第5話 魔法学校入学式始まってすらないけどお友達ができました!やったね!

 デトワール魔法学校。

 ふむ。門がデカい。

 見上げれば、さらに大きな学校であることがわかる。

 しかも人が多いのなんの。

 門をくぐればお子さんを連れた家族がわらわらといらっしゃる。


 …なんで儂だけこんなやつなんじゃ。

 そんでもって、その女神こんなやつは何をしているかと言うと、


「いやあ、エデス先生。お迎えご苦労様です。」


「いえいえ。学ぶ意欲がある子を学び舎へ導くのも教師の仕事ですから。」


 いやこいつ教師なんかい。


 …はあ。じゃあ学校に入るしかないのかなあ。

 ええ?もう入っていいのかなあ。

 説明が欲しいなあ。初めて人間の世界でこんな人が多い所に来たよ?

 助け船は?

 なんて思っていると。


「ねえ、君も一人?」


 なんと声をかけられた。

 それも女。

 長すぎない髪型。しかし、青色の服のせいか冷静な雰囲気も感じる。

 育ちがいいのかな?


 なんにせよ学校で初めての会話…気を引き締めていこう。


「うん、僕はそうだけど。」


「そっか。実は私もなんだよね。勇者カーツベルンに憧れてこの学校に来たんだけど、みんな家族と来てるし寂しかったんだ…同じ一人仲間ってことで仲良くしてよ。」


「ああ、よろしく。僕はハイサス。君は?」


「モールスよ。入学早々友達ができて嬉しいわ。」


 実は儂も一安心している。

 いやあ、周りに馴染めなかったら大変だからね。

 あーよかった。


「でもこの学校、勇者が出る前から有名な学校なのよね。貴族みたいな人が多いのはそのせいよ。」


 確かに綺麗な服の人が多いとは思うが…別に貴族だからどうしたって感じなんだがなあ。


「貴族だと何かあるの?」


「貴族って言うのは代々魔力が多い人が大半なの。だから、子供に魔法学校に通わせて、将来は騎士だとか魔法使いとかの安定した職に就かせようとする人が多いってわけ。」


「冒険者じゃダメなの?それこそ勇者みたいなのになれるかもしれないのに。」


「ああ、それはね、」


「貴族ってのはな、血筋が命なんだ。そんな死にやすいことする方が頭おかしいんだよ。」


「ふーん。…え誰?」


 いきなり会話に交じってきた、取り巻きを連れた金髪の男の子。

 服は黄色でど派手な感じ。

 連れはみんなこの子の意見に「そうだそうだ」と賛同している。

 

 服の趣味が悪いぞ君。とは言えない。

 だって可哀そうだし。


 なんだかこっち見てみんなニヤニヤしてる。

 え、ほんとに君たち誰?


「…こいつ、さっき話してた貴族よ。」


「ああこれが…知ってる人?」


 肩をすくめるモールス。

 そっか知らないか。


 …え、どっちも知らないのに話しかけてきたの?なんなの?友達になりたいの?


 人の貴族ってこうなの?

 魔族はもっと高貴な感じだったよ?


「俺を知らないだと?…おい。俺はただの貴族じゃねえぞ、貴族の中でもトップレベルの魔力量を誇るトネール家の息子なんだ。お前みたいな一般人とは格が違うんだよ。」


「お。おお、なんと。」


「ふん!格の違いにビビっているようだな!まあいい!さらに格の違いを見せるのは入学式が終わってからだ!精々指くわえて格の違いを見てな!」


 高笑いを残して知らない人たちは、満足そうに帰って行った。

 格の違いって言いたかったんだろうなぁ。

 儂、ほとんど何も言ってないけど。


「トネールだって。聞き覚えはある?」


「…いや知らないわ。なんだったのかしら。」


「ええ?わかんない。」


 ああいうのは関わらない。

 これが儂が生きてきた上での結論。


「ハイサスさん。モールスさん。そろそろ入学式が始まりますので、こちらに。」


「「はーい。」」


 あの女神完全に教師してやがる。

 ムカつくぅ!

 チッ。行くしかないんだよなあ。


 内心悪態を付いていると、女神が…いや、エデス先生が近づいてきた。


「なんじゃ女神先生。」


「入学式の後は、お楽しみの『あれ』が待ってますよ。元魔王生徒。」


「『あれ』?『あれ』ってなんだ。」


「それはもちろん、」



 『魔術試験』ですよ。


 …いや、皆さんおなじみみたいに言われてもわかんねえよ!

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