三十、帰還

 古龍の討伐終了。俺は倒した古龍をスキル異空間倉庫へと収納した。このスキルは、別の空間へと指定した物を収納することが出来るスキルで、中の時間は止まっているため、生ものなどを収納しても腐らせず保管しておくことが出来る。かなり便利なスキルであるが、レアスキルで有り、持っている者もかなり少ないスキルのため冒険者の中でもかなり重宝される。俺は今まで人に見つからずにこっそりと使って来ていた。見つかれば、俺をパーティーへと勧誘しようとする者達が押し寄せてくる可能性があるためにこっそりと使っていたのだ。


「とりあえず皆の所へと戻るか」


 古龍の攻撃を受けることもなかったし、結果からしたら、これ以上ない出来だっと思う。


 俺が、アリス達の所へと戻ると、皆俺の事をポカーンと見ていた。俺がどうしたのかと聞いてみると、


「お前は本当に人間なのか?」


 ギルドマスターから聞かれた。


「人間ですよ。それ以外に何に見えますか?」


「そうだよな。ただ、お前の戦闘が、圧倒的過ぎて少し疑ってしまってな」


「そうだったんですね」


 まあ。古龍相手に一人で、しかも一撃も受けずにとなると流石にこの反応になるか。


「マイルさん大丈夫ですか? 何処もケガしてないですか? 無茶はしてないですか?」


 アリスが俺に飛びついてきて質問してくる。目には涙を浮かべており、かなり心配してくれていたようだ。


「心配かけて悪かったな。でもこれで本当に全て終了だ」


 俺の言葉を聞き安心した顔になるアリス。


 それから他の冒険者達から、


「お前本当に凄いな!」


「どうやってあの古龍を倒したの?」


「お前みたいな強い冒険者が今まで無名だったなんてありえないだろう」


「お前がいれば、この町は安心だな」


「お前は最強の冒険者だぜ!」


 などと、一緒に前線で戦っていた冒険者達が俺の周りに集めって来て称えてくれる。今まで、まともに人からの称賛を受けることがなかった俺は、何を言っていいのか分からない。


 そんな時、


「おいおい、マイルが困っているじゃないか。さっきの戦いでかなり疲れているだろうし、まずは町に戻って少し休ませてやろうじゃないか」


 ルドラさんが助けてくれた。他の冒険者もルドラさんの意見に賛成となり、俺達は町へ、冒険者ギルドへと戻ることなった。そして、他の冒険者がぼそり今日は宴だと言っていた。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 町へと戻る道中、ギルドマスターが俺へと話しかけてきた。


「今日の夜少し時間をくれないか?」


「今日の夜ですか、別にいいですがどうしてですか?」


「俺達がしのいだモンスター達の襲撃、俺は人為的な物でないかと考えている。それに、お前が南の森で見つけた空気中の魔力が増えた現象、これも人為的な物で、今回のと同じ人物の仕業ではないかと考えている。一応、ギルドの調査班を今派遣して調査しているから今日の夜には報告が来るだろう。それを元にお前さんと話したいと思ってな」


「わかりました。アリスも同伴でいいですか? 俺のパートナーなもんで」


「いいぜ。嬢ちゃんも今日はかなり活躍してたしな。ランクアップも期待してくれ。あとお前もな」


 それだけ言ってギルドマスターはミラーさんの元へと戻っていった。その話を隣で聞いていたアリスは、


「マイルさんは、今日の事が人為的に引き起こされたと思っていたのですか?」


 そのことに気づいたアリスは良く俺の事を見ているなと思った。ギルドマスターとの会話をしているときもそんなことを言っていないし、戦闘中もそうだ。それなのにアリスは先ほどの俺とギルドマスターとの会話の際、俺が表情を微妙に変化させたのに気づいてそんなことを言ってきたのだろう。


「よくわかったな」


「マイルさん、ギルドマスターの言葉に一切驚いてませんでした。ですのでもしかしたら、最初から分かっていたのかと」


「別に分かっていたわけじゃないよ。でも、モンスター全てが何らかの強化をされているとは言ったよな」


「はい」


「それで、俺は人が関与しているんではないかと思ったんだ。全てのモンスターがそんな状態なんておかしいからな」


「確かにそうですね」


 アリスも納得してくれた。だが、これを人為的な物だと言うと俺の中で納得のいかないことがある。誰が何の目的でとか、そもそもそんなことが出来る者がいるのかということだ。本などで他の種族についても調べたりしているが、こんなことが出来る種族など思いつかない。


 俺は、少し頭を悩ませながら冒険者ギルドへと戻っていくのだった。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「おいおい、嘘だろう。古龍が倒されたぞ」


 先ほどの古龍が倒されたことに驚いている謎の少年。


「私も驚きです。まさか、あれほどに魔眼の力を使いこなしているとは」


「だが、残念だな。人種でなければもっと強くなれるだろうに」


「そうですね。あなたのように強くなれましたのに」


 木の上から降りた謎の少年は、


「戻るとするか。遠くない未来に、奴とは一戦交えないと」


「そうですね」


 二人は何処かへと消えてしまった。

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