紅眼ポリグラフ
(ココミ、目が薄く光ってるね)
「はい、光ってますね」
何気ない日常を謳歌していた心美に変化が訪れた。
オッドアイの片割れ。
右の赤い目が突如輝き出したのだ。
左の碧眼は魔力を可視する瞳だ。
その事を考慮するならば、この瞳も何かが見えるはずだ。
そう考えて至って普通に過ごしているが、心美が特に感じることはない。
「まあ、今は特に変化は見られませんが、そのうち何か分かりますよ。気長に待ちましょう」
(前みたいに検証に動いたりしないの?)
「あれにはもう懲りました。焦るほどのことではないでしょうし、答えが降ってくるのを待ちますよ」
気にならない訳では無いが、急いで調べあげる必要も無い。
気長にゆっくり、自ずと効果が判明するのを待てばいい。
心美は変化に気を配りながらも、心をフラットな状態にして過ごしていた。
「そういえば朝起きたら保存食として作っていたお魚の干物が少し減っていたような気がしたのですが、何か知っていますか?」
(……いやー、知らないかなー?)
明らかに焦ったように、それでいてカタコトで否定を述べるユキ。
その時、心美の瞳に黒い渦巻きのようなモノが見えた。
「なるほど……黒く見える。これがこの瞳の力ですか……」
(え、何か分かったの!?)
「ええ、分かりましたよ。あなたが
(えっ? 嘘? なんの事かなー?)
「これもまた黒です。というより心を読める私に嘘なんてついても仕方ないでしょう?」
(うう、そうです! 私がやりました!)
「正直でよろしい……と言いたいところですが……これもまた黒いですね」
非を認めて正直に白状したようにも思える。
だが、心美の瞳はまたしても黒い渦を見た。
反応したのは
そこがもし嘘だというのならば、自ずと答えは見えてくる。
「共犯者……いますね?」
(……いないよ)
「いるんですね」
(います)
「スカー、あなたですか?」
(……黙秘する)
「なるほど、その回答は賢いですが、それ自体が答えを述べたようなものです」
黙秘に対して心美の瞳は反応を示さなかった。
問に対して答えてないのだから真実も嘘も関係ない。
「心を深く読めば嘘なんて読み取れますが、いちいちそのためだけに深くまで潜るのは本意ではないので……この瞳は便利でいいですね」
言葉に混じる嘘を黒い渦で教えてくれる
それが心美の紅眼の効果だった。
「さて、念の為に確認しておきましょう。ユキ、犯人はあなたたちだけですか? はいかいいえで答えなさい」
(……いいえ)
「ありがとうございます。アオバも共犯者ですか」
(待って! 私が言い出したことなの! だから怒るのは私だけにして!)
心美のポリグラフが真実を導いた。
全員がグルだという解答。
しかし、ユキが言い出しっぺは自分だと白状し、お叱りをすべて自分に引き込もうとした。
その言葉に嘘は見えず、本気で仲間を庇おうとしているのが伺える。
そんな偽りのない心を読んで、心美はユキをそっと撫でる。
「よく正直に言えたわね。次からつまみ食いする時はちゃんと言いなさい」
(……それだけ?)
「あら、もっと怒った方がいいのかしら?」
キョトンとしたユキに心美が意地悪そうに言うと、ユキとスカーは揃って首を横に振った。
「別に食べるなとは言わないわ。でも、こっそりつまみ食いをしてそれを隠すのはやめてちょうだいね」
意図せぬタイミングでだが、もう片方の瞳がポリグラフであると判明した。
その事で気分もいい心美はこれ以上咎めることはない。
後でアオバにも軽いお叱りをしようと心に決めて、二匹のペットにはこれ以上何も言うことは無かった。
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