第4話 就職活動
就職活動というものは往々にして私の心をえぐる。正しくは私自身で私の心をえぐっていく。
私は2回就職活動をしたことがある。1回目は大学生の時。2回目は社会人3年目の頃。どちらも就職先を見つけることができたが、私の自尊心や自己肯定感はズタボロだった。
大学生の時の就職活動は長かった。大学4年生の2月まで行っていた。就職先がなかったわけではない。4年の夏には1つ決まっていた。初めての内定をもらい、意気揚々と母にそれを報告した。母に褒めてもらえることを期待して。その際
「まだ就活続けるんでしょ?」
と言われた。そして私は
(ここじゃだめなんだ)
と絶望した。今思えば自分の人生なのだから母など気にせずに判断すれば良かった。しかし当時の私には母からの評価はかなり重要だった。母が納得してくれそうな業界や企業をメインで受けていた。内定をもらった企業はそれとはかけ離れた、たまたま受けたところだった。
そこから私の就活は、その内定先から入職の連絡が来るまで続いた。いくつもの企業を受けたが内定に至ることはなかった。お祈りの連絡が届く度に
(私は駄目なんだ)
という思いが増していった。有名企業に内定をもらう友人らを見るのが辛かった。どの企業に行くか話せる友人らが羨ましかった。私は年末にはLINEを消した。連絡の取れなくなった友人らに卒業式で再会し、気まずかった。卒業旅行なんて勿論ない。
自信をなくした状態で新社会人となった。しかし4月1日以降、私はさらに自信をなくすことになるのだった。
2回目の就職活動は転職活動だ。しかし、私は最初の就職活動で惨敗していたため一般企業の中途募集に自分は採用されないと決めつけていた。公務員系の新卒枠を狙うしかないと思い、そういうのを受けられるだけ受けた。
幸い1つの内定と1つの補欠合格をもらうことができた。補欠も繰り上がり、合計2つの内定をもらうことができた。私は志望度の高かった補欠合格のところに就職を決めた。今回は母も大変喜んでくれた。私もとても嬉しかった。
だが、働き出すと補欠だったという事実が私をどんどんと苦しめた。同期は1人を除いて年下だった。それも私が苦しむ原因の1つだった。
補欠だから同期の中で1番駄目なんだ。年上だからしっかりしなきゃ。社会人経験があるのだから仕事で結果を残さなきゃ。他の同期が忙しそうなのに私だけあまり仕事がないのは私が無能だからだ。
そういう思いの積み重なりもあり、私は休職となった。
正直、未だに私は就職活動の苦しみや悲しみを清算できていない。何度も転職をする友人の話を聞いては
(この人は能力が高くて需要のある人間なんだ。自分とは違うんだ)
と思わずにはいられない。
1度目の就職活動も内定が出た時に止めていれば、無駄な傷を負うことなく残りの大学生活を楽しめたのではなかろうか。しかしそれはそれで後悔するのだろう。転職活動もそうだ。結局私は、今の私のままでは幸せになれないのだ。否定することに慣れた思考では今ある幸せやメリットを受け止められないのである。
そんな自分の歪んだ認識を変えるためにも心療内科でカウンセリングを受けている。最初に受けた頃に比べればずっとマシになったと思う。それでもまだまだ私は自分で自分を苦しめることを止められずにいる。全て自分のせいにして、自分を卑下して生きていくのが自分を肯定するよりずっと簡単だからだ。
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