第2話 儂(12歳)が転生の良い所と悪い所を語るよ!

 儂が転生してから今日でぴったり十二年になった。


 そこで、儂の感じた異世界転生の良い所を発表しようと思う。


 …もうね、家が最高。しょうもない?違うんだな。

 この木造の作り。もう新鮮すぎ。

 儂の城って石造りだったから冷たいのなんの。雪が降ってみろ、まあ寒いんだぞ?お城に住んでみるか?魔王城だけど。

 暖炉の前で今の母親の抱かれながら本読むのヤバイよ。三秒。三秒で寝れる。


 マジ木の家最高。人の技術も捨てたもんじゃないなあ。




 はい。じゃあ儂の思う女神の…異世界転生の悪い所。


 悪事を働こうとしたら、三秒。三秒で寝ちゃう。

 もうね。問答無用でシャットダウンなんだよね。

 ちょっと強い魔法を使おうとしたら寝ちゃう。

 困るよね。もうね、赤ん坊のころに親にいたずらしようとしたら寝ちゃうからね。

 意識は儂のままなのにだよ?

 それなのに眠気に負けるって…屈辱。

 ずっと寝てる子だって言われちゃったよ。

 悪いことができないようにされてる。

 いい子を強制されてる。

 これ絶対女神のせいじゃん。

 マジ女神最低。


 あと言っておくなら、この縛り異世界プレイはきっと儂だけ。

 魔王の特権。

 まじで女神最低。




 まあこんなもんかなあ。

 …え?儂は今何してるのか?

 本読んでるよ。人間の歴史の本。

 絵本みたいな感じだけどね。

 まあ世の中勉強だよ。うん…ちょっと儂のこと悪く書きすぎ過ぎだよね。

 だって戦争は人から仕掛けてきたし。


 …魔王のくせに人のためにわざわざ勉強するのかって?

 いやあ。流石に子供が世間知らず過ぎると今の親に申し訳ないなって。いや本当に。

 いやべつに、勉強しないことが悪事判定に入ってるとかそんなんじゃないよ?

 なんでそれだけで眠くなるんだよゴミかよ。なんて思ってないよ?

 いやほらね。勉強って大切で「ごはんよー」はーいママー!

 やったー!夜ごはんだ!

 …いい子のふりをしないとだからね。笑えよ。


 これでも元魔王。

 いい返事だろ?なあ。






 儂はとある家に男の子として転生した。

 父と母、それに第一子の儂。

 なかなか良い家庭に育てられたと思う。

 飯はなかなか良いし(いまケーキを食っとるが美味い)、なにより家が好き。

 人の家ラブ。


 しかし、大きな問題があった。

 儂は人間の個体としての名前を覚えられんかったのだ。

 魔王で、従者で、幹部。

 ダメか?これでダメか?


 …まあいい。そして本日十二歳。

 これの年齢で名前呼ばんのはおかしいじゃろ。

 十二年生きてきたら常識くらいわかる。

 ただ、それ以上に数百年の癖が抜けん。

 両親はパパとママって呼んでる。だってそれしかわからんし。

 儂の肉体の名前もすぐ忘れてしまう。


 外に出て子供等と遊ぶこともあるが、「ねえ」だけで相手を呼んできたわ。

 「お名前は?」なんて聞かれてみろ。

 母の後ろに隠れて人見知りのふり。

 前世はずっと「勇者」とか「商人」とかのざっくりで読んでおったから、今すごい困っておる。


 まあでも、儂は本に出てくる勇者の名前は覚えたのだ。

 そう。えっとな。えーっと。カ、カーツ、えー


「ハイサス、聞いてるの?」


「そう!カーツベルン!」


 …あ。(ちなみにハイサスは儂の名前である。…多分。)


「ど、どうかしたの?ママ?」


「まあ、勇者カーツベルンも関係がないわけじゃないけれどね?」


 え、どゆこと?


「あなたは一年後に、学校へ行ってもらおうと思います。」


 …いやぁ勉強は大切なんだけど。何でそんないきなり。


 っは!?いきなり眠気が!違う!行きたくないわけじゃない!ええいきなり?って思っただけで…いきたくないわけじゃない!いやもうこんなん誰でもそう思うって!しょうがな…いzzz






 この間、約三秒。


 儂が学校について明確な説明を知るのは、誕生日を迎えた次の日になる。

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