第4話 女神が家に迎えに来たよ!

 コンコン。と、我が家のドアをノックする音。


 …ついに来たか。デトワール魔法学校からの迎えが。

 きたるこの日のために、自己紹介と愛想を毎日のように磨いてきた。

 母と迎えが話している声がうっすらと聞こえる。

 なんか聞き覚えのある声な気がするけど…まあいいか。


 …今は待つ。まだ待つんだ。

 儂の研究から言えば、呼ばれてから出た方が良い。

 ソースは儂。


「ハイサスー!お迎えが来たわよー!」


 ここだ!


「はーい!」


 荷物を持って(重い。子供の身体ちょっと不便過ぎない?)少し小走りで登場。

 そしてニッコリ笑顔で挨拶!


「こんにちは!僕、ハイサスって言いま…す…」


 ピシッ。と柔らかな儂の笑顔にひびが入った。

 あ、ああ!お前は!


「…どこかでお会いしたことがありましたっけ?」


 澄ました声で淡々と話しているが、儂はこの顔を忘れんぞ貴様ぁ!


 いや、


「女神ぃ!」


「…」


 なんだその顔はぁ!

 いかにも(私のかけた縛りで不便に生活してるのね)みたいなよぉ!

 儂、魔王なんだぞ!


「あらあら。あまりに美人さんで驚いちゃってるわ。」


 違うぞ母よ。こいつと夢で会ったんだろ母よ。


「この子あまり積極的な性格じゃないんだけど、何だか貴女だと感情豊かになって嬉しいわ。」


「いえいえ、こちらも元気そうな子で安心してます。」


 おい、何楽しそうに会話してんだこの野郎。


「こちら、お迎えに来てくださったエデスさんよ。」


「よろしくお願いいたします。ハイサスさん。」


「ど、どうも。」


 引きつった笑顔で握手する儂。


 いつかその余裕そうな顔ぶっ飛ばしてやるからな。


「ではそろそろ学校へ向かおうと思いますが…挨拶はよろしいですか?」


 おっといけない。

 今生の別れではないが、挨拶くらいするのが筋だろう。


 育った家に。育ててくれた家族に。


「…行ってきます。」


「ええ。新しい世界が、きっとあなたを待ってるわ。」




 ガラガラと森の中にある道を馬車が進む。


「で、どうでしたか。」


「チッ。何が。」


「13年間の人間生活は。」


「不便としか言えんわ。できることも少ないし、何なら制限もされとるし。」


「その割には、家の方には愛着を持っておられたようですが?」


「………そんなことより、なんでお前がここにおる。」


「もちろん見張りです。」


「見張りィ?そんなもん、悪い事したら寝てしまうんだから要らんであろうに。」


「悪意のある場合はそれでいいですが、それ以外の場合も考えられますから。」


「はぁ?どんな状況じゃそりゃ。」


「これから行くのは学校なんですよ?しかも魔法学校。才能も運も勉強も必要になってくる訳ですから…」


 いじめられているお友達を助けてあげる時に、本来の魔力で…とかね。

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