追放サイド5

「お前達のランクダウンが決まった。今回はワンランクダウンでBランクだ。猶予期間があったのに結果を残せなかった自分達を恨むんだな」


 俺は何を言われているのか理解出来なかった。ほんの二週間前までは、依頼に失敗しない最速でAランクまで上り詰めた冒険者として有名になり、そしてもうすぐSランク冒険者になれるところまで来ていた。この町初めてのSランク冒険者、それだけで俺達の名は国中にも広がると考えていたのに。


「納得できない。なぜ俺達のランクを下げられないといけないんだ! 俺達が何をした! 何もしてないだろうが!」


 そう、ただ俺達は運が最近悪かっただけだ。


「お前本気でそんなことを言っているのか? BランクとAランクの依頼に連続失敗。この二週間でお前達が成功した依頼の数はゼロだぞ。そんな奴をAランクにしておけるはずがないだろう。本来であればBランクにもしておけないが、数少ないAランク冒険者をいきなりCランクに下げることは出来ないと言う意見が出てきたので今回はワンランクダウンと言う対処にさせてもらったんだ」


「ただ俺達の運がなかっただけだ! モンスター達が普段より強かったんだ! そうでなければ俺達が失敗することなんてなかったんだ!」


「毎回そうだったと、滅多に出現することがない希少種と呼ばれる特異体質のモンスターが連続で現れたと言いたいのかお前らは!」


「そうだよ。ギルドマスターなら分かってくれるだろう?」


 俺は、流石ギルドマスター、話せばちゃんと分かってくれるんだと思った。それは、横にいるキリエにライラも同じであった。これでランクダウンを逃れられると、だが、


「そんなことがあるはずないだろう。二週間前にお前らが倒しに行ったタイガーウルフ、ルドラから話を聞いたがごく普通だったそうじゃないか。それに対して手も足も出なかった。Bランクのモンスター相手にな」


「それは……ルドラだから勝てたんだ!」


 何とか理由が出た。


 その言葉にギルドマスターは、


「お前らそれを本気で言っているのか? 俺も持って帰って来たタイガーウルフの証拠部位は見たが、特に違和感はなかった。鑑定のスキル持ちにも確認をさせたが変なスキルは持っていなかったらしい。つまり希少種でなくごく普通のモンスターだったよ」


「そんな、バカな」


「それ以外にもお前達が失敗した依頼に他の冒険者を行かせたが特に変わったことがなかったと報告を受けている」


「それは、俺達よりも実力が上の冒険者だったからだろう!」


「行ったのはBランクの冒険者達だ。ランクに適したな。そいつらが何事もなく普通に依頼をこなして帰って来たんだからな」


 俺の頭が追い付かない。何で俺がこんな目に遭うんだ!


「・・・ということだ」


 ギルドマスターが去っていく。


 その時俺の視界では楽しそうにしているマイルの姿が目に入る。可愛い女を連れて楽しそうに、あいつが何故古龍を倒せて、あれほど皆に称賛を受けているんだ! スキルも持たない、戦闘には一切向かない鑑定しかできない出来損ないの無能。そんなやつが俺より目立つなんて許せない。


「きっと裏があるはずだ」


「裏って?」


「マイルがあの古龍を倒せるはずがないだろう」


「そうかもしれないけど、何の証拠もないわよ」


「なければ作ればいいんだよ。丁度いい奴もいるしな」


 俺はマイルの傍にいる少女に目をやる。二週間前、俺達に偉そうに啖呵を切ってきた。初心者冒険者が先輩であり上位ランクの冒険者にだ。そんなことが許されるはずがない。


「丁度いい奴? 誰のこと」


「あの少女だよ! 俺達に生意気な口を利くような初心者冒険者だ。少し痛い目に合わせて先輩への口の利き方を教えてあげないとな」


「流石は私のパーティーのリーダーね」


「ならまずはあいつをどうやって連れ去るかを考えないとな」


 俺達は、少女をどうやって連れ去るか、そしてマイルの秘密をどうやって聞き出すか話し合うのだった。

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