その瞳に何を映す?②検証
(ココミのそれって増えるんだ……びっくり……!)
「まったくです。この瞳も身体の一部なので
心美は瞳の存在を感知できる。
そのため今まで何もないところに瞳の存在を感じたときは、かなり狼狽えていた。
そしてその瞳は、これまで開くことなかった左手の平にあった瞳と同じように、心美の意思で開くことができない。
「うなじの瞳は開かない以上効果の検証のしようもありません。こっちはひとまず置いておいて……まずはこちらの検証ですね」
心美は手入れを終えた瞳をそれぞれ元の場所に戻し、
効果不明の瞳だけを手元に残す。
依然心を読む瞳は開いたまま、その瞳も開いてみるがやはり現時点で何か変わった様子はみられない。
(ここで試しても意味ないのかな?)
「そうかもしれませんね。露見する可能性のある場所での使用は控えたいところですが、こうしていても埒が明かないのであればやむを得ませんね。あまり気は乗りませんがこの瞳を開いたまま出歩いてみましょうか」
自宅では見える物も限られる。
その中では本領を発揮できないため何も変化が見られないのかもしれない。
ならば出歩いてあちこち見て回るしかない、というのが心美の判断だ。
心美は基本的に人目に付く場所での開眼は避ける傾向にあるが、今回は仕方ないと露見の可能性に目を瞑った。
出かける際にユキに同行の有無を尋ねるが、当然一緒に行くと即答するのだった。
♡
自宅を出て、テレポートをしながら森の中を移動してきた心美。
本来なら数回のテレポートで森を抜けること自体はできるのだが、なるべく見逃しがないようにするために徒歩での移動の割合をいつもより増やしている。
しかし、特に何が見えるという訳でもない。
何事もなく町へと着いてしまった心美は、人の波に紛れながらこっそりと左手の瞳を開いて周囲を観察しながら歩く。
(ココミ、何か変わったことはあった?)
ユキの心の声が受け取った心美は返事をするのではなく小さく首を振った。
やはりこうした人前での使用はどうしても制限が付きまとう。
額の心を読む瞳は長い前髪とフードで。
左手の瞳はダボついた大きめの服の袖でそれぞれ隠しているが何が起こるか分からない以上細心の注意を払わなければならない。
特に心を読む瞳は普段から使い慣れているが、こういったところで使っているとついペットの心の声に返事をしそうになる。
大きなひとりごとを発して恥ずかしい思いをしないために、気を張っていなければいけないのだ。
(しかし、何も分かりませんね。現状ただただ周囲の人の心を読んでいるだけです)
心美は行く人々を眺めながら考える。
変わりばしない視界、正常に効果を発揮しているのは心を読む瞳だけ。
そこで心美はある可能性に思い至った。
(アオバの姿をこの瞳で視認できるようになったと仮定すると、これまで見えていないものの何かが見えるはず。でも、自宅では何も見えず、ここでは普通の光景。でも、その普通の光景に紛れている? 今ももう見えているけど気付いていないだけ……?)
見えているのものがすべてだと思っていた。
なぜ何も見えないのか不思議だったが、見えていたと考えれば合点がいく。
確かに自宅や森の中では何もなかったのだろう。
だが、ここでは見えていたのかもしれない。
見えていたうえで、それに気付けていなかっただけなのかもしれないのだ。
その可能性に至って、心美はユキが同行してくれたことに感謝し、即座に行動に移す。
「ユキ、またあなたの視界を借りるわよ」
(え、うん。いいけど……)
心を読む能力の神髄。
記憶すらも見通す瞳。
さらにその応用で、疑似的な視界共有。
そして二つの瞳を同時に開くことができるようになり、可能になった合わせ技。
心を読む瞳+謎の瞳。
心美は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます