第4話 聖夜
ボクの人生初ダイエットがスタートした
幸いうちは八百屋だ
野菜&果物は売るほどある
まずは
マキシマム ザ ハイカロリーな食生活を
変えねばならない
ボクの身体の半分を作っているであろう
愛すべきカップ麺
しばしの封印だ
店の神棚に2つだけ願掛けで飾った
緑のタヌキと赤いキツネ
成功したら食べるんだ…
いや
絶対成功させて食べるんだ
彼女と2人で!
家族の全面的な協力を得て
朝、昼、晩
まさに文字通りの野菜生活
野菜祭り開催だ
あとはやはり運動だ
しかし…
鏡に写ったこの身体は何だ
陸にあがったトドか?セイウチか?
いずれにしろ
たわわに実った緊張感0ボディに
過度な運動は危険だ…
いや
何を言っているんだ?
食事だけで痩せられると本気で思ってるのか?
危険をおかさねば越えられない壁がある
今がその時だ
今やらないでいつやるっていうんだ!
頭の中に鳴り響くのは
ボクシング映画の金字塔
ロッキーのテーマソング
ピタピタのTシャツにレインコートをまとい
脂肪燃焼ウォーキングツアーに出発だ
荒川の河川敷
公園通り
いちょう並木
そして
コンビニ通り
…窓越しに見える彼女の姿…
それだけが心の支えだ
…彼女と目が合うこともあった…
すぐでもお店に飛び込みたい気持ちを抑えた
昼夜を問わず
ボクは歩きに歩いて歩きまくった
夜中に何度も職務質問された
顔なじみのお巡りさんもできた
膝って本当に笑うんだと知った
カクカクが止まらなかった
家の中での運動も頑張った
ネットで見つけた
ロングブレスダイエット
お尻の穴をキュッと締めて
おへそ辺りを意識して
腹筋に力を込めて
一気にフ-ーーーーーー-!!
お腹の筋肉がつって
面白くもないのにのたうち回った
お風呂でも半身浴
皮膚が白くシワシワになるまで毎日入った
子供の頃に流行った
水につけておくと数日後
ブヨブヨにでかくなる恐竜のオモチャ
これの逆をイメージした
チーズとマヨネーズの沼に
何度もはまる夢をみた
お出汁で満たされたプールに
天ぷらを浮かべて日光浴する夢もみた
お巡りさんにも
頑張れとはげまされた
1度履いたら脱げなくなる長靴が
自力で脱げるようになった頃
あたりはクリスマスムード一色になっていた
今日は12月24日
ついにこの日がやってきた
しばらく乗っていなかった体重計
さあ
どんな数字を叩き出してくれるんだ!?
ピピっ
-20kg
…OKとしよう!
100kg→80kg 立派じゃないか!
スラッとまではいかないが
ムチッとまではこぎつけた
頑張った
良しとしよう!
自分に言い聞かせ、いざコンビニへ!
彼女がいない隙をみて
店長に手紙を渡してもらうようお願いした
『バイトが終わった後、お話しがあります
裏の公園で待ってます。』
彼女のバイトが終わるのは22時
今は15分前
店長は手紙を渡してくれただろうか?
そもそも渡してくれたとしても
彼女が来るなんて保証はどこにもない
むしろ彼女がここに来る意味なんて
さらさら無いかもしれない
今夜はクリスマスイブ
どこかに遊びに行ったかもしれない
…きた!
…彼女だ
ゆっくりとこちらに向かって来る
気のせいか
笑顔のように見える
…きてくれたんだ
久しぶりに見た彼女の姿は
何だか神々しく見えた
…まずは、あいさつだ
…いきなり直球は無しだぞ
聖なる夜の奇跡よ
ボクに降り注げ!!
「大好きです!ボクと付き合って下さい!」
…ど直球だ
…2オクターブくらい高い声になってしまった
…聞こえただろうか
彼女の顔をまともに見ることはできない
もう一度
口に出そうとした時だった
「ごめんなさい」
…そりゃそうだよな
…奇跡なんて起きないよな
「好きな人がいます」
…もうどうでもいいよ
「前のあなたが好きです」
…はは
…名前言っちゃうんだ
…『まえのあなた』さんね
ん?
んん?
まえのあなた……
?!
?!?!
「あ、あの、それって」
「私は前のポッチャリなあなたが好きです!」
なんですと~!!!!
女神様はポッチャリがお好きですか!
いやいや
ポッチャリの遥か斜め上いってましたけど!!
人食い族に出会ったら
1番最初に食べられる自信ありましたけど!!
今までの
ダイエットは何だったの~~~
「安心して下さい。2週間で元に戻します!」
2人を繋いだ
キツネとタヌキ
赤と緑はクリスマスカラー
聞こえてくるのは
ジングルベル
聖夜に起きた小さな奇跡…
今宵もどこかで…
2人を繋ぐクリスマスカラー @busacat-kabu
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