五分で読書応募作品

鉄分多めのレバーガール・マリリン 第1話

5分で判決裁判長:それでは判決を言い渡します。


5分で無罪弁護士:異議あり。まだ、罪状認否ざいじょうにんぴも終わっていません。


5分で判決裁判長:私は5分で判決を言い渡すことを信条としています。


5分で有罪検察官:早口で進めますので起訴状の読み上げだけでも。


5分で判決裁判長:しょうがないですね。手早くお願いします。


5分で有罪検察官:えー、5分で50億円稼ぐことで有名な豚汁王子こと吉沢翼氏の会社に予告状が送られてきたのが事件の発端であります。内容は令嬢の誕生パーティの最中に世界的に有名な素性不明のアーティストの5分でシュレッダーにかけられる絵画を頂戴するとありました。当然、警察といたしましては5分でえん罪警部を筆頭に多数の警察官を配置し、尚且つ、5分で解決探偵にもご協力をお願いいたしまして万全の体制で対処することとなりました。当日は50年修行して、やっとこさ星一つ料理人のフルコースが振る舞われ、予定通り盛大にパーティーが執り行われました。

しか~しっ! 突然、屋敷が停電に見舞われたのです。時間にすると約5分程でしょうか。明かりがつくとなんと厳重に警備された会場のど真ん中にあったはずの絵画が消えてなくなっていたのです。


5分で判決裁判長:お見事です。ジャスト二秒で終わりましたね。後半は早口すぎて超音波に近かったですが、内容は根性で聞き取りました。そこから犯人捜しですね?


5分で有罪検察官:さよう、盛大なパーティなので参加人数も多く手がかりはなし。そこで登場したのが5分で解決探偵であります。ここからは証人尋問で、本人が説明するほうが早いでしょう。


5分で判決裁判長:それでは証言台へ。


5分で解決探偵:説明も何も5分で解決するのが仕事なので。単純な話です。会場に5分でお届けピザホットの配達員がいただけなのです。誰もピザなんか頼んでいないのにね。証拠はそれで十分だと思います。確実に彼が5分で捕まった犯人です。


5分で無罪弁護士:異議ありっ! 被告人には動機がありません。


5分で解決探偵:事件は5分で解決ですが後の裏付け調査は綿密にやっております。調べた所、被告人は吉沢氏の一人娘、5分で別人メイクの吉沢沼子令嬢の付き合って5分でフラれた元彼であることがわかりました。これは盗難事件に見せかけた痴情のもつれによる犯行なのです。


5分で判決裁判長:なるほど説得力がありますね。二分弱ですが、判決を言い渡しましょう。


5分でお漏らし傍聴人:そのまえにおしっこに行ってもよろしいでしょうか?


5分で判決裁判長:我慢してください。


5分で立ち上がった赤ちゃん:ばぶー。


5分で判決裁判長:静粛に! 5分で喋った赤ちゃんなら良かったのにね。お母さん5分で育児放棄しないっ! それでは判決を言い渡します。余談ですが、今回の裁判に関しては史上初、5分で無罪弁護士 VS 5分で有罪検察官 の直接対決でありますので、ほこたて矛盾むじゅんの原則により、どちらかが5分の称号を剥奪される結果となることを付け加えておきます。


5分で無罪弁護士:ごくりっ!


5分で有罪検察官:ごくりっ!


5分で判決裁判長:それでは改めて判決を……


5分で解決探偵:お待ちくださいっ! 裁判長、傍聴席をご覧ください。


5分で判決裁判長:ん? あー傍聴人は立ち上がらないで!


5分で別人メイクの吉沢沼子令嬢:隆史さん……あなたがそんなにも執着してくれていたなんて……てっきり私なんか愛してないと思ってた。私が……間違っていたわ。


5分でフラれ5分で逆恨みして5分で犯行に及び5分で捕まった被告人:沼子……


5分で解決探偵:裁判長。確かに判決は下さなければなりません。ですが、そもそも事件など起こってなかったとしたら?


5分で判決裁判長:ふ~む。5分で復縁か……。傍聴席にいるあなたのご意見は?


5分で50億円稼ぐことで有名な豚汁王子こと吉沢翼氏:娘が愛する男なら、それは身内と同じです。息子のようなものだ。いやいずれ息子になるでしょう。裁判長……


5分で判決裁判長:ふむ。親族間における一部の犯罪を罰しない特例はあるものの、これは厳密な親族相盗例しんぞくそうとうれいとは言いがたい。されど、お嬢さんの瞳からあふれる涙は本物だ。その表情はまさに……まじで恋する五秒前の乙女そのもの。


5分でお漏らし傍聴人:いやそこ5分と違うんかぁ~いっ!


5分で立ち上がった赤ちゃん:ばぶーーー-ーーーーーっ!


5分で判決裁判長:うるさいっ! 今回は裁判そのものがなかったと言うことで。


5分で無罪弁護士:ほっ。


5分で有罪検察官:ほっ。


5分で判決裁判長:それはそうと流石さすがは5分で解決探偵だと感心ついでに、一つ謎を解いては貰えないだろうか?


5分で解決探偵:なんでしょう?


5分で判決裁判長:最初から気になっていたのだがこの話の流れにしてはタイトルがおかしくないですか? どうして『鉄分多めのレバーガール・マリリン』?


5分で解決探偵:はは。それは残念ながら5分も必要ない。推測ですが、5分で傑作作者がWordワードで4分58秒で書き上げて一秒で本文をコピー&ペースト。それから、残り一秒でタイトルをコピー&ペーストするとき、平行して執筆していた別の短編のタイトルを間違えて貼り付けてしまったのです。推理するまでもありません。本人は5分でやり遂げたことにご満悦で見直しもせず、今頃は、昼間からビールでも飲んでいることでしょう。


5分で判決裁判長:なるほど……タイトルから察すると才能の欠片もない凡庸な作者とも思えるが……けれどこの作品で我々は作者からひとつの教訓を与えられたのやもしれない。この世界ではスピードが何ごとにおいても優先される。けれど、早ければ良いというものではない。人生はながい。時にはじっくり時間をかけ立ち止まることも必要なのではないか? 人類は蛇にそそのかされ5分で禁断の果実にかじり付いたアダムとイブのような過ちを再び犯すべきではない。そういうことを作者は伝えたかったのではないか? 私にはそう思えてならない。



5分で解決探偵:裁判長……そのご意見に異議なしっ!









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