温もりを求める冷たい幽霊と〝性〟なる夜を4
――セッ〇ス♪ セッ〇ス♪ DOUTEI――SOTUGYOUッ! 初めての味はどんな味? きっと一生忘れない♪ 甘くて酸っぱいそんな味♪
俺は洗面所で小躍りしながら衣服を脱ぎ捨て、生まれたままの姿に変身する。
「おっと、いけないいけない……鼻毛よし! 乳首毛よし! 無駄な毛はなにもなし!」
馬鹿ほどデカい鏡に向かって指差し呼称。どこもだらしないことにはなっていない。
……そう言えば、どこかで聞いたことがある。本番を前にして緊張で萎えてしまうとかなんとか……俺のは大丈夫だろうか。
視線を下に向けると、脈を浮き立たせている
が、俺は疑り深い男。この手で確かめるまでは決して油断などせぬ!
その
……うむ、
「これなら心配なくことに
鏡に視線を戻すと、〝大問題〟と目が合ってしまった。
緩みきった表情をして自分のブツを握っている全裸の男、そいつの顔は段々と虚無に染まっていく。
「――フンッ!」
見るに堪えない! と俺は自分の頬を全力でぶん殴り、その場にへたり込む。
ご――ごめんさあああいッ! おかああああああああああさあああああああああああああああんッ!
どうしてか……俺の頭の中で、真っ先に思い浮かんだのは、優しく微笑みかけてくる母さんだった。
『――んじゃ、行ってくるわ』
『あら奏多、そんなお洒落な格好しちゃって……デート?』
『そ、そんなんじゃねーよ! 友達と出掛けんだよ、友達と』
『そうなのね。お母さんはてっきり奏多に彼女さんができたとばかり』
『できてねーし、できても言わねーよ。じゃ、行ってくる』
『気を付けてね』
『おう』
今日の朝、家を出る直前の母とのやり取りが脳内で再生される。当たり前すぎてなんとも思わなかった日常の一枚が遥か彼方で
だらしない息子でごめんなさい、意志の弱い人間でごめんんさい、息子のムスコが元気百倍でごめんんさい――母さん! ごめんなさいッ!
俺は……泣いていた。床にうずくまって歯を食いしばり、己の不甲斐なさに涙を零した。
それでも〝ブツ〟は萎えることを知らなかった。
――――――――――――。
俺はバスローブではなく脱ぎ去った私服を着直して羽崎の元に戻る。
「……早いわね。ちゃんとシャワー浴びてきたの?」
こっちを見るなり羽崎は訝し気な顔して訊ねてきた。
俺はゆるゆると首を横に振り、口を開く。
「やっぱり、こういうのはやめよう」
「急ね、さっきまで乗り気だったのに……理由を聞いても?」
「理由ってほどのもんじゃないけど……これはあくまで代行サービスだから本番はちょっと……それに、こういうのは愛し合ってる者同士じゃなきゃって、俺は思ってるから」
「……私に魅力がないから、ではないの?」
「それは
めちゃくちゃ恥ずかしいことを言っている、その自覚があったから俺は羽崎から目を逸らして告げた。
「……………………」
しかし彼女は黙したままノーリアクション。それはそれでむず痒く、俺は反応を求めて羽崎に視線を戻す。
羽崎は結んだ口元をふにゃふにゃさせ、大きく見開かれた瞳は動揺を
「すまん、少し――いや、かなり気持ち悪い発言だった。聞かなかったことにしてくれ」
俺が言うと羽崎はプイと顔を横に背けてしまう。
気のせいか、風呂上がりの時よりも顔が赤いように見える。
「……気持ち悪くなんかない……だから、安心して」
「お、おう」
意外にも、彼女の零した言葉はほのかに温かく丸みを帯びたものだった。冷たく鋭利な言葉が放たれると構えていただけに驚きが隠せない。きっと今、俺の眼は点になってしまっているはず。
「「……………………」」
しばしの沈黙を挟み、羽崎は深く息を吸って長く吐き出した。
そして俺へと向き直り、気を取り直すように口を開く。
「目黒川君が真面目で素敵な人だということがわかって嬉しかったわ。愛し合っている者同士じゃなければダメ……〝一方的に愛している〟だけじゃダメよね」
「わかってもらえたようで良かった――ん? ちょっと待て……それってどういう――」
「――好きよ、目黒川君……私はあなたのことが大好き」
――――――――――――。
どうも、深谷花びら大回転です。
近況ノートに載せた彼女との、まあ後日談と言いますか、その後を語りたいと思います。
ご存知の通り、わたくしの彼女はネット小説で散見される容姿端麗のマドンナに匹敵するレベルの美しさなんです。そんな彼女と過ごしたイブの夜は……とても激しいものでした。それはもう……言葉にできないほどね。
んで、朝起きたら彼女の姿がどこにもなかったわけですな。それどころかわたくしの財布に車のキーも………………。
誰でもいい――誰でもいいからわたくしをラブホから出してええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!! (軟禁3日目)
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