二十四、モンスター
町の北にある平原、そこへ俺達とギルドマスター、それにケイル達など他のAランク冒険者達がいる。数だけで言えばモンスターの方が圧倒的に多い。だが、前線にいるのは様々な修羅場を潜り抜けてきた猛者ばかり、一部を除いてはだが。その者達がこれからモンスター達と戦うのだ。これほど心強いことはない。そんな者達の中で自分がどれほど役に立てるかは分からないが、やれるだけの事をやろうと思う。
「モンスターが見えたぞ! 戦闘準備に入れ!」
ギルドマスターから声が上がる。その声を聞き、皆顔つきが変わる。俺とアリスも戦闘態勢に入るが、その前に鑑定の魔眼を使い迫ってくるモンスター達を見る。
「なんだこれは!」
思わず声が漏れてしまった。数は確かに千程いる。それは間違いないのだが内容がやばい。殆どモンスターがランクB以上に指定されているモンスターばかり、しかも何者かに操られているのか、状態異常が狂気となっている。この狂気を詳しく鑑定して見ると、かかっている者の身体能力を底上げするとなっている。つまり、Bランクのモンスターも下手をすればAランク以上の力を持っている可能性があることになる。
「マイルさんどうかされましたか?」
俺の声を聞き、心配してくれるアリス。そんなアリスに本当の事を話そうか少し迷う俺。
「アリス、今から俺が話すことを驚かずに聞けるか?」
その質問に対してアリスは少し考えたのち、コクリと頷いた。
「今から話す事は他言無用だ」
「はいです」
正直今上がっている士気を下げたくない。その思いからそう言った。
「ここへと向かって来ているモンスターの数が千、これは間違っていない。ただ、その強さが尋常じゃないんだ」
「どういうことですか?」
「ほぼ全てがBランク以上に位置づけされているモンスターばかりなんだよ。その上何らかの手段でそのモンスター達が強化されている」
「それって」
「全てのモンスターがAランク以上の強さを持つモンスターになっているということだ」
アリスは思わず大声を上げようとした所で口を押さえて堪えた。事の重大さを理解しているんだ。ここで大声を上げたら混乱を招くと、ただそれも時間の問題でしかないんだがな。モンスターの種類など目視で確認できるとこまで来たらどっちにしろパニックになるだろう。だが、今それが起きて逃げられてしまっては防げるものも防げなくなってしまう。
「そんなモンスター相手に私達は勝てるんですか?」
先ほどまで明るかったアリスの顔が暗くなる。それを見て話さなければよかったと少し後悔した。でも、それももう遅い。
「アリスは何も心配するな。俺が何とかする」
「何とかってどうされるのですか?」
正直このことは話せない。俺の左目に能力の事は。強力過ぎるが故に話せない能力。低下の魔眼。
「何も心配するな。少し本気を出すだけだ」
これだけのモンスター相手に使ったことはない。だから成功するかも分からないが、俺がやらなければここにいる全員どころか、町に住んでいる人たちも死んでしまう。それは嫌だ。この町には俺に優しくしてくれた人がいる。そんな人たちが住む町を絶対に壊させたりはしたくない。
俺は鑑定の魔眼でモンスター全ての正確な位置を把握する。そしてその全てに低下の魔眼の能力を発動する。
「かなりきついな」
今までに低下の魔眼を使ってきたのはせいぜい一体や二体にのみ。多くても四体くらいだった。今回はその二百五十倍のモンスターに低下の魔眼を使うのだから、それだけ疲弊もすると言う物だ。
「大丈夫ですか?」
「ああ、心配するな。普段しないことをして少し体力を使いすぎただけだ」
だがまさか、これだけのモンスターに低下の魔眼を使うとここまで体力を使う物だとは思わなかった。
そんな中、
「なんだあれは」
他の者でも目視で見える位置までモンスターが来たことで、皆驚いている。
「BランクにAランク、どれもかなり強力なモンスターじゃね~か!」
ルドラさんもこのことに驚いている。
「どうなってやがるんだ! いくらAランクの冒険者が集まろうと、この数のBランク、Aランクのモンスターの相手をするのは流石に無理だぞ!」
「いくら何でもありえない。こんなのどうしたらいいのよ」
他の冒険者達から不安の声が上がる。まあ、この光景を見たら誰でもそうなるよな。だけど、モンスターも目と鼻の先の所までやって来ている。もう逃げる事なんてできない。
「アリス、少し無茶をするけど心配しないでくれな」
「え!?」
アリスは何を言っているのか分からないと言った様子。
「少し行ってくる。だがその前に」
アリスにスキルを付与しておく。これで一時間は何とかなる。
そして、俺は身体強化のスキルを使い基礎能力を底上げして、モンスターの大群に向かって行く。
「おいマイル! 何をしているんだ!」
「一人で行くな危ないぞ!」
俺を心配する声が後ろから聞こえてくるが、
「心配してくれるのは嬉しいんだけど、今のままではどうにもならないんだよ。誰かがこのモンスター達を倒せると見せてやらないとな」
俺は、心配する声をよそにモンスター達に魔法を放ち戦闘を開始するのだった。
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