第8話 体重

 私は約2年のうちに体重が5㎏以上減り、その後20㎏増え、そこから数㎏減らした。こんなに体重の増減を経験したのは初めてだ。

 1番痩せていた頃に結婚指輪を作った。そのため今はつけていない。つけるのも外すのも大変なくらい太ってしまったからだ。指も痩せたり太ったりするのだと知った。指輪のサイズを決める際に店員さんに勧められたサイズが、婚約指輪よりも小さい物でとても驚いた。勧められたサイズのまま作ってしまったが失敗だった。せめて婚約指輪と同じサイズにすれば良かった。その婚約指輪すらきついのだが。

 洋服のサイズも変わった。特にボトムスだ。今まではMサイズで良かったが、Lじゃないと厳しい。物によってはLでも厳しい。何を着ても以前に比べると様にならないので着飾るのはイベントのみにした。洋服を見るのが好きだったが、今は何も楽しくない。

 ダイエットを始めてはみたが、深夜になるとイライラとして酒や激辛カップ麺に手をつけなければどうにもならない。そうなる前に眠れれば良いのだが、眠剤を飲んでも眠気は明け方まで来ないことが多い。日中は食欲がなく大して食べることができないのがせめてもの救いだ。

 運動は一応ホットヨガに通っている。ただ最近は調子が悪くてあまり通えていない。そもそも外に出られない。

 自分はなんて醜い人間なんだと思う。見た目も心も。そういう考え方が良くないとはわかっているのだが、自分を悪者にするのが楽なのだ。ある程度自分を追い込むとどんどん食欲がなくなっていく。深夜に効果を発揮しないのが悲しいところだ。変な時間にしか食事をとらない私を夫はとても心配する。私は悪いと思う反面、吐かないでちゃんと飲み込んでるんだから良いじゃないかと思ってしまう。世の中には私よりずっと深刻な食事の悩みを抱えている人がいるのだ。それに比べればこんなの別に良いだろうと思う。夫だって昔と比べればずっと太った。私のことより自分の心配をすれば良い。そんな酷いことを考えてしまう。

 ダイエットを頑張れていた時期もあった。あの時はわずかだが痩せることができた。今は何も頑張れない。頑張ろうとすると指を喉に突っ込む想像ばかりしてしまう。この瞬間もう私の頭の中は吐くことでいっぱいだ。吐く勇気なんてないのに。馬鹿みたいだ。

 痩せて綺麗になりたいなと思う。人からどう思われるかより、自分でそう思えるくらいになりたいと思う。病休を取る直前の写真の自分が好きだ。今と違って痩せていてヘアメイクも綺麗にしている。夫は今の私の方が良いと言うが、私はそんなこと少しも思わない。行動できない望みなんて持たない方が幸せなのに痩せたいと思ってしまう。しかしきっと痩せたらもう少し外に出られると思う。だが引きこもって痩せるのは難しい。ああ悪循環に飲まれていく。

 幸せになりたい、綺麗になりたい、働けるようになりたい、お金が欲しい。そんなことが心を支配する。そして最後にたどり着くのは死だ。死んだら楽になるのかな。けれど、私にその決断をする勇気はない。だから今日も醜い体と心をまとってベッドから這い出て文章を打ち込むのだ。来週からはダイエットができたらいいなと思いながら。

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