その瞳に何を映す?⑨欠けたピースの行方②
「さてさて、ここは書斎ですか。ここにも誰かがいた形跡がありますが……これもヒロくんなのでしょうか?」
(分からないよ? ココミが見逃してるだけで、他にもいっぱい幽霊がいるかもしれないでしょ?)
「怖いこと言わないでください。確かに霊視で隈無く見通せた訳では無いですが、明らかに霊視が反応したのはヒロくんだけでしたのでその可能性はあまり考えたくないですね……」
こちらも外から見て気になった場所の一つ。
読みかけの本が置かれている書斎だ。
その形跡を残した者は誰か。
心美は順当に考えるならばヒロの可能性が高いと思うが、ユキはないとも言えない可能性を脅かすように言う。
せっかくヒロから離れて、霊視の瞳も閉じて顔色もよくなってきたところなのに、考えたくもない可能性を突きつけられ心美の表情は一気に優れなくなる。
そんな青ざめた顔の心美は、書斎の机に置かれていた写真立てに目を引かれた。
「ああ、こちらでもカメラのようなものがあるんですね。魔道具の類でしょうか? 今度探してみましょう」
写真立てを見てこの世界にもカメラに準ずるものがあると知った心美は、どんなものなのか興味を持つ。
そしてその写真立てに近付いて手に取って見た時に動きを止めた。
「この写真……破れていますね。どうしてでしょう?」
(ほんとだ。真ん中が無くなってるね)
「真ん中にも誰かいたように見えます。両隣の男性と女性を両親と仮定するならヒロくんでしょうか?」
(分からないね。これも探してみる?)
「……いえ、今はパズルのピースを探しましょう。あまり待たせてしまってはアオバに申し訳ないですからね」
悪い言い方をすれば、心美はアオバにヒロの相手を押し付けて出歩いている。
こうしてヒロから離れて気持ちを落ち着けることができるのはありがたいが、あまり待たせすぎるのも忍びないと考え、優先順位を守る。
写真立てを元の位置に戻して肉眼と千里眼の瞳を駆使して探す。
床や棚の下などはユキに協力してもらいながら、心美は引き出しなどを引いて隈無く探していく。
しかし――
(中々見つからないね。ここにはないのかな?)
「そうですね。普通に考えたらここに遊び道具の欠片があるとは思えませんが……食堂で見つけたピースのことを考えるとどこにあるかはまったく予想がつきません」
(んー、それもそっか)
「ですが、千里眼であちこち見ても見当たらないということは、千里眼で見えないところにあるのかもしれませんね。たとえば……本棚に並べられた本の後ろとか」
そう言って心美は机の後ろに大きくそびえ立つ本棚に並ぶ本を取って、机に置いていく。
心美の千里眼は視界を飛ばす。
だがそれは立てられた本の奥や、閉じられた本の中身などを見通すことはできない。
あくまでも見えるものしか見えないのだ。
そのためこの部屋もまだ見れていない箇所は多々ある。
そうして本を引っこ抜いていく内に、心美は違和感の覚える本を手にして、ページをペラペラと捲る。
「閉じられている本にしてはどうも分厚いような気が……やっぱり……!」
ページを捲っているとポロリと何かがこぼれ落ちた。
心美がそれを拾い上げ確認すると、落ちたのは足りないピースの一つだった。
「どうして本の中に隠すように挟んであるのかしら? これはどちらかと言うと意図的な感じがするわ」
食堂の隅。観葉植物の鉢の中も謎ではあるが、何かの拍子にポロリと落としてそこに入り込んでしまった可能性は考えられる。
だが、本の中に挟まるというのは、誤って紛失したと考えるにはあまりも不自然すぎる。
こちらのピースに関しては何か意図的な隠し方がされていることに心美は少し考えるが、はっきりとしたことはまだ分からない。
「釈然としませんが……見つかったのはよしとしましょう。ですが……こうも意味不明なことが続くようなら記憶に手を出してみるのもありかもしれませんね……!」
ひとまず二つ目のピースは見つかった。
しかし疑問も増えた。
心美は複雑な心境のまま、最後のピースを見つけるために、書斎を後にするのだった。
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