第2話

ガラケーをこよなく愛しているのだが、とあるきっかけでスマホが必要になり、現在二台持ちである。


久しぶりに同級生からメールが来た。近況報告からの、なんの気無しにLINEを手にしたと伝えたのがことの始まりだった。


3日と開けずLINEが届く。最初は懐かしさから楽しくやり取りしていたのだが、ある日仕事の相談が入った。“スーパーのリニューアルでパート募集してんねやんかぁ。肉屋なんやけど、どう思う?”と。元肉屋でバイトしてたから?と思いながら遠い昔の仕事内容などを伝える。


その後無事に採用され、落ち着いた頃『ちょっと聞いて〜‼︎』とチーフの言葉に憤慨した彼女から電話がかかってきた。お?17年の年月はこんなにも壁のないものなんだっけか?と思いながら久々に同級生の声を耳にした。


またある日、“ユニバのチケットとりま買った。相手未定(笑)”とLINE。これは誘われてる?でもちょうど行きたいと思っていたので行くことに。金曜日だったのでそのまま実家に泊まればいい。


14時ごろ着くと伝えたはずなのだが、待てど暮らせど来ない。昼ごはんにたこ焼きを2件はしごし、懐かしい味と思い出を胸にしてもまだ来ない。結局15時半を過ぎてようやく合流。改札を出た彼女は少しふっくらしていたが、なんら変わらず昨日会ったかのようにしゃべり出す。ハリーポッターのゾーンに行きたいと言うのでそそくさと入場し、店を回り、写真を撮り、そろそろ乗り物にとヒッポグリフの列に並ぶ。待ち時間は彼女が主役だ。職場のパートさんにカートでぶつかった話、財布を忘れて旅行に行った話、それらが途切れることなく口から紡ぎ出される。こちらは口を挟む隙もなく、驚き笑い突っ込みを繰り返す。乗り物に乗ってる時間など一瞬である。いや、彼女のおかげで待ち時間も一瞬なのだろう。出てきてすぐ次の乗り物に並ぶ。今度はVRがメインの乗り物らしい。目の前の映像が目まぐるしく変わる。降りて久しぶりな遊園地感に顔を綻ばせ、友人を見ると彼女は顔面蒼白だった。私より先にクルーに誘導され休憩室に行くがそれどころではない。すぐにトイレに案内してもらった。


外に出るともう日は落ち、ベンチでしばしの休憩。途中子どもの歯医者から電話があったりしつつ、大人しく横でお利口さんに待つ。ようやく友人がポツポツと語り出す。


『インスタで毎日写真アップしてる子おるんやんかぁ』

『うん?』

『あれ、ストレスで髪の毛抜けてきてるんやとおもうねん』

『!!!』


・・・あれ?気持ち悪かったんちゃうかったっけ?あれ?スルー?


『毎日料理作って写真撮ってアップして…』


みんなが持ち歩いている灯りが浮き彫りになってきた。スターやテレサが行き交うのをハリーポッターの世界で見る違和感が奇妙な笑いを誘う。


『寒っ!寒いしそろそろ行くかぁ?お腹すいたしなんか食べる?』

『!?!?』

さっき出したけど?いや、出したから食べれるんか?


彼女はカレーセット、私はカップケーキを選び、寒かったのでフリードリンクをしこたま詰め込みようやく動き出す。


『何乗る?私VRみたいなん無理なんやんかぁ』

『え?それほぼほぼ全滅やん!』

『ジェットコースター系はいいんやけど…』


そんな中ミニオンの乗り物へ。子どもでも乗れるねんし、大丈夫ちゃう?と最後尾へ。そしてまた彼女のトークが止まらない。

『私民生委員になりたいねやんかぁ。お世話になったから。でもやる人おらんからなるん嫌やねん。なりたいです!ってなりたいねん!』『西成のおちゃんが…』『今治験してんねやんかぁ』

まだまだ止まる気配がない。


ようやく順番になり乗り物を見た瞬間“あ、これあかんやつや!”と危険を察知。最悪乗らない選択肢はある!恐る恐る聞いてみたが、乗ると言うので少しほっとして乗り込む。


今回は大丈夫だったらしい。外に出るともう21時を回っていた。閉店時間だ!

え?3つしか乗ってない。お土産も買ってない。あれ?もう終わり??


門に向かうとお土産のショップは明るく人も居る。買えるのかもしれない!少し渡り歩き、ようやく子どもたちのお土産ゲット♪あちこちで写真を撮りながらようやく改札へ。


子どもたちが居ない状態での帰省は久しぶり。もしくは初めてかもしれない。夜中まで母と語り合い、ようやく就寝。色々あったが楽しい1日であった。明日は母とどこかに行ってもいいな?と思いながら眠りにつく。


『ポンポロポンポンポンポンポン…』


突然の着信音で目を覚ます。電話の相手はもちろん“彼女”だ。


『今日なぁ。子どもも旦那もおらんから晩ご飯一緒に食べへん?子どもと旦那は野球に…』

『あ、今からソフレ行くから終わるの10時半ごろやし終わったらすぐ電話する!それまでにみんなに連絡しといて!』


…なんだこれ?


その後どうなったか?もちろんてんこ盛りである。生贄を1人増やし(増やせと強要された)、晩ごはんを食べに行ったはずなのだが、最終的に夜の京橋で惣菜を立ち食いして帰ったというのはまた別のお話。

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