第6話 だから魔術試験ってなんだよ。儂知らねーよ。
全異世界78億人の入学式愛好家の皆の衆、大変残念であるが入学式なんてなかった。
…嘘。寝てた。余裕で寝てた。
だって知らん奴の長い話とか元々聞くつもしないし。
むしろ、この考え方のせいで寝たまであるよね。
「それは悪いことだからですか?」
そうそう、制限が発動したって事。
「…仕事はせんでいいのかエデス先生。」
「寝ていた生徒を起こすのは立派な仕事ですよハイサス君。あなたのクラスの担任が私であることも聞いていなかったんでしょう?」
お早い睡眠学習ですこと。と言う捨て台詞を残して歩いていく
教師の態度じゃねえなあ!おい!
魔王に対する態度でもねえなあ!
「あ、起きたんだ。おはよう。」
おっと、モールス。
流石にお友達にはこの喋り方はできん。
「おはようモールス。クラスはどうだった。」
「はは、君と一緒だよ。」
おお、なんと心強い。
同じクラスに友達がいるだけで安心するなあ。
「あー…これからよろしく。」
「よろしくね。もう魔術試験始まってるよ、早く行こうか。」
だから何だよ魔術試験って。
「何するんだろうね。その魔術試験って。」
「あ、知らないの?」
知ってんの?これ常識なの?
魔術試験はどうやら学校内の魔法訓練場で行うらしい。
そして移動中、モールスはどんなことをするのかを教えてくれた。
「魔術試験っていうのはね、どんな魔法が得意かって言うのを見る…まあ、入学した人の得意な事を見定めるって感じかな。」
はー。なるほどなあ。
緊張しながらでも、質の良い魔法を打つって大変だしな。
勇者と戦った時は手が震えたもんよ。…そう考えると割といいのかもしれないな。子供のころから緊張に慣れておくっていうのは。
効率は悪いけどね。
試験会場は、内側からだとコロシアムみたいだった。
観戦席も客席もある。…ここで運動とかもできるのかなあ。
モールスは到着してすぐ、魔術試験に向かっていった。
まあ、なんと元気のいい子。
手を振って「お互い頑張ろうねー!」だって。
まあ優しい。
儂は一旦見学して、どんな魔術試験をしているのか見ることにした。
百聞は一見に如かずというやつだ。
「とか考えてたけど…」
儂は実際の会場を見てこう思った。
的あてだ。
それもただの的あてじゃない。
どれだけの威力と精度で的に当てることができるのか。
それを周りが見るんだ。
そんでもって、これ見てるの個性じゃないわ。
…違う。個性は見るんだけど、それは表向き。
「どのクラスに入れるかを決めている。」
「…
「反抗期の息子みたいな反応しますね、
まあ、こいつの言っていることは儂の言いたかった事だ。
ここで、魔術の才能がある者を探す。そして魔力の多い貴族が優先してレベルの高いクラスに入れてもらえる。大方そんなものだろう。
なるほど。たしかに魔力が多い貴族が有利だ。
そして、このシステムを全員わかってる。…貴族優先かあ。
人間ってそれが普通なの?
「ほら、次はトネール君の番ですよ。」
噂をすれば唯一知ってる貴族君。
…おお、詠唱してる。
聞こえないけど。
そんで?的に指をさして?
おー。
的には当たってなかったけど、雷のデカい範囲で的に当ててるっぽく見えるわ。
威力は強いね。威力は。
「これから精度をどれだけ上げることができるかですね。」
うん。これで付け上がると大変だけどね。
「じゃあそろそろ行きますよ。」
「え?」
「え?じゃないです。あなたとモールスさんで最後です。」
…まさかあの子、儂が寝てた間待ってくれてたの?
「その通りです。流石、魔王様はいい御身分ですね。」
「…実際いい御身分なんだよ。おい、さっさと行くぞ。」
「もともと、そのつもりで来てますけどね。私、先生ですし。」
「…」
もう無視。先生マウント無視。
さて、久方ぶりに…
「あ、ダメですよ?」
へ?
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