二十二、突然の事態
「モンスターの大群とは、どう言うことですか!」
ミラーさん表情が変わる。こんなミラーさん見たことがない。
「分かりません。ただ」
「ただ何ですか!」
「夜間の依頼に行っていた冒険者がギリギリの状態で帰って来たのです。その者達が意識を失う前に、大量のモンスターが町へと向かっていると教えてくれました」
「分かりました。ギルドマスターには」
「まだです。これから行こうかと」
「そうですか。ではあなたはギルドマスターにこのことを報告をお願いします。私は、集められるだけの冒険者を集めますので」
ミラーさんとモンスターの事を報告に来たギルド職員は別々に行動を開始した。
ミラーさんが部屋を出る前に、
「マイルさん達も出来ればギルドに残って力を貸していただけると助かります」
それだけ言って行ってしまった。
俺とアリスはお互いの顔を見合せた後、
「マイルさんの考えは分かりますよ」
ニコリとした笑顔で言われた。
「悪いな。ダンジョン攻略はまた後日だな」
「はい」
俺達も来客用の部屋を出て、冒険者ギルドの酒場でミラーさん達が戻ってくるのを待つことにした。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
それから三十分程でミラーさんが戻って来た。そして、それと同時に多くの冒険者がギルドの中に入って来た。
「意外と集まったじゃね~か!」
ギルドの奥から葉巻を加えた強面と言う言葉が似合いそうな男性が現れた。その姿を見るやミラーさんが、
「ギルドマスター!」
そう叫んだ。この町のギルドは小さい。町自体が小さいのでしょうがないのだが、ギルドマスターだけは少し違う。元々はSランクのソロ冒険者で、国の危機を何回も救ってきたと言われている。そのためか、顔のいたるところに傷があり、今までの苦労を物語っている。そのような人がギルドマスターをやっているからか、この町には初心者の冒険者が多く集まってくる傾向があり、このような緊急事態に頼れる高ランクの冒険者が逆に少なかったりする。
「しっかりAランク冒険者も全員揃っているな。それと」
ギルドマスターが俺の方へと視線を向けてくる。
「これなら何とかなるか」
そういうギルドマスターは、
「お前らよく聞けよ。今この町に千近いモンスターが迫って来ている」
その言葉にこの場に集まった冒険者に不安が広がっていく。
「そしてそいつらを止められる可能性があるのは今ここに集まっている俺達しかいね~。だがそのことはここに集まって来ている奴なら全員が分かっている事だと思う」
その通りだ。元からいた者達ならともかく、ミラーさんに集められてきた者達ならある程度の説明を受けて上でここに来ているだろうからな。
「正直俺も不安だ! こんな数のモンスターから町を守るなんてことしたことないからな。だがそれでも俺達がやらね~といけね~んだ! それが俺達冒険者って言う奴だからな」
そのことに殆どの者が納得していた。
「とはいえだ。今回の戦闘への参加は自由だ。強制することは出来ね~、だから少しだけ時間をやる。
よ~く自分と相談して、もし無理だと思うなら住人達と一緒に避難をしてくれ」
その言葉に全員はお互いに顔を見合せてどうしようか考えている。俺とアリスは既にどうしたいかは決まっている。
「皆自分の気持ちに従ってくれ!」
その言葉に一部の冒険者はギルド出て行く。皆一つしかない命。実力のない者達は力になりたくてもなれないだろう。無駄に命を失うくらいなら避難した方がいい。
「職員の皆は村人達の避難誘導を頼む」
ミラーさん以外のギルド職員はギルドでて住人の避難誘導へと戻った。
そしてギルドに残った冒険者は最初の半分程、
「これだけの者がよく集まったものだ」
そう言いながらギルドマスターは俺達に頭を下げてくれた。
「ギルドマスター!」
「いいんだ! 俺はこれくらいしか残ってくれた者達にしてやれることがないからな」
そう言って頭を下げ続けるギルドマスター。そんなギルドマスターに、
「やめてくれよマスター! 俺達はあんたに付いて行くって自分達の意志で決めたんだ! だからよ、頭を上げてくれよ!」
ルドラさんの言葉に他の冒険者も、
「そうだぜマスター! 俺達はあんたのそんな姿を見たいんじゃない。勇敢なあんたを見たいんだ!」
「そうだぜ」
冒険者がギルドマスターへ叫ぶ。その言葉に答えるように頭を上げるギルドマスター。
「俺は最高の仲間を持ったな」
凄く嬉しそうなギルドマスター。
「それではギルドマスター、皆に指示を」
「ああ、そうだな。と言っても即席のチームになるため指示を出すも何もないんだがな。まずはそれぞれパーティーを組んでいる者達はそのパーティーで集まってくれ」
俺達は指示に従ってパーティーごとに集まる。
「ソロの冒険者の皆はミラーの指示に従って即席になってしまうが臨時のパーティーを組んで欲しい」
次にミラーさんがギルドマスターの指示に従いソロの冒険者を集めて、四人一組にパーティーへと分かていく。俺は鑑定を使いどのような者達が一パーティーに集まっているのか見ていると、かなりバランスよく分けられていた。後衛に前衛、それに実力などもバランスがいい。それをやっているミラーさんが凄すぎるのだが。
そして、全ての者達がパーティーへと別れると、
「今回の依頼はこのパーティーごとに動いてもらう。基本的にAランク冒険者達が最前衛でモンスターを倒してもらう。それ以外の者達は後方で待機、前線で戦っている者達が討ち漏らしたモンスターをパーティーごとに対処してもらう。その指揮はミラーに執ってもらう」
『はい!』
冒険者全員が声を揃えて返事をする。
「出発だーーー!」
『おーーーーーー!』
掛け声とともに全員でギルドを出て、町の北側へと移動するのであった。
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