第3話 決意

それからというもの

ボクは定期的なカップ麺の購入に加えて

事あるごとにコンビニに向かった。


のり塩ポテチを買いに。

コンソメポテチを買いに。

うす塩ポテチを買いに。

またのり塩ポテチを買いに。


もうとにかく毎日コンビニに向かった。


ただただ、彼女の微笑んだ顔が見たくて。


ボクは今まで1度も恋愛経験など無い

もちろん告白なんてしたことは無い

それどころか、恋をしたのも初めてだ

こうやって通いつめていることが

正解か間違いかも分からない

彼女にとっては、この上ない迷惑かもしれない

ただですら暑いのに

ボクみたいのが来たら店の温度が上がるわ!

と思っているかもしれない


でも彼女は言った

ボクが大好きな緑のタヌキと赤いキツネが

大好きだと

ボクが大好きなモノを大好きだと

彼女は言ったんだ

天使の様なキラキラな笑顔で


有名なアクションスター俳優である

故ブルース・リー先生も言っていた


「感じろ」


確かに感じた

ビビビってやつだ

ボクはこの気持ちを信じたい

独りよがりでもいい

この気持ちを大切にしたい


ボクは心に強く決め、

苦手なおしゃべりも頑張った。

八百屋の店番でお客さんから仕入れた

軽いギャグも言えるようになった。


「今日は暑いですね」


「本当ですね」


「暑すぎてあっちで溶けている人いましたよ」


「え~本当ですか~」


「いるわけないでしょ」


…うるさいぞ、オヤジ


なんて楽しい日々なんだ!

なんて充実した日々なんだ!

こんな日がずっと続いてくれれば良いのに

でも

彼女は今年いっぱいしかお店にはいないんだ

どうしたら…

どうしたら…


答えが出ないまま数日後

コンビニに向かうと

彼女と店長がしゃべっているのが聞こえた


「そういえば、彼氏とかはいるのかい」


「いないです」


思わず身を隠したパンの棚の裏で

小さくガッツポーズ


「若いんだし、好きな人位はいるでしょ」



…ごくり

彼女、無言だ



「最近流行りのなんとかっていうアイドル

みたいなスラッとしたのがタイプかな?」


「…ええ、そうですね」











ガーン

これ以上ない

ガーン

おでこの真ん中を

巨大なトンカチでガツンと一撃

一瞬で目の前が真っ暗


何を勘違いしていたんだ

何を思い上がっていたんだ

そりゃそうだろう

誰がこんなフリーダムな身体の持ち主を

誰がこんなエレベーターで乗り合わせたら

失敗したって思われる身体の持ち主を……







痩せてやる

こうなったら彼女好みになってやる

なんたらっていうアイドルみたいな

スラッとボディになって

彼女に……


決めた

勝手に決めた

期限は……クリスマスイブ!


絶対に痩せてみせる!!





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る