閑話 1

 翌日、俺は宿の外でアリスと待ち合わせをしていた。昨日、冒険者ギルドから宿への帰り道にアリスからデートをしたいと言われたため、待ち合わせをしている。まあ、デートと言ってもお互いに行きたい場所へと一緒に行くだけ。


「お待たせしました」


 いつものような身軽な服装ではなく、長いスカートに女の子らしいフリルが付いた服を着ているアリスが声を掛けてきた。いつものはストレートにしてる銀髪を今日は頭の後ろでくくっている。


「俺もついさっききたとこだよ」


 本当は遅れてはダメだと思い、三十分ほど前にはここに来ていた。


「本当ですか?」


「ウソついてどうするんだよ」


「それもそうですね。マイルさん、今日の私の服装はどうですか?」


 俺の前で回って見せる。その時にふわりとスカートが翻る。その姿が物凄く可愛く見えた。


「似合ってると思うぞ」


 俺は思わず顔は赤くなり、まともにアリスを見れなくなってしまう。そんな俺の姿を見て、


「どういう所がですか?」


 いたずらっ子のような笑顔で俺を見てくる。そんなアリスに、


「そろそろ行くぞ! じゃないと時間が無くなる」


 俺は、アリスの手を取って歩き始める。それに合わせてアリスも俺の隣を歩き始めた。


 俺は、ちらりとアリスの横顔を見てみると、頬を赤らめている。


「マイルさん、どうして手を?」


「今日はデートなんだろ。ならこうしておかないとな」


「そうですね」


 そこからしばらく俺とアリスは無言で歩いていた。お互いに何を話していいのか分からなかったのだ。


 そうこうしている内に俺の目的地へとやって来た。午前中は俺が行きたいところへと行くことになっていた。


「ここは?」


 アリスが店を見て質問してくる。


「鍛冶屋だよ。この町でかなり腕利きのね」


 元々、今日は新しい武器を作りに行こうと考えていた。昨日の戦闘で今の武器にも限界が来て、今後より難易度の高い依頼を受ける事を考えると新しい武器がいる。そのため、知る人ぞ知るこの鍛冶屋へ行こうと決めていたのだ。


「昨日の戦いで、こいつももう限界を迎えたし、今後の事を考えるとそろそろ替え時かと思ってな」


 俺は、この三年間お世話になった剣を見る。この剣は村を出るときに、両親から貰った物でこの三年間の思い出が詰まっている。良い思い出も、悪い思い出も様々であるが、俺にとっては大切な思い出。だから手放すのには少し躊躇いがあるが、それでも今後の事を考えると変えないといけない。その後、異空間倉庫で大切にしまっておこうと思う。


「そうだったのですか、確かにマイルさんの剣、昨日見たときひびが入り始めてましたもんね」


「ああ、だから昨日手に入った素材を使って新しい剣を作ってもらおうと思っているんだ。ついでにアリスの短剣もな」


「あたしの武器もですか!?」


「ああ、Cランク昇格のプレゼントだ」


 俺は鍛冶屋の中へと入って行く。中は少し暗く、とても静かであった。


「すみませ~ん、親方いますか~!」


「なんだなんだ!」


 店の奥から髭を生やしたお爺さんが出てきた。


「お久しぶりです親方」


「マイルじゃないか。今日はどうしたんだ~? また剣の手入か?」


 親方とはこの町に来た時からの知り合いで、よく剣の手入をしてもらっていた。そのため最近ではかなり親しくさせてもらっている。


「今日は少し違うんだよ。親方に新しい剣を作ってもらいたくて来たんだ」


「ほ~お、お前さんが新しい剣をか、珍しいじゃないか」


「昨日のモンスターの大群との戦闘の時に剣がダメになってしまって、そろそろ新しい剣への替え時かと思いまして」


「そうかいそうかい。よしわしに任せておけ、お前に会うとっておきの逸品を作ってやるからな」


「ありがとうございます。それで、その際にこの素材を使ってください」


 俺は昨日倒したドラゴンの素材を親方に渡す。それを見た親方は、


「おいおい、これは龍のしかも古龍の素材じゃないか! こんなものどうしたんだよ!」


「昨日、俺が倒したモンスターの素材です。せっかくなんでこの素材を使って親方に武器を作ってもらおうと思ったんですよ」


「そうだったのか。わかったぜ。最高の逸品を作ってやるよ」


「それと、このアリス用の短剣を作ってもらえませんか?」


「その嬢ちゃんは誰だい?」


 親方は俺から視線を外し、アリスを見る。いつものように身軽で動きやすい服装でなく、女の子らしい服装をしている。そのため、少し疑いの目を向けているのだ。


「私はアリス=マーベリック、昨日Cランクへと上がった冒険者です。二週間前からマイルさんと冒険者パーティーを組んでいます」


「ほ~お、嬢ちゃんがマイルとパーティーをな。たしか、マイルはケイルとか言う冒険者とパーティーを組んでいたんじゃなかったのか?」


「いろいろとあって抜けたんだ。それからはアリスと二人で依頼をこなしているよ」


 俺は笑顔で言うと、


「マイル、お前さんそんな笑顔も出来たんだな」


「え?」


 俺は何を言われているのか分からなかった。ただ、いつもと同じように話していただけなのだが。


「少し前のお前さんは、少し疲れた顔しかしてなかったんだよ。だが、今日はいい顔してるぜ。きっと嬢ちゃんと出会ったからなんだろうな」


「そうかもしれませんね」


「分かった、嬢ちゃんの短剣も任せときな」


「ありがとうございます」


 それから俺と親方、アリスでそれ以外にアリスの魔法を使う時に使える杖と俺のもう一本の剣を頼み鍛冶屋を後にする。親方からは、一週間ほどで出来るから受け取りに来てくれとのことだった。

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