三十七、ギルドマスターからの話
「すまなかった」
ギルドマスターに頭を下げられた。なぜこのような状況になっているかと言うと、話はケイル達を捕まえた所へと戻る。
俺とアリスはケイル達三人の意識を奪い無力化、捕らえることに成功した。三人をロープを使い意識を取り戻した後も逃げられないようにした後、アリスに頼んでギルドへと報告しに行ってもらったのだ。その間俺は、ケイル達が逃げないか見張っていた。まあ、アリスの魔法を受けた二人もそうだが、そう簡単に意識を取り戻せるような攻撃を加えていない。腹へ一撃を加えるときのみ、少し本気を出させてもらった。そのため、あばら骨の一本や二本くらいは折れているだろう。
そんなことを考えている間に、ギルド職員の方達を連れて、アリスが戻って来た。そこで、俺達にも事情を聴きたいということで再びギルドへと戻って来ていたのだ。この話を聞きつけたギルドマスターがダッシュで俺達の元へとやって来て、ギルドマスターの部屋へと案内された。
そして、現在に戻るのだが、
「ギルドマスター、頭を上げてください。これはギルドマスターの責任ではありませんから」
「そうですよ。ギルドマスターがあんな人達の代わりに頭を下げる必要なんてありませんよ」
「だがな。あいつらがあのような行動に出たのは俺がランクダウンを告げるタイミングを見誤ったからだ」
ギルドマスターは頭を掻きながら言う。
「そんなことはありません。正直あのタイミングで言ったこと自体は間違いではなかったと思います。ただ、ギルドマスターの言葉をどう受け取るかだったのではないかと思います」
「マイルさんの言う通りですね。ギルドマスターの言葉を真摯に受け止められる人であれば、心を入れ替えて精進したでしょう。あの人達のように自分達のランクダウンを人のせいにしたりしないと私は思います」
よほどアリスはケイル達の事に腹を立てていたようだ。ギルドマスターが相手だと言うのに、この言葉遣い。普段のアリスでは考えられない。
「そうだな。俺もそうなってくれると信じていたんだが結果がこの通りだった。本当に情けね~よ」
ギルドマスターは少し落ち込んでいる様子。
「ギルドマスターは十分にやっていると思いますよ。他の冒険者の方たちを見ていたらそれは一目瞭然です。ケイル達が例外だっただけですよ」
「そうだな」
ギルドマスターも何か納得した様子だった。
「だが本当に悪かったな。ギルドまで戻って来てもらって」
「いえ、俺達は、それよりもケイル達はどうなるのですか?」
「まあ、冒険者登録は剝奪だな。それと、未遂で終わったとは言え、お前らを殺そうとしていたんだ。数年は牢獄の中にいる事になるだろう。それと、冒険者再登録永久禁止とかな」
なかなか重たい罰を受けるようだな。
「お前さんケイルの事をかわいそうとか思ってないか?」
ギルドマスターの言う通り少しかわいそうだと思っていた。冒険者登録の剥奪と牢獄へ数年間いるのは仕方がない。だが、冒険者再登録永久禁止は少しやりすぎではないか。ケイル達だって牢獄に数年いたら心を入れ替えるだろう。そうしたら、しっかりと冒険者として真面目に働くのではないだろうか。
「正直このくらいの罰なら軽いくらいだ。元とは言え、パーティーメンバーだったお前さんの顔に免じてこれくらいの処分にしておいた。今回の一件であれば、数年の牢獄への幽閉ではすまないだろう。少なくても数十年、もしくは死刑もあった」
「死刑はいくら何でもやりすぎでは?」
「いや、これが普通の冒険者に対しての事であれば確かにやりすぎだ。だがお前さんは既にSランク、国が保有する最高戦力の一人だ。Aランク百名に匹敵する力を持つとされているSランクは貴重、そんな者に危害を加えれば、これくらいの罰が与えられても仕方がない」
ギルドマスターの話を聞く限りでは確かにと俺も納得してしまった。まだ、死刑にならずに、冒険者以外の仕事には就いて生きていけるのだからましと言える。
「そうですね。これで心を入れ替えて真面目に仕事をしてくれればいいですね」
俺は心でそう願うしかできない。ギルドマスターも俺と同じ気持ちのようであった。
それから、ギルドマスターに改めて挨拶をしてギルドを後にして宿へと戻る。
既に夜も更けており、道には誰一人としていない。
「アリス、明日は休みにするか」
「急に如何したんですか?」
「今日は色々とあったからな。それにこの二週間まともに休みを取ってなかったし、たまにいいと思ったんだ」
「そうですね。一日ゆっくり過ごすのもいいと思います」
アリスも賛成のようで良かった。
「ではマイルさん、明日私とデートしましょ!」
「え! 何を言っているんだアリス。デートは好きな者同士でする者だろう」
「マイルさんは考えが少し変ですよ。別に好きな者同士でなくてもデートはします」
「そうなのか?」
「そうなのです。ですから明日は私と街を色々と見て回りしょ」
「分かったよ。俺も丁度行きたいところもあったしな」
俺達は宿へと戻る道中で明日の予定を決めるのであった。
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