世間知らずなお嬢様と偽りのご挨拶5

 おいおいおいおいッ――あれヤバいって、完全にカタギの人じゃないって! だって任侠映画の常連さんみたいな顔してるもん! ごっつい灰皿で人の頭殴ってそうな見た目してるもん! 客間というか事務所だもん!


「……どうぞ、座って」


「あ――は、はいッ!」


 おっかない先生が担当する授業中のような気分だ。いや、それ以上か……とにかく、失礼のないようにせねば!


 俺は促されるままにお高そうなソファーに腰を下ろした。少し離れて小鳥遊が隣に座る。


「君が……甘美の彼氏さん、だよね?」


 テーブルを挟んで向かいに座っている小鳥遊パパが、俺の顔を見てそう訊ねてきた。おっかない顔して声音は優しく口調は穏やかだ……却ってそれが怖い。


「あ、はいそうです」


「お名前は?」


「め、目黒川、奏多と申します」


「目黒川奏多……うん、良い名前だね。ところで目黒川君、随分と汗をかいているようだけれど、大丈夫かい?」


 あなたと顔を向き合わせているからですとは言えず、俺は「あは、あははは……」と笑って誤魔化した。


「緊張しなくても良いよ、って言うのも無理があるか。見たところ甘美と歳は近いようだけど、目黒川君はいくつ――」


「お父さん!」


 小鳥遊パパの言葉を遮ったのは小鳥遊だ。彼女もまた、パパさんに負けないくらい怖い顔をしている。


「ちゃんと彼氏連れてきたんだから、約束通り縁談の話、取り消してよね」


「そういうわけにはいかない」


「どうしてよ! 話と違うじゃない!」


「なにも違くない。そもそも、私はそんな約束をした覚えがない。あれは甘美が一方的に押し付けてきただけ、約束でもなんでもない……いつも口酸っぱく言っているだろ、人の話は最後まで聞くものだと」


「……ど、どっちにしろ一緒よ。あたしはね、彼と結婚を見据えてお付き合いしているの、愛してるの――目黒川だってそうよね?」


「え? あ、おう……」


 俺が咄嗟に頷くと、小鳥遊は『ほれみたことか』とでも言うように勝ち誇った表情で小鳥遊パパに視線を戻す。


「生憎だけど、あたしは男に困ってないの。だから縁談なんてする必要ない……だから一刻も早く取り消して」


「……結婚を前提にお付き合いしているのなら、もう少し彼と話をさせてもらいたいな」


「ダメ、取り消しを認めてからにして」


「とりあえず縁談の件は保留。今、私がすべきことは目黒川君と言葉を交わして少しでも彼を知ることだ。素性も知らない相手に娘を任せるわけにはいかないからね」


「取り消しを認めてからにして」


 小鳥遊は縁談キャンセル一点張り。対する小鳥遊パパは静かにため息をつく。


「甘美、しばらく席を外してくれないか……目黒川君と二人で話がしたい」


「だから、縁談を取り消しにしてからにしてって……さっきから何度も言ってるじゃん」


「その件は保留だと、そう伝えたはずだ」


「はッ、なにが保留よ! どうせ考えを曲げる気なんてないんでしょ? あたしの気持ちなんてどうでもいいんでしょ? それもそうよね――お父さんは家族よりも会社の方が大切なんだもんね!」


「……………………」


 雲行きに怪しさを覚えてから降りだすまでの間隔があまりに短かった。


 片や熱く、片や冷めたまま。親子喧嘩のようで喧嘩になっていない、両極端な二人。


 俺は仲裁に入らずただ黙って小鳥遊親子を見守る。


 余所様のお家事情に首を突っ込むもんじゃないと空気を読んでるわけじゃない。俺がここにいる理由は小鳥遊の要求を通すことだからだ。


 これで小鳥遊パパが折れてくれればいいが……。


 口を閉ざし、机上に視線を落とした小鳥遊パパ。その姿を小鳥遊はさげすむような目で睨む。


「……否定すらしないんだ」


 小鳥遊はそう呆れた口調で零した。


「……………………」


 小鳥遊パパはおもむろに顔を上げ、娘を見つめる。


「出て行きなさい」


「――――ッ⁉」


 裏切られた……そんな失望の色を顔に浮かべた小鳥遊は、ソファーから立ち上がり、俯き気味に返す。


「……わかった」


「え、ちょ――小鳥遊ッ⁉」


 客間を後にしようとしている小鳥遊の背に俺は声をぶつけたが、彼女が足を止めることはなかった。


 ……う、嘘でしょ? 組長さんと……二人きり?



――――――――――――。

どうも、深谷花びら大回転です。


知ってる方も知らない方もおはようこんにちこんばんわ。


えっとですね、わたくしはですね、下らない下品で時たま下ネタぶっこむみたいな後書きか、★・フォローを催促するような後書きしか記さないんです。コメント返しも基本的にテキトー(笑)みたいな感じで返してるんです。まあ、んなことやってる作者は腐るほどいると思うんですが。いや、腐るほどはいないか、賞味期限をちょっと過ぎたくらいか。


んで、やっぱりどうしても不快に感じてしまう方もいるわけでして……ただ、本当に申し訳ないんですが、わたくしはふざけてないとやっていられないタイプの人間なんで……どうか、どうか許してください。


そのかわりと言っちゃなんですが、わたくしのことを好きなだけ罵ってください。コメントで『ゴミ・クズ・カス・どうして生きてるんですか? あれ? まだ生きてたんですか? どうして生まれてきたんですか?』等々、罵っちゃってください。わたくし、蔑まれるの結構――いや、かなり大好物なんでお願いします。


プライベートで嫌な事あった方なども、わたくしをストレスの捌け口にしてくれて構いません。なんなら相談にだってのりますよ? テキトーに返しますけど。


とにかく、気に入らなかったらじゃんじゃん言ってください。すべて快感に変換いたしますので気遣いは無用です。


ではでは、今日はこれにて~

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