第5話 時よ止まれ
照明が明るくなりゆっくり席を立つリリコ。
振り返ると彼はもういなかった。
声をかけてみたかった気もするが偶然会えたことが嬉しくて
一杯飲んで帰ることにした。
映画館の近くには酒場が並んでいる。
一人でも気軽に入れるのでリリコのお気に入りの場所の一つだ。
今日はこっちのお店の気分だわ。
フレンチのお店に入ってみる。
カウンター8席のみの小さなお店だ。
『いらっしゃいませ、こちらにどうぞ』
席に案内され足が進むにつれて心の波は荒波へと変わった。
『あ!』
リリコが案内された席の隣には彼が座っていた。
『今日は会いますね。』
びっくりした表情で挨拶をしてくれる彼。
『本当ですね。』
リリコも挨拶をしてゆっくり席に座る。
緊張するじゃないの…。
でも鏡で練習した笑顔を出すとこって今じゃない?
心の中で声が聞こえる。
騒がしい心の状態を落ち着かせようとリリコは白ワインを注文した。
リリコ~いつも1杯目はビールじゃない!
落ち着かせるどころか今日は本当に心が騒がしい。
『映画好きなんですか?』
優しい彼の声が落ち着かないリリコの耳に響く。
安心感さえ感じる彼の声が妙に体に染み渡り心地がいい時間が流れ始めた。
時よ止まれ~と何度思ったことだろう。
2時間程話で盛り上がりお店を出る頃には2人の雰囲気は昔からの友達のように変化
していた。
『名前は?』
『リリコ』
『俺コウタ』
2人は名前と連絡先を交換し来月公開される映画を一緒に行く約束までした。
嬉しくて心の中で何度も神様にお礼を言いながらリリコは帰宅した。
『出会わせてくれてありがとう』
見上げた空には綺麗な満月が光っていた。
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