ほのぼの雑談タイム

(ねーねー、家の外が青くなってるんだけど、アオちゃんが何かしたの? ご乱心?)


「そうです。アオバのご乱心です」


「ちょっと!? しれっと嘘つくのやめてくださいよ! ココミも一緒になってやってたじゃないですか!?」


心美達の帰宅後、窓から見える景色が大きく変化したことに気付いたユキが、その原因はアオバなのかと尋ねてきた。

心美は考える素振りもなくユキの発言に乗っかり、アオバを慌てふためかせる。


しかし、ご乱心ではなく二人の意思でガーデニングした庭は、ユキの言う通り青に染まっている。

窓から見る景色は今まで自然の緑だったが、そこに青が加わり美しさをより一層際立たせていてとても綺麗な庭となった。


(ココミもあれやってたんだ。どう? ちゃんとできた?)


「できたかと言われたらできたのでしょうが、ちゃんとと言われたらまだまだです。これからもっと精進していかなければいけません」


(いいなー、精霊術。魔法と違った力、私も使ってみたいなー)


「あなたはまず魔法を極めてください……動物にこんなこと言うのも変な話ですが」


心美はアオバと契約したことで精霊術を扱うことができるようになった。

新しいことができるようになった心美を羨ましそうにしてユキはぼやくが、彼女には魔法の才がある。

理解力もあり飲み込みがも早い。

なにより想像力が豊かで、魔法使いに向いた才能。

それは心美も認めている。


だからこそあれこれ手を出してどれも中途半端に落ち着いてしまうのはとてももったいない。

そう考えてユキを諫めるが、ペットに向ける期待としては大きすぎるのではないかと心美は苦笑いを浮かべた。


「ユキちゃんはどのくらい強いんですか? 今でこそボクもココミに引っ付いてあちこちで歩けるようになったけど、前はあの薔薇の近くにしかいられなかったから、みんなの家の外での活躍が気になります!」


「みんな……ですか。少なくとも私がこの中では最弱でしょう。心を読んで、遠くを見て、テレポートできるだけの普通の人間です。あ、今は薔薇も咲かせられるんでしたね」


「いやいや、謙遜しすぎでしょ……。どこが弱いのそれ?」


「直接的な戦闘力はほとんどないですからね。ギルドの討伐依頼もユキとスカーに任せっきりです。私がせいぜいこなせるのは索敵や長距離移動の足になることくらいですよ」


「……ねえ、ユキちゃん。ボク達のご主人さまってバカなのかな?」


(うーん? そうかもしれないね!)


「ちょっと、失礼ね」


心美は自分の瞳に対して絶対の自信を持っているが、戦闘が絡んだ途端その自己評価は一気に低いものとなる。

応用がまったく効かないわけではない。

しかし、ペット達が優秀すぎるおかげで、試す必要もないのが現状。

こうして森の奥でまったり過ごす分には戦闘経験を積む必要もなく、薬草採取などの易しい依頼で適度にお金を稼げば生きていける。

心美はそれで十分だった。


「でもまあ、そういうことなので最強決定戦を行うなら私以外の御三方にお任せします」


(……興味ない)


「訂正、ユキとアオバのお二人にお任せしますね」


強さの指標を決定したいならどうぞご自由にという意志を示すと、足元の影から気だるげな心の声が聞こえ心美は即座に訂正。

最強決定戦は二名の不戦敗でユキとアオバに委ねられる。


「うー、でも見るだけだと味気ないですし、実際に対峙してみて強さは分かるものですよね。ユキちゃん、軽くお手合わせ願えますか?」


(うん、いいよ! 練習台になってくれるなんて嬉しいな!)


快い了承。

にこにこと笑っているが、秘められた闘志がバチバチとぶつかり合う。

戦闘にあまり興味のない心美は呆れたようにお茶を啜りながら、同じくあまり興味のないスカーを膝に置いて撫でまわし、二人の様子を眺めるのだった。

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