オーバーブッキング

 冬休みって後どんぐらいあんだっけ? ふと頭によぎった疑問を解消するべく、俺はすっかりなまった足を動かし、壁に掛けられたカレンダーと睨めっこする。


「あれ、もう30日なの? 嘘でしょ?」


 今年も残すところ後僅かと知り、俺は驚く。だらだらとした生活を送ってきたせいで完全に曜日感覚が狂ってしまっていた。


 もう晦日かぁ……やだなぁ、家でぬくぬく温まりながら年越したいなぁ。


「はぁ……」と溜息を零し、俺は現実から逃げるように炬燵こたつに潜る。


 2日前だ、小鳥遊から代行の依頼があったのは。なんでもお参りに行きたいらしく、更に年越しも一緒に過ごしたいとのことだった。


 要はクソ寒い真夜中にわざわざ神社に出向いて行列に並ぶというわけだ。地獄だろ?


 ん? 嫌なら断ればいいじゃないかって? そりゃ最初は当然のように断りましたとも。まぁ、最終的に諦め悪い小鳥遊に心折れた感じで泣く泣く受けてしまったんだが。


 気分はピッチングマシーンの前で椅子に縛り付けられたヤクザだ。いくら断ってもボールが顔面めがけてすっ飛んでくる。いくら断っても機械故に遠慮を知らず投げてくる…………うん、どこのア〇トレイジ?


 ともかく、そうなってしまったんだ。下手にご契約者とお店みたいな関係になってしまっているから、向こうが『立場が強いのはこっち』と思っているのかもわからん。こっちは金を貰ってるわけでもないのに……。


 ブ――、ブ――、ブ――。


 と、テーブルの上に置いてあるスマホが振動する。


 んだよぉ……。


 俺は炬燵から顔を出し、スマホを手に取る。相手は緑川だ。


「……もしもし」


『あ、センパイ! どもです~』


「……なに?」


『うわ、めちゃテンション低いですねセンパイ。年の瀬ですよ? なんかこう心が浮ついて意味もなくテンション上がりませんか? 普通』


「……いや、別に?」


『うわ~……面白味がないですね、センパイ』


 余計なお世話じゃボケッ! とは口にせず、俺は用件を訊ねる。


「んで、なんの用? 俺をボロクソに言うために電話してきたんじゃないだろ?」


『そんなわけないじゃないですか~。えっとですね、明日暇だったりします?』


「暇じゃない」


『暇なんですね! いや~良かった良かった! じゃあ明日の夜、お参りに行きましょうよ!』


「あれ、人の話聞いてました? 暇じゃないって申したんですけど」


『場所はセンパイにお任せしますね! また一杯写真撮りますんで、ウチの彼氏として相応しいお洒落な格好でよろしくで~す!』


「ちょっと? 緑川さん? 年の瀬で頭おかしくなってるんじゃ――」


『――それじゃセンパイ、また明日!』


「おいちょ――緑川ッ⁉ もしもーしッ! 応答願いまーすッ!」


 いくら呼び掛けても緑川はなにも答えない。当たり前だ、通話が切られたのだから。


 ……………………。


 ――――――――――――。


 その日の夜、ウィンウィンさんこと、羽崎とフォーペックスのマッチプレイ中のボイチャにて。


「――あ、その建物に一人逃げ込んだぞ。多分そいつミリだからすぐに仕留められる」


『了解。私が息の根を止めてやるわ。目黒川君は引き続き外で索敵お願い。それから明日の夜、お参りに行きましょう』


「おけ…………え?」


『一人始末したわ。けど、もう一人いるみたい。足音が聞こえる……仲間かしら?』


「だろうな――じゃなくて!」


『わざわざ1対1でやり合う必要はないわ。数に物言わせて潰しましょう。目黒川君、すぐこっちに来れる?』


「ああ、行ける」


『良かった。じゃあ明日、楽しみにしてるわね。場所は目黒川君に任せるから』


「そっちの行けるじゃねーよッ!」


『……………………』


「おい聞いてんのかよ! つかちょっと待って、どっかから撃たれてる、どっかから撃たれちゃってるよ俺ッ! 助けてッ!」


 ウィンウィンがパーティーを抜けました。


「…………嘘でしょ?」


 モニターに映っている俺の操作キャラがハチの巣にされ、やがて倒れる。羽崎が抜けてしまった今、この時点でもう負け確定だ。


 俺はコントローラーを置いて、安物のゲーミングチェアにもたれ天井を見つめる。

 ……え、明日どうすればいいの? 俺、影分身とかできないんだけど。




――――――――――――。

どうも、深谷花びら大回転です。


皆様、明けましておめでとうございます。2022年になってしまいましたね。

皆さんの今年の目標はなんでしょうか? ふんふん、そうですか、頑張ってください。


わたくしはですね、今年は狂人のように執筆に専念するつもりであります。できれば書籍化までいければ……なんて淡い期待もありますが、ことはそう簡単じゃありません。ただ、継続しなければその淡い期待すら持てませんからね。ほんと、ドMにうってつけの趣味ですわ、ええ、ええ。


というか、カクヨムコンまで残り一ヶ月であと6万文字って……考えただけで気が狂いそうですわ。

というか、もう狂ってますね。だってわたくし、パソコンの前で肛門晒しながらこの後書き書いてますから。え? 大回転さんの肛門見たいって?


ばっか、見せねーよ。ただ、俺の友人が言うには、とてつもなく綺麗だそうです。

そしてその友人の肛門は……針葉樹林みたいになってました。見ようによっちゃ美しいかもですね。


では、皆さん――今年も何卒、よろしくです♪

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