第3話 出会い
『少々お待ちください。』
丁寧な対応をしてくれる定員さんの言葉に頷きそっと辺りを眺めていた。
奥の方ではバタバタと作業をしているスタッフの様子が見える。
人が多いわね。
何人で作業しているのかしら。
待っている間人間観察をしていた。
その時だった。
奥から男性スタッフがケーキを並べに出てきたのである。
『いらっしゃいませ』
とリリコに笑顔で声をかけてくる。
鋭い感じの目をしているけど笑うと可愛い男性である。
目が合った瞬間リリコの心の波が揺れ始めた。
なんか素敵~。
心の声が聞こえ始めた瞬間
『お待たせしました。』
と包装されたケーキを手に定員さんが歩いてくる。
『ありがとうございました。』
と見送られるリリコ。
もう少しいたかったわ~と思いながらお店を出る。
今まで何度も来ていたのに初めて見たわ。
いつもと同じ帰り道。
いつもと同じ駅に着く。
いつもと同じ状況なのに頭の中で音楽が流れ始めていた。
ちょっとタイプの人がいたからって浮かれすぎよ。
心の中で突っ込みを入れながらにやけそうな自分を落ち着かせる。
帰宅して夕食を済ませテレビを見ていた時だった。
パックしよう。
日々の忙しさで忘れていた顔のパックの存在を思い出す。
棚から取り出し鼻歌を歌いながら準備を始める。
袋を開け、パックを顔にゆっくり乗せていく。
久しぶりにじわ~とくる感覚に心も満たされていた。
ソファに横になり今日の出来事を思い出すリリコ。
素敵な人だったわ~。
心の中で何度も声がしている。
その日久しぶりに感じる感覚はリリコの心に温かな風を送っていた。
心の波が気持ち良さそうにゆっくりと揺れている。
部屋に飾ってあるラナンキュラスの蕾も少し開き始めていた。
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