第2話 店員目線

「いらっしゃっせ~~こんばんは。」


はぁ。今日もバイトかぁ。


まあ夏休み暇だし、給料も夜勤手当が出るし、深夜にはあまり人が来ないからいいんだけどね~。


今日は割と絶え間なく人が入違っているけど。


でもまあ、深夜に来るお客さんって個性的だから面白かったりするし、むしろ来てくれた方が良いかったりする。かも?


「お決まりでしたらどうぞ~。」


うん。


今回の客は男なのか女なのか分からない系ぽっちゃりさんだ。


なんだか印象に残ってしまってすぐに顔を覚えてしまった。


「あと、家族チキンをひとつください。」


「は~い。」


そう。


そして決まっていつも家族チキンを一つオーダーしてくる。


だから俺もこの時間には家族チキンを必ず一つは入れておくことにしているのだ。


「680円です。」


「ではちょうどお預かりいたします。」


「ありがとうございました~。」


ふぅ。


お、これで店内に一人になったな。


・・・


なんというか、もうこうなったら暇との勝負になってくるんだよね。


もしかしたら忙しいほうが時間が経つの早くて楽なのかも。


はぁ~。誰か来ないかな~。


・・・


お?


人影だ。


ピポピポピポピポピポーン♪


「いらっしゃっせ~~。」


あれ誰だろう。


部屋着っぽいからここら辺の人だとは思うけど・・・


見たことないぞ?


えぇ~い。暇だし様子でも伺うか。


・・・


なんかめっちゃ慌てふためいてるな。


・・・かごも持たずにあんなにいっぱい商品を抱えてやがる。


何あの人・・・




・・・




めっちゃおもろいやん!


うわぁ、これでまたバイトの楽しみが増えたなぁ。


おお、食品にばっかり手を伸ばすんじゃなくて、雑誌にも手を伸ばし始めたぞ。


いやはや謎だな~あの人。


しかも大きいリュック背負ってるし。


・・・何が入っているのやら・・・。


お?


こっちに向かって歩いてきた!


会計ですね?待ってました!


「ど~ぞ~。お預かりしま~す。うぇ」


!!??


くっさ!!


おいおいなんだなんだ!


思わず「うぇ」とか言っちゃったし!


やべーぞこいつ!!!おもしれえええ!!


っと、そうだ。こんだけ商品が多いんだから、バーコードを素早く読み取っていかないとな。


あ、これってさっき、あの人が取ってた雑誌だ。


・・・。


・・・だめだ。笑ってはだめだ。


慌てふためきながら取った雑誌がR18の本だなんて面白すぎるだろ!!!


あーあ。笑っちゃったのばれたかな?


・・・さて、バーコードをすべて読み込んで・・・


あ、そうそう。袋いるか聞かないと。


「袋はお付けしますか?」


「ふぇ!?は、え、あ・・・。」


ん?俺なんか変なこと言ったかな?


・・・いや、この人のコミュニケーション能力の問題か・・・。


うん。あまりふれないでおこう。


「おね、がし、ま・・・あっ」


「一袋につき3円プラスさせていただいて、合計1万と2719円になります。」


・・・あれ、聞こえなかったかな?


「合計一万2719円になります。」


「あ、カ、カード・・・で。」


「差し込んでくださ~い。」


「は、はぃぃっ、あ」


ん?


どうしたんだ?


リュックを懸命に探しているようだけど・・・まさか財布を忘れるなんて・・・


「お、お客様?」


「あのぉ、さ、ぃふ。わ、忘れてっ・・・あ。」


まじかああああああ!!


勤務して約半年、財布忘れは初めてだ!


やべえおもろすぎる。


あー冷静にならないと。


「はぁ。さようですか。すぐ取ってこられるのでしたら、このまま取りに行っていただいて構いませんが・・・。」


「あ、ぃ、きまふ。あ、いき・・・ます。」


あー。ダッシュで行っちゃったよ。リュックも置いて。


すぅ~。


気になるなぁ。この人のリュックの中身。


・・・バレない・・・よね?


そ~っと、開けて・・・


お?


カ、カエルのぬいぐるみだ!


おいおい、いい年した大人がぬいぐるみだってさ、まじか!


おもしろすぎ!


へぇ。あ、なんか背中に書いてある。「ケン&ロン」


なんかのブランドか?


大事な物みたいだからしまっておくか・・・。


ん?人影?


あの人もう戻ってきたの!?


「おかえりなさいませ・・・ぇ。」


「強盗だ!動くな!」


・・・まじかよ。


グラサン、マスク・・・包丁。


・・・だめだ動いたら殺される・・・。


とりあえず命が優先だ。従おう。


「おい!手を上げろ!」


「はい・・・。」


「この袋に有り金全部詰めろ!」


「はい・・・。」


「お前手を上げろと言っただろ!」


理不尽な!


手を上げながら袋に金詰めるのとか無理だろ!!


はぁ、なんか外国語でブツブツ言い出したし、やばい雰囲気だわ。


うう、仕方がない。腕と腕でボックスを挟んで・・・


む、難しいな。


よし。


・・・なんか絶対に手を汚したくない医者みたいになったけども!


「ど、どうぞ・・・。」


「よし。お前、警察に電話だけはするなよ?」


「じゃあ俺はいくぞ。」


はぁああ。よかった。救われた。


いやぁ、死を前にするとあんなにも無力だとは・・・。


でも、これで助かったはず・・・


ピンポンピンポンピンポ~ン♪


「あ、ぇっと!さ、さ、さっきの者、です、が・・・?」


あーーこのタイミングでか。天才かよ。


「おい!動くな!手をあげろ!」


「あ、ぇえと?あ・・・」


「んじゃゴラァ!?」


あ、最悪だね。


コミュ障のせいでキレさせちゃったよ。


「お、お客様!この方に従ってください!」


うわ、逃げよ。


最低限のアドバイスはできたはず!


とりあえず裏方まで・・・。そろり、そろり。


よし。


はぁ、カメラをチェックして。よし、録画はできてるっぽい。


もう裏から出よう。うん。


・・・


・・・


おい、なんだ?固定電話よ。


そんなに使ってほしそうにして・・・。


・・・


はぁ。オーケー分かった。


呼べばいいんでしょ?警察を。


110と。はぁ俺も善人だなぁ。


よし、小声で・・・


「すみませ~ん。近所のコンビニで強盗です。今すぐ来てください~い。」


はい終わり。以上。勤務終了!相手の返事なんざ知らん!


やることやったし、よし、帰ろう。


・・・いや、最後に防犯カメラでも覗いていくか・・・


・・・


まずい。


・・・


・・・まじか。


遅かった。


理由はよくわからないが、強盗が血を流しながら倒れている・・・。


俺の責任だ。人の命が・・・


・・・あ。


待てよ。


強盗が殺された原因が不明な以上、俺も警戒した方が・・・。


「###################」


なんて・・・?


あ。


うぐぁ。あぁぁ・・・。・・・・・・ぁ。

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