閑話 2

 鍛冶屋を出た俺とアリスは、


「お腹が空いたな」


「そうですね。もうすぐお昼ですからね」


 空を見ると既に太陽が真上近くまで登っていた。俺とアリスの剣を親方に作ってもらうことが決まったと、細かい所までどのような武器にするか話を詰めていた。それこそ、時間を忘れてだ。


「どこかに食べにでも行くか」


「いつものお店ですか?」


 どこかに食べに行くとなると、アリスと初めていったお店ばかりに言っていた。今日は、


「昨日の報酬もあるし少しいい店に行くか」


「いいんですか? あのお店にはお世話になっているのでは?」


「たまにだよ。せっかく臨時報酬も入ったことだしな」


「そうですね。それに今はマイルさんとデート中ですしね」


 アリスにデートしていたことを思い出し照れる俺。鍛冶屋で親方と武器の話に集中していて完全に忘れていた。


「そ、そうだな」


 俺は、遠くを見ながら言った。


 それから暫くは町の中を見て歩く。それほど広くない町なので、お店自体さほどない。


「アリスは何か食べたい物あるか?」


「私ですか? そうですね~、では最近出来たばかりのお店に行ってみませんか?」


「いいな、行ってみるか!」


 俺はアリスに案内されて新しくできた店へとやって来た。お昼時と言うこともあり既に少し列ができている。


「マイルさん、並びましょうか」


「そうだな」


 俺達は列の最後尾に並ぶ。前には十人ほど、十五分程で順番が回ってきそうだ。


「そう言えば、ここは何のお店なんだ?」


「ここは、東の方の国からやって来た人がやっているお店だそうで、料理名がたしかラーメルと言う麺料理だそうですよ」


 初めて聞く料理名だな。東の国のと言えばこの大陸とは別の発展を遂げた人種が暮らしていると聞いたことがある。そこの料理は少し独特ではあるが、かなり美味しいと聞いたことがある。


「それは楽しみだな」


「はい!」


 元気のいい返事だ。


 それから、アリスと他愛もない話をしていると十五分ほどが経ち、俺達の番がやってきた。店の中に入ると、


「いらっしゃいませ! 何名様あるね?」


 元気のいい店員の女性の声が聞こえてくる。


「二人です」


「二人ね! カウンターでいいか?」


「はい」


 俺達はカウンター席に案内された。中は人で一杯、壁にメニューが飾ってある。


「トンコツ? ショウユ? ミソ?」


 ラーメルの前にあまり聞きなれない文字が並んでいる。一体何なんだと思い、水を運んできてくれた先ほどの店員に聞いて見ると、


「トンコツは豚の骨から出しを取ったスープのラーメルね、ショウユはごく一般的なラーメルね。ミソは豆や麦などを発酵させたものをスープに混ぜたラーメルね。どれもおいしいよ」


 お姉さんは教えてくれた。俺とアリスは、どれにするか話し合い、俺はショウユラーメルでアリスがミソラーメルを頼むことにした。お姉さんに注文を頼むと、


「かしこまりましたね。ショウユ一にミソ一ね!」


 お姉さんは大声で叫ぶ。すると、


「ショウユ一、ミソ一、かしこまり!」


 厨房から声が聞こえてきた。さっきので注文が通ったようだ。


「少し待つね」


 それだけ言ってお姉さんが食器を片付けに行く。厨房の方からとてもいい匂いが漂ってきてよりお腹が空いてくる。


「楽しみですね。マイルさん」


「そうだな。いい匂いのおかげでより一層お腹が空いてきたよ」


「私もです。早く食べたいですね」


 俺達はまだかまだかとラーメルが来るのを待っている。


 そして待つこと数分、


「お待たせね」


 お姉さんがラーメルを持ってきてくれた。器の中いっぱいに入っているスープ、その中に入っている細い麺。上には薄切りにされた肉? と、ネギが乗っている。目の前には箸とスプーンみたいな、だけど少し違う物がある。


「これは一体?」


 俺が頭を捻っていると、


「それはレンゲって言うね。スープをすくって飲むよ」


 俺はお姉さんに言われるがままにスープをすくってみる。すると、多くのスープをすくうことが出来た。スプーンの乗せる部分が深くなっているために、より多くのスープをすくえるようになっている。


「これは凄いな」


 俺は少し驚いた。


 俺はそのまま、すくったスープを口へと運び飲む。


「これはうまい!」


 少し辛くはあるが、独特の味で美味しい。


「次は麺だ!」


 俺は箸を使って麺を掴み口へと運ぶ。細い麺のためにかなり量を運ぶことが出来た。


「うまいな。麺とスープが絡み合っていて凄くうまい」


 箸が止まらなくなる。


 気付くと俺はスープまできれいに食べていた。アリスの方も既に食べ終わっている。


「どうでしたか?」


 少し不安そうに聞いてくる。


「おいしかったよ。アリスは?」


「おいしかったです。想像を遥かに超えていました」


「また、きたいな」


「はい」


 俺は二人分のお金を払って店を出た。


 それからアリスと町の中をゆっくりと見て回った。そして、時間は過ぎて夕方になり、俺達は宿へと戻った。夜は宿で食べ、明日に備えて休む。また明日からは冒険者活動再開、ただ俺の武器が今はないため低いランクの依頼をこなしていくことになるだろう。

 

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