが一歩早かった。
「フィアンマ!」
「トオーノ!」
「トルナード!」
アクリラ隊はそれぞれに得意な魔導魔法を渾身の魔力で覇王に一気にぶつけていく。さすがの覇王も魔導魔法の猛攻撃を一気に受け、みるみる弱体化していく。
アクリラ隊はソルが回復した魔力を惜しみなく覇王に使う。一つ魔法を唱え終っても、連続で魔導魔法を唱え続ける。
辺りは魔導魔法の閃光で明るくなる。凄まじい魔導魔法の連続は爆風を起こす。その爆風からソルをアクリラがかばい、バレンを何人かの司教士官が守っていた。
一度連続した魔導魔法が収まる。そこにいた覇王はもはや瀕死だった。
「これで最後だ。ヴァランガ!」
止めにアクリラが第四段階の雪崩の魔導魔法を使う。
しばらくすると雪崩に圧死した覇王がそこにいた。
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