その瞳に何を映す?⑭記憶
(写真の切れ端……? 破かれてたのも変だけど、それがここにあるのも変だね)
「そうですね。写真は飾るものであって破り捨てるものではないですからね。ですがその片割れがここにあったということは、過去のヒロくんが破いて持ち出していた可能性が高いです」
(そうなの? 何で?)
「まだ確実とは言えませんが、最後に触ったのが破いた本人だとすれば、そのまま持ち帰ったと考えるのが自然では? まあ、何者かが偶然ここを隠し場所に選んだ可能性もありますが……」
(うーん? どうだろうね?)
何も手を加えることがなければ写真が勝手にバラけるなんてことはない。
明らかに引きちぎられたような跡。
そしてその欠片の在り処。
あくまでも可能性の一つではあるが、この部屋の主――――つまりヒロがこの写真に手を加えた張本人である可能性が高い。
そう考えた心美は顎に手を当てて、少し悩む素振りを見せた。
「この写真に関しても、パズルのピースの隠し場所に関してもどうにも引っかかりますね」
(やっぱりヒロくんかな?)
「と考えるのが自然でしょう。やはり……見てみましょうか、記憶」
(大丈夫なの? また大変な事なったりしない?)
「こうして二つの瞳を開くのも慣れてきていますし、そちらの方も少しは耐性がついたと信じたいですね……」
何かしらの意図を感じさせる事ばかり。
それを暴きたいという欲。
そしてその手段を持ち合わせているかもしれない自分。
躊躇いも薄れ、徐々に瞳の使用に関するストッパーが外れかけてきている。
だが、それでも、彼の記憶に答えがあるのなら、覗いてでも見透かしたい。
心を読む瞳が通用するのなら、試してみたい。
そう強く思う心美は決心した。
「私も覚悟を決めました。やりましょう。彼の記憶を見ます」
(ま、ココミならそう言うよね。言い出したら止まらないのはいつもの事だけど、危ないと思ったらちゃんと止まってよ?)
「善処はしますよ。ええ、善処はね」
心を読む。
そのさらに先、記憶を読む。
そのリスクを差し引いても得られるものがあるのなら、やる価値はある。
これまで使わずに残し続けてきた切り札をここで切る決心。
それがついた心美は、どこか吹っ切れたような顔をしていた。
だが、記憶を侵す行為によるリスクは前例がある。
心美が大きく傷付く可能性がある。
そうだと分かっていても、心美はきっと止まらないだろう。
苦笑いを浮かべながらユキから窘められる心美だが、いざその段階に差し迫ってもおそらく退くことはない。
そうまでしてでも読むことに意味のある記憶が存在するかは定かではない。
それでも心美は敢行すると決めたのだ。
「さて、あなたが何を思って、何を感じて……その行動を取ったのか。すべて見せてもらうわよ」
千里を見通す瞳はまたお役御免。
今心美に必要なのは、見えない存在を見るための瞳。
心を読む瞳+霊視の瞳。
再び姿を捉えることができるようになった幼い少年の霊を、心がそこにある限り決して逃れることのできない侵略の瞳が、これでもかというほど力強く、怪しく射抜いていた。
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