二十三、ギルドマスターからの話
ギルドを出て町の北へと向かっている道中、俺はギルドマスターに話しかけられた。
「お前さんがマイルか」
「そうですが、ギルドマスターがどうして俺の事を?」
正直ギルドマスターに名前を覚えられるほどの功績を残した記憶はない。逆に元ケイル達赤い流星に所属していた冒険者として悪い印象で覚えられているのではないかと俺は思った。
「ミラーの奴からお前さんの話はよく聞いていてな」
「俺の話をですか!?」
ミラーさんは一体どんな風に俺の事をギルドマスターに話しているんだ? 正直あの人の事だからとんでもないことを言ってそうな気がして少し怖い。
「スキルを持たない冒険者とか、他の者にはない独特の雰囲気を持っているとか、俺にも匹敵するような可能性を感じるとかな」
ミラーさんはどれだけ俺の事を買ってくれているんだろうか? あの人の前で秘密を明かしたことは一切ないんだけどな。それにギルドマスターに匹敵する可能性なんてどうやったら分かるんだよ! 俺の鑑定眼を使ってもそんなこと分からないんだけど!
「まあ、ミラーの目は確かだ! あいつが一目を置いている冒険者、それだけで期待する価値があると言うことさ」
正直ミラーさんってどれだけ信頼されているんだろうか? 今回の作戦もそうだ。一ギルド職員が後方とは言え、冒険者の指揮を執ることなど本当はあり得ない。それだけでギルドマスターからどれだけ信頼されているかが分かる。
「そうなんですね。ですが、俺は元赤い流星でケイル達の荷物持ちでしかありませんでした。その付き添い的な所もランクも上がっただけです。そんな俺にそこまで可能性があるとは思えないのですが」
「そうか? 俺もお前さんからは不思議な強さを感じる。他の者とは違う異質な強さをな。たとえるならSランク冒険者が持つような強さをだ。俺もいろんな冒険者を見てきたが、これほどの奴を見たのは久々だぜ」
「ギルドマスターのような方にそう言ってもらえるのは嬉しいのですが、俺には期待してもらえるような強さなんてありませんよ」
「それは、これから分かるさ」
「それはどう言うことですか?」
「今回の作戦、フォレストガーディアンは前線配置とミラーにも伝えてある。それとルドラにもな。そしたらあの二人は二つ返事で納得してくれたぜ」
「そうですか」
正直周りに力を一切見せていないのにどうしてここまで期待されてしまっているのか分からない。まあ、期待されて悪い気持ちにはならないけど。
「期待に応えられるように頑張ります」
「おお、そうしてくれ」
それだけ言ってギルドマスターは先頭へと戻っていった。俺の隣でギルドマスターの話を聞いていたアリスは、
「マイルさん頑張りましょうね」
凄く意気込んでいた。正直少し肩に力が入りすぎているように感じる。
「アリス、少し落ち着け」
俺はアリスの頭をポンポンと叩く。
「今から行くところは戦場だ。今までやって来た討伐依頼とは少し違う」
「はいです」
「でもやること自体は何も変わらない。いつもと同じようにモンスターを倒すだけだからな」
「ですが、数が凄く多いです。それに他の冒険者もいていつもと全然違います」
「そうだな、状況も違うしモンスターの数も多い。こういうのは俺も初めての経験だ」
俺だって冒険者になってから三年と少ししか経っていない。そのため、俺もそれほど多くの経験をしていない。ここまでアリスを育ててこれたのは、俺が独学で必死に勉強してきた成果ともいえる。本当はケイル達のためにと思ってやってきたことではあったが、違う形で役に立ってよかった。
「でも、ただ数が多いだけでやることが変わるわけじゃないんだ。確実に一体を倒して行く。今までやって来たことと同じだ。アリスはそれだけに集中してくれたらいい。後は俺が何とかするから」
「分かりました。でも、マイルさんも無理をしないでください。マイルさんの背中は私が守って見せますから」
「ああ。期待してるよ。二人でこの戦いを生き抜こうじゃないか」
「はい!」
俺とアリスはお互いに言葉を交わし、これからの戦いへと挑んでいくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます