第3話

英語ができないならタイに行けばいいじゃない。


中学に上がった時に英語の先生が兄のことを覚えていて『お兄ちゃんは勉強できたからな。楽しみにしてんで!』と言われてもう英語は捨てた。英語圏に行かない。そう心に誓った。中学一年生の出来事だ。


兄がタイに居るので年に1回タイに遊びに行っていた。遊びに行くたびにタイ人と喋りながら少しずつ言葉を覚えるも、タイ語が全く読めない。結局英語を読まないと何が何だかわからないのである。英語の大切さをタイで感じた瞬間だった。あぁ、やはり世界に行くなら英語は必須なのか!と。


あれから20年近く経って、次男が17点、長男が11点というテスト結果に、あの日の母の誓いが子どもにも継承されるという神秘を目の当たりにする。もう手段は選べない。公文へ入れるために体験に行ってきた。次男は英語。三男が国語。長男がうまくすり抜けたのでまた予約しなくてはならない。今まで公文は値段が高いので遠慮してきた。3人通わせたら何マンいるねん!と。しかし、もういいタイミングである。ダメならやめればいいし。何より次男が苦戦していて、英語の授業は無の世界でただ座っているだけ、という修行の場になっているらしい。そんな生活を打破できるいいきっかけになればいい。


そんなこんなで長男と今後の話をする。大学には行きたいが行きたい学校などは全くわからない、と。しかし親としてこの成績では年間数百マンの投資はできない。と伝えると、奨学金を使うと言う。しかし長男よ、そもそもこの点数ではどこの大学には行けないと思うのだ。そして数百マンの借金を返すというのはどれほど大変な事であるか、君は想像もしないだろう。君の選択肢がどんな道であろうが構わないが、ちゃんと自分で選んで進むがいい。応援はいつだってしているから。


いろんな話をした結果、浪人はしない。大学どこもダメだったらタイに留学する。ということでまとまった。よし!最悪タイに送り込もう。今はオンラインで繋がってるからそんなに今の生活と変わらないと思われる。何にせよ挑戦することは大事である。我が家の将来の選択肢が1つ増えた。


ちょうど旦那が帰宅し、有耶無耶に説教が終わり旦那のごはんを用意していたら、彼はそそくさとスマホを取り出し、麻雀をやり始めた。それを横目に彼にどこまで伝わったのだろうか?と一抹の不安と、タイが急に近くなったなぁと、心底思いながらこの横顔を見れるのはあと2年しかないのかも?と思うといつも以上に可愛いと思えてしまう。


さぁ、今週は彼の三者懇談です。内容によっちゃぁ留学の話しもしちゃいますよ?とほくそ笑む師走の夜であった。

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