四十七、新たな仲間
「これで私からの話は以上になります」
「え~と、ミラーさん。俺達と一緒に行動するということですが、まさか依頼には付いて来ないですよね?」
「当然付いて行きますよ」
「でも、ミラーさんは受付嬢ですよね。こう言っては何ですが、危険ですよ」
俺達冒険者が受ける依頼は危険と隣り合わせ。それが採取依頼だとしても、いつモンスターから襲われるかも分からない。だからこそ自分の身を守るために戦うすべを身につけるのだ。そのため、そんな危険な場所に連れていくことは出来なと考えていたが、
「そのことなら心配しないでください」
ミラーさんは俺にギルドカード見せてくれた。冒険者なら誰でも持っているギルドカード。
「どうしてミラーさんがギルドカードを持っているんですか?」
「それは私が元冒険者だからですよ」
「え?」
「流石のマイルさんにも知らないことがあったのですね」
そこからミラーさんの説明が始まった。
冒険者ギルドで働く職員は皆元冒険者である。ケガをして冒険者を出来なくなった者や、家の都合で冒険者を引退して自分の故郷に戻って来た者、ギルドからスカウトされてここで働いている者などがいる。ミラーさんはギルドからスカウトされて冒険者をやめてここで働いているらしい。
「そして私は、元Bランク冒険者でした。なので大抵の依頼にはついていけますし、戦力にもなりますよ」
「それはとても心強いですね」
俺は、ミラーさんのステータスを確認してみる。
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ミラー=レキノス 22歳 人族 LV40
スキル:剣術 熟練度5 短剣術 熟練度4 弓術 熟練度4
火魔法 熟練度5 雷魔法 熟練度4 光魔法 熟練度4
回復魔法 熟練度4
毒耐性 熟練度3 麻痺耐性 熟練度3 睡眠耐性 熟練度3
魔力強化 熟練度4 消費魔力軽減 熟練度4 幻影 熟練度3
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レベルがかなり高い。それにスキルの量もそこそこ有り、全体的に熟練度いい感じに高い。確かに元Bランク冒険者だけあると思う。これなら、パーティーに入ってもらっても問題ないだろう。
「これで私の話は終わりになりますので、そろそろマイルさんのお話を聞かせてもらってもいいですか?」
「今朝の事ですか?」
「そうです」
まあ今後一緒に活動するのであれば秘密にする必要もないだろう。それに知っておいてもらえる方がありがたい。ただ、
「今後ミラーさんの事はどのように考えたらいいのでしょうか? ただの同伴者なのか、それとも同じパーティーの仲間なのか」
これによって話す内容も少し変わってくる。それに、そろそろアリスにももう一つの魔眼の事についても話しておきたいと思っていたしな。
「そうですね。マイルさんはどうして欲しいですか? 今回ギルドマスターからは私の自由にしていいと言われています。もし、マイルさんが私にパーティーに入って欲しいと望むのであれば、そうします」
「ミラーさんはそれでいいのですか?」
ギルドからスカウトされてギルド職員として働いているとは言え、条件が冒険者をしていたときよりも良かったからこそこの道を選んだはず。それに危険な冒険者業に戻るよりも安全なギルド職員でいる方が幸せじゃないか。
俺が色々と考えていると、
「マイルさん、私は別にギルド職員の仕事が安全と、給料が良いからとかの理由でこの仕事を選んだわけでないですよ。たまたま、ギルドから話をいただいた際、所属していたパーティーで解散の話が出ていたのです。ソロになってからどうしようとかも考えてなかったので、ギルド職員になっただけなんですよ。なので、冒険者をやめたわけでもないですし、マイルさん達と一緒なら楽しく冒険者ができるとも思っているのですよ」
「そう言うことでしたら、是非お願いします」
「分かりました。ただ、ギルドの仕事との掛け持ちとなりますが、それに関してはご心配なさらずに」
「分かりました。これからよろしくお願いいたします」
「よろしくです。ミラーさん」
「どうぞよろしくお願いいたします」
「それではマイルさん、話してくださいますね」
「そうですね。すべて話させていただきます。アリスには以前している話になるけどね」
「はい!」
「後ここで聞いたことについて他言無用でお願いします」
「分かりました。」
「分かったわ」
俺は、ミラーさんとクリスに鑑定の魔眼の事について話した。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
俺の話を聞いた二人は、
「凄い能力ね。確かにこのことが他の冒険者にでも知られたら大変なことになるわね」
「す、凄いです」
冷静に分析しているミラーさんに、驚いているクリス。どちらも正しい反応と言えばそうだ。だが俺はもう一つアリスにもまだ話していないことを話そうと考えていた。五年前、女神様から他の人に話すなと言われていたが、大切な仲間にだけは話しておかないといけないと思った。もうケイル達の時のような間違いを犯したくないから。
「それともう一つ、これはアリスにも話していなことだ」
俺は左目の事について話す。正直どういう反応をされるか不安で仕方がないがそれでもだ。
「俺の左目にも魔眼があるんだ」
「左目にもですか!」
アリスが驚く。それそうだよな。右目だけと言っていたからな。
「この左目の魔眼は正直右目以上に強力な魔眼だ」
「それは能力が多いからとかですか?」
クリスからの質問が来る。
「いや、能力は一つだ。ただしそれが強力過ぎる。右目の鑑定の魔眼がなくても十分に戦えるだろう」
「それは一週間前の戦いで他の冒険者達が戦い抜けたのに関係しているんですか」
流石はミラーさん、的確な質問だ。
「はい、あの時の戦いで使っていました。もしこの魔眼がなければモンスターの大群を止めることはできなかったでしょう。それに古龍にも勝てなかったと思います」
正直あの時の俺と古龍には、力にかなりの差があった。それはどんだけスキルを使おうと埋められるような差ではなかった。その差を埋めてくれたのがこの左目にある低下の魔眼なのだ。
「それほどの力があるんですか」
「はい。この左目のおかげでケイル達はたった三年でAランク冒険者になることができたんですから」
その言葉を理解出来たのはアリスとミラーさんだけで、クリスは頭を捻っていた。
「それは、強力ですね」
「あの人達の実力でAランクになれるのですから、かなりの物ですね。なんていう魔眼なのですか?」
「左目にあるのは低下の魔眼。対象の能力を最大で十分の一まで下げることが出来る。制限時間はあるがな」
俺の話を聞いた三人は何も話さない。
「まあ、この能力に関してはアリスと出会ってからは殆ど使っていないがな」
「それは、一週間前の戦いの時だけということですか?」
「そうだ。出来る限り、アリスには自分の力を過信して欲しくなかったから使わなかったんだ」
俺は正直、この話をしたら皆俺から離れていくんではないかと思っていた。特にケイル達の事を知っているアリスとミラーさんは特にだ。
「私は別に気にしませんよ」
「私もですね」
「私もです」
皆の言葉が嬉しかった。
「私達はこれからもマイルさんと一緒ですよ」
「はい、パーティーの仲間なんですから」
「アリスさんとクリスさんの言う通りですね。それに、ケイル達だって、あなたをパーティーから追い出した後、しっかり自分の力と向き合っていればあんなことにはならなかったはずです。なので、あの事は気にしないでください」
「ありがとうございます」
俺は皆にお礼を言ってその日は解散となり、クリスはギルドの休憩室で一日安静に、ミラーさんはこれからの手続きをするとのことだった。
俺はアリスと一緒に宿へと戻るのであった。
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