温もりを求める冷たい幽霊と〝性〟なる夜を6

 知っている。なにせ趣味垢こと〝めぐろん〟のアカウントではフォーペックス関連の呟きがほとんどだからだ。


 今年リリースされた基本無料プレイのバトロワゲーム。銃や爆弾を用いて生き残りをかけた至ってシンプルなゲーム性で、だからこそ面白い。無料且つ分かり易い、故に敷居が低く、結果多くの人が流れ込みブームに火がついた。羽崎の言った通り、今年を代表する一作だ。


 こう熱く語ると無類のゲーム好きと思われてしまうかもしれないが、実はそれほど好きじゃなかった。正確には好きでも嫌いでもなく、興味がなかっただが……。


 そんな俺が何故、フォーペックスを始めたか……流行っていたというのも理由の一つだが――決め手は〝たった一つの羨ましすぎる事実〟だった。


 友人の一人がフォーペックスを通して知り合った女性と関係を築いて進展させ、見事お付き合いまで至った……その事実が俺をこのゲームへと導いたのだ。


 んで今はどっぷり浸かってしまっているわけだ。とんだ時間泥棒さ。


 女子とお近づきになりたいという当初の目的も良いとこまではいったんだ。つい最近まで楽しくボイチャしていた女の子はいたし……つい最近まで……。


 まあ所詮はゲーム繋がり、顔すら合わせたことない薄い関係だからしょうがないっちゃしょうがない。ただ、不思議なのはボイチャをしてくれなくなっただけで、今でも普通にマッチプレイはしているという点だ。


 俺の声が生理的に受け付けなかったか、もしくはトークが絶望的につまらなかったか……どちらにせよ理由を聞きたくないのは確かだ。心が痛むから。


 まあ、それは置いとくとして。


「知ってるけど、それが?」と俺が聞き返すと、羽崎は笑みを浮かべたまま続ける。


「そのゲームで〝ウィンウィン〟ってディスプレイネームの人とよくマッチ組んでるでしょ?」


「……なんでお前がそれを知ってるんだよ」


 羽崎の口にした通り、ウィンウィンさんこそがフォーペックスで仲良くなれた女の子だ。


 そのことを羽崎がどうして――――まさかッ。


 考えられる可能性は一つしかなかった。その気付きが表情に出たのか、羽崎はコクリと小さく頷いた。


「私がウィンウィンだからよ」


「……マジか」


「ええ、マジよ。似ていると思わなかった? ボイスチャットをしている時に、私の声に似ていると」


「……言われてみれば、似ていた気がする」


 けど、ウィンウィンさんはもっと愛想が良かった気が……。


「私も目黒川君の声に似ているなと思ってたの。ディスプレイネームもめぐろんだったし」


「それが、めぐろんが俺だと特定できた理由ってことか」


 そう俺が結論付けるも、羽崎はゆるゆると首を横に振って否定を示してきた。


「確信はあったけど確証はなかった。私がめぐろん=目黒川君だと確証を持てたのは、あなたが新藤君とフォーペックスについて会話していたのを耳にした時よ」


「新藤との会話?」


 はて? どんな内容だったか。如何せん奴とは下らない会話がほとんどだからあまり記憶に……。


 彼女が口にした会話とはいつの場面を指しているのやら? と俺は記憶を遡るもそれらしいものが一向に見つからず、やがて痺れを切らしたのか羽崎はムスッとした顔で口元を尖らせた。


「目黒川君、会話の中で『ウィンウィンさん、ちょー声が綺麗で愛想も良くて――あれ絶対可愛い子だから! ああ……なんかの間違いで付き合えたりしないかな~』って、そう言ってたじゃない……」


「あぁ……そういえばそんなことを新藤に話したような気が――」


「ようなじゃなくて実際に話していたのよ! ……あの言葉は嘘だったの?」


「いや噓ってわけじゃないけど……なんていうの? 心からの言葉でもなかったというか……」


 ぶっちゃけると本気で言ってるわけじゃなかった。アイドルや女優と付き合えたらな~、みたいな感覚、叶うわけがないと理解していたらこそ発した言葉だった。


 結局のところ、冷めた自分がいるのだ。友人は巡り合わせが良かっただけ、俺にもワンチャン……なんて希望を抱くだけ無駄だと。


 それでもウィンウィンさん……まあ羽崎と、未だにゲームを続けているのは純粋に楽しいからだ。直接口にするのは恥ずかしいから言わんけども。


 ……ん? でも待てよ? ゲームを通して知り合った女の子と対面して、しかも好意を持ってると直接伝えられたってことは――理想、実現しちゃってません? 運命、と言っても過言じゃなくない?


 と、考えてみたり……。


 ――――いやいやいやいやッ、なにをトチ狂ってるんだ俺はッ! いくら奇跡的とは言え、相手は羽崎だぞ? ないないさすがにないッ!


「ちょっと、なに無言でブンブン頭を振っているの? どういう意味? それ」


「ああいやこれはッ! ……特に意味はなくてだな…………話を戻すけど、俺のぉ、その、発言がキッカケになった感じ?」


 ジト目を向けてきていた羽崎に俺がそう確認すると、彼女はほんの僅かに意表を突かれたような顔をする。


「ま、まあそうね……あまり好きな言葉ではないけど、運命のようなものを感じたし……そ、それに……」


 羽崎は俯き、小さな声で続きを口にする。


「こ、ここ……声が綺麗とか、愛想が良いとか、絶対可愛いとか、たくさん褒めてくれたし……ゲームも、一緒にやってる時、凄く楽しいし…………だから…………それで…………」


 なるほど、少女漫画のヒロイン顔負けの実に単純な理由だ……それと……。


 恥ずかしさを必死に堪えているのかプルプルと体を震わせている彼女を見て、俺は思う。


 は……羽崎って――こんな感じの子だったけッ⁉




――――――――――――。

どうも、深谷花びら大回転です。


突然ですが読者の皆様はTwitterとかやってます? わたくしもアカウントはあって、思い出した時に呟いたりしているんですが、如何せん仲良い人がいないんでなんの反応もないんですよね。


他の方とかだとTwitterでこう、作者同士、もしくは読者の方々と繋がってるーみたいなのを目にするんですが……あそこまでの持って行き方がこう、いまいち……だからTwitter、というよりSNSを上手く活かしたいなーって、最近思うんですよね。


どうでしょう、皆さんの中でSNSプロみたいな人います? なんかこう、コツみたいなのを教えてもらいたいんですけどチンコ。


どうかお願いします昆布

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