三十二、ギルドマスターからの報告
宴が終わった後、ギルドーマスターに呼ばれた俺達は、朝連れてこられた来客用の部屋ではなく、ギルドマスターが仕事をしている部屋へと連れてこられた。
「すまないなこんな遅い時間に」
「いえ、それは構いませんが、調査の方は終わったのですか?」
「ああ、結果は予測通りだったよ」
ギルドマスターは今回の事件が人為的な物ではないかと考えており、その予想が的中。このことから考えられるのは何者かがこの町を狙っているのではないかということ。
「そうですか。俺もそうでないかとは思っていましたが、まさか、ですね。でも、その何者かがこの町を狙った理由は一体何だったのでしょうか?」
「それは分からん。だが、何の狙いもなくこんなことはしないだろうな」
「でも、私達がそれを防いだわけですよね」
アリスが話に入って来た。
「そうだな。我々がモンスターを倒したことで町は守れたな」
「ではなぜその後、追撃などがなかったのでしょうか? 古龍が最後に出てきましたが、それと同時にモンスターを出して来ていたら私達は全滅、その上で町も終わってました」
アリスの回答は的を射ていた。俺とたぶんギルドマスターも考えていたけど言えなかったこと。
「そうだ。だからこそ今回の狙いが詠めないんだ」
ギルドマスターが頭を抱えている。俺自身も正直何が狙いだったのか分からない。だが、俺達が疲れ切った所を狙っての古龍、あそこまでしておいて、その後何もなかったのは不自然過ぎて何とも言えない。
「もしかして、町の戦力を見る事が狙いだったとかはないですか? だから、追撃を仕掛けてこなかったとかですか?」
「そうだな。その可能性が一番高いだろうな」
「俺もそう思います。正直、そうでなかった場合の狙いが全く分かりません」
アリスの言ったことが正解ではないかと言うことで話は纏まった。
「それから今回の依頼での報酬だが、アリスくんは活躍も的に十分だろうということでワンランクアップでCへ、マイルくんも今回の古龍討伐で他の冒険者達から見ても実力は十分だろうということでSランクへのランクアップとなる」
ん?? あれ俺は何か聞き間違いをしなかった。アリスのランクアップはわかる。十分に活躍したし、だが何故俺がSランクになる。そもそもSランクってギルドマスターからの一言でなれるようなものじゃなかった気がするんだが。
「ギルドマスター何かの冗談ですよね。だって殆ど実績の無い俺がSランクなんて」
「何を言っているんだ! 今回のSランクモンスターである古龍の討伐、十分な実績ではないか。しかもそれを殆どの冒険者が見ている」
「ですが、ギルドマスターの一存で決まる物ではなかったのですか」
「そのことなら心配するな。ミラーが宴をしているときに、通信用の魔道具を使って本部と連絡を取ってくれて許可も下りている」
「分かりました」
俺はSランクへの昇格を受け入れることに、それから今回の緊急依頼の報酬を受け取った俺達はその中に入っている額に驚いた。
「こんなに貰っていいのですか?」
俺の貰った中には金貨がかなりの量と白金貨が数枚入っていた。一生見ることが出来ないと思っていた白金貨をまさか目にする日が来るとは思わなかったために驚いていたのだ。アリスの方もかなりの金貨が入っていたのではないだろうか。
「いいんだよ。マイルくんは今回の一番の功労者だ。それに、この町どころか、この国壊滅の危機を防いでくれたんだ。これでもかなり少ない方だ。後日、ギルド本部より報酬が届く手はずになっている」
まだ、貰えるのか。正直これでもかなり多い。冒険者をやめても十分に生活することが出来るだろう。
「それと、アリスくんも、我々ベテランメンバーが動けずにいた中、君はマイルくんの危機を救うために動いた。それにより我々も動かないといけないと思わされた。そういう意味でも他の者達よりも少し色を付けさせてもらっている」
「私はただ、マイルさんに危険が迫っている所を見た瞬間思わず体が動いただけです。そんな大したことはしてません」
恥ずかしいのか、下を向いて顔を赤くしている。
「だが、それが一番大事だ。我々ベテランが動けない中、理由はどうあれ君は動けたんだ。誇りに思っていいと思う」
「ありがとうございます」
「マイルくん、良い仲間を持ったな」
「はい、俺にはもったいないくらいのパートナーですよ」
俺はアリスが褒められたことが嬉しく誇らしくもあった。アリスもギルドマスターに褒められたことが嬉しかったのだろうか、顔を赤くしながら微笑んでいるように見えた。
俺達はこれで終わりなのかと思ったのだが、
「それと最後に伝えておかないといけないことがあるのだ」
凄く申し訳なさそうな声で言ってくるギルドマスター。
「どうされたのですか?」
「マイルくんが以前所属していた赤い流星だが、今日ランクダウンを告げた」
「そうですか」
元々以前からランクダウンの可能性があるだろうと言う話は色々な所で噂として聞いていたし、朝ミラーさんからも聞いていた。
「ですがランクダウンは今日の夜に行うはずだった調査依頼で失敗したらという話ではなかったのですか?」
モンスターの襲撃がなければ、本来今日の夜中に行われるはずだった南の森の調査依頼。そこで何らかのミスを犯したらランクダウンと言う話であった。
「そうだったが、今回のモンスターの大軍との戦いの時、彼らも前線で戦っていたのだが、そこでモンスターを一匹も倒すことが出来なかったんだ」
どうしようもないな。今回俺の低下の魔眼の効果としては、以前パーティーにいたときに使っていたよりも効果としてはかなり落としていた。そのため彼ら程度の力ではモンスターを倒すことが出来なかったのだろう。
「そうですね。それは仕方がないですね。まだ、ワンランクダウンで済んだだけましだと思います」
ギルドマスターも頷いていた。
アリスもしょうがないと言った顔をしている。
「これで話は終了だ。遅くまでご苦労だったな。今日はゆっくりと休んでくれ」
「はい、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
俺とアリスはギルドマスターに俺を言いながら部屋を出て宿へと戻る帰路に着いた。その道中アリスが、
「今日はなんだかすごい一日でした。今までにしたことがないような経験をいっぱいできました」
「そうだな。俺も今日はいい経験をさせてもらったよ」
使ってこなかった鑑定の魔眼の能力を使ったり、低下の魔眼でありえない量のモンスターの能力を低下させたり、古龍と戦ったり、本当に濃い一日だったと思う。その中で、色々と自分の限界も知れたし、可能性も感じた。それにアリスもかなり成長できた。後はこれに技術が乗ればすぐにでもAランクになれるのではないかと思う。
俺達がそんな感じに意気揚々帰っている時、
「人の気配があるな」
「はい、そうですね」
背後に三人の気配を感じる。正直、気配を隠すの下手すぎて鑑定の魔眼を使わずに分かってしまった。アリスも同じようだ。そして、この気配、
「何が狙いか分からないが、おびき寄せてみよう」
「はい」
俺達はあえて気づいていない振りをしつつ、歩く速度を落とした。そして、三人が動き出したのだった。
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