なぞなぞブレイクタイム
(ねえねえ、暇ー。なんか面白い話をしてよー)
「また突然ね。何よ、面白い話って」
(何でもいいよー)
何でもないような昼下がり。
窓際に座り紅茶を飲んで本を読む心美の膝でくつろいでいたユキは、突如暇を訴え始めた。
心美は読んでいた本にしおりを挟みテーブルに置き、雑に構って欲しいという旨を伝えてくる白い毛玉の退屈を凌ぐために頭を働かせる。
「面白い話はできないけど、ちょっとしたなぞなぞなら出せますよ。それでもいいですか?」
(なぞなぞ? 何それ?)
「じゃあ例題を出してみましょう。お茶はお茶でも子供が喜ぶお茶はなんでしょう?」
(子供が喜ぶお茶? えー、なんだろう?)
「答えはおもちゃ。こういう感じのちょっと頭を使えば分かる問題を出していくわ」
(いいじゃん、面白そう! 次行こ!)
心美は面白話の代わりに自分の知っていた簡単ななぞなぞを披露した。
少し頭を柔らかくして考えれば解ける問題。
なぞなぞを知らないユキにとっては興味を引くものだったのか、思いのほか食い付いて次の問題をせがむ。
「じゃあ、持つと手が震えてしまう家具はなんでしょう?」
(えーと、さっきみたいな感じで考えればいいんだよね。えっと、手が震える……プルプル、ブルブル……あっ、テーブル! どう? 合ってるでしょ!)
「正解よ」
(やった!)
例題を経て考え方を理解したユキは、心美の出した次のなぞなぞを少し考えただけで当ててしまう。
正しい解を導き出せたことにはしゃぐユキの様子につられて心美も微笑んだ。
(ねー、もっと無いの?)
「ええと、じゃあ呼んでも呼んでも返事をしてくれないものは何でしょう?」
(えー、何それ? 呼んでも返事をしないものー? うーん、分からない!)
「答えは本ね。本は読んでも返事をしてくれないでしょう?」
(あー! 読んでもってそういうことかー! そんなの分からないよー。はい、次行こ!)
頭の中で『呼んで』と『読んで』の変換が咄嗟に思いつかなかったユキは心美から答えを教えられて悔しがる。
挽回するために気持ちを切り替えて次の問いを待つ。
「じゃあこれが最後よ。放っておくて消えてなくなってしまう椅子は何でしょう?」
(えー、消えちゃう椅子? 消える……椅子? えー、ヒントちょーだい!)
「ヒントね。ヒントはあなたが得意かもしれないという事ね」
(私が得意な事? えー、なんだろ?)
またしてもパッと思いつかない様子で、どうしても答えたいユキは心美にヒントを与えてもらう。
受け取ったヒントは、己の得意な事。
その情報を元にユキは頭を悩ませる。
(得意かー。魔法? 水、風、光……氷……アイス! アイスでしょ!)
「正解よ。アイスは放置しておくと溶けてなくなってしまうでしょう? よく分かったわね」
(へへー、すごいでしょー)
ヒントを貰ったとは言え、自力で答えに辿り着けたユキはとても嬉しそうだ。
心美は褒めろと言わんばりに差し出された頭を撫でながら、ユキの頑張りを称える。
(あー、面白かった。このなぞなぞ……だっけ? アオちゃんに出してみようかな?)
「それも面白そうね」
(じゃあ、さっそく出してくるね)
そう言って心美の膝を陣取っていた白い毛玉は、ぴょんと飛び降りて駆けて行った。
その軽いフットワークを見届けた心美は閉じていた本に手を伸ばし、気まぐれなペットによって中断させられた読書を再開するのだった。
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