世間知らずなお嬢様と偽りのご挨拶4

 お父さんを待たせているということで、俺と小鳥遊はタクシーを利用し彼女の家に向かった。電車じゃなく真っ先にタクシーが浮かぶあたりはさすがだ。


 ちなみに口止め料含むあの大金は受け取っていない。小鳥遊は無理にでもと俺に渡そうとしてきたが、頑なに拒否していた結果、彼女はしぶしぶ受け入れてくれた。


 金を払うことによる示し方しか知らないだけで、小鳥遊から誠意は伝わってきた。それで十分だ。そもそも俺に、報酬を受け取る資格はないしな。


「――すみません、ここで」


 と、隣に座る小鳥遊が運転手に声をかけ、タクシーを止める。


 おいおいマジかよ……今からここに上がらせてもうの? 俺。


 車窓から見えるは豪邸と呼ぶに相応しい建造物。その凛とした佇まいは格式の違いを見せつけているかのようで、今更ながら足が震えてきた。


「ちょっと、どうしたの? 目黒川。そんなに顔を真っ青にして」


「え? ああいや、別に? 全然大丈夫だけど?」


「そう……ならいいけど。それより、早く行きましょ」


 いつの間にか会計を済ませていたようで、車から降りる小鳥遊。俺もその後に続く。


「ついてきて」


「あ、おう」


 そして流れで敷地内へ。


 外はもうとっくに暗い。が、小鳥遊宅は明るい。光の衣を纏っている。というのも、照明が馬鹿ほどあるのだ。


 確かに見映えいいけれども、さすがに多すぎだろこれ。


 しかしそれが庶民の感想だということは重々承知している。まあつまり、俺には金持ちの感性がよくわからんってこと。


「入って」


「お、お邪魔します」


 俺は恐る恐るといった具合で敷居をまたぐ。


「――お帰りなさいませ、お嬢様」


 玄関を開けた先で待ち構えていたのは男? だった。


 どうして性別に疑問を抱いたかと言えば、その人が中世的な顔立をしているからに他ならない。執事服? なのだろうか、格好は男物で、耳が隠れるくらいの黒髪ショート。ただ、華奢な体つきに声変りを経験していないような声は女性をイメージさせる。


 男か女かわからんが、歳は俺とあまりかわらないように見える……え、まさかこの人が小鳥遊のお父さん?


 と、性別不明さんが小鳥遊から俺に視線を移してきた。


「こちらの方が……」


「ええ、あたしの彼氏の目黒川」


「あ、ど、ども」


 俺は軽く頭を下げる。


「それで――こっちは住み込みで家政婦をしている〝ニブタニ〟。格好は家政婦っぽくないけど――」


「趣味のようなものなので、お気になさらず」


 お手本のようなお辞儀をするニブタニさん。これで執事じゃないと言われても説得力がないんだが……あと性別どっち?


「お嬢様、ご帰宅早々で申し訳ないのですが、客間で旦那様が」


「わかってる」


 準備はいい? と目で訴えてきた小鳥遊に俺は頷いて返す。


「じゃあ、行きましょう」


 ――――――――――――。


 少しして小鳥遊は足を止めた。ここが客間だろう。


 彼女は中にいるであろう小鳥遊パパに声をかける。


「お父さん、約束通り連れてきた」


「……入ってきていいよ」


 あらやだぁ、なんて優しい声なのかしらん! 勝手に怖そうな人なんだろうなって想像してたあたしはホントに馬鹿ッ! こんなに耳心地の良い声を発する人が怖いはずがないじゃない! ああん、よかったわああああああッ!


 客間の中から返ってきた声に俺は思わず安堵する。


 がしかし、それが束の間の安堵だったと、直接目にして理解させられる。


 オープンザドアした先に待ち受けていたのが、スーツ姿で白髪オールバック、顔面を武装した強面のオッサンだったから。


 く――組長さんじゃねええかああああああああああああああああッ⁉




――――――――――――。

どうも、深谷花びら大回転です。


実はわたくし、男なんですけどもね? 人生で一度、スカートを履いたことがあるんですよ。

その時にね、こう思ったんです。


アリかも……って♡


♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡どう? 今夜、わたくしと、一夜限りの過ちを犯してみない?♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡


相変わらず気持ちわりーあとがきだなって声が気持ち良い――じゃなくて聞こえてきそうなんでこの辺で。ばいびー

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