二十五、戦闘開始

「ファイアーボール」


 俺は五発のファイアーボールを正面にいるタイガーウルフへと放つ。まずは一体、一体を倒す。そうすることで他の皆にもやれると思わせることが出来る。


 俺の放ったファイアーボールに対して回避しようと動くがその動きに合わせてファイアーボールをコントロールする。五発のファイアーボールをが全てタイガーウルフに命中。


「魔法の軌道を変えるのは、少し自信がなかったが、うまくいってよかった。それに、今のを見て他のモンスター達が警戒してきている。狙い通り」


 他のモンスター達が俺を標的に定めてくる。この数を相手にするのは少し骨が折れそうだなと、剣を抜きモンスター達に向かって行く。


 Bクラスのモンスターが複数、俺に一斉にかかってくる。


 それに対して俺は、身体強化のスキルと武器強化のスキルを使い基礎能力を底上げ、その上で属性付与エンチャントで雷属性を付与した範囲攻撃を行えるようにする。雷属性の効果は連鎖、モンスターに一撃を与えると、近くにいる他のモンスターへとダメージを与える事が出来る。その上で、運がよければ麻痺させることも出来るので一体複数の戦いの時にはかなり有利な立ち回りが出来る。


 俺は、正面から来るモンスターに剣を横なぎに一振りする。それにより飛ぶ電撃がモンスターへと直撃して、倒す。そして、俺の放った電撃は、後方にいるモンスター達にも微量のダメージを与えて少し動きを止めた。その隙をつき、


「ファイアーショット!」


 小さな火の弾を複数、目にも止まらぬ速さで打ち出し、動きを止めているモンスターを倒す。ここまで十体。


 集中力をかなり高めて戦闘しているため、かなり体力を消費する。それに、最初に使った低下の魔眼で消費もあり、かなりギリギリの状態でいた。それでもここで倒れられないと思い立っている。


 モンスター達にはそんなこと関係ない。隙あらば、容赦なく襲い掛かってくる。


 それに対抗するために俺は剣を振るい魔法を放つ。それこそ限界を超えて。


「は~、は~、は~、かなりきつくなってきた」


 俺が一人モンスターの元へと突っ込んで既に十分が経過、倒したモンスターは、五十体程である。


「魔法も後使えて三回ってところか。それに腕がかなり重たくなってきた。身体強化のスキルを使っていなければもう剣も振れていないだろうな」


 正直五十体ものモンスターを倒したのに全体の二十分の一程、正直終わりが見えなくて嫌になってくるよな。などと思いながら俺は目の前から襲ってくるモンスターへと向かって行く。


 その瞬間、俺の背後に一匹のモンスターが現れて俺に襲い掛かってきたのだった。

 

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「俺は一体何を見ているんだ」


 ミラーから聞いていた情報ではAランク冒険者パーティー赤い流星の荷物持ちをしていた少年。スキルを持たず自分では先頭出来ないが、観察力や知識力、その全てが他の冒険者を凌駕しているという話だった。戦闘能力は未定だが、最近では初心者冒険者を育成していて、Dランクへとたった一か月でランクアップさせたとか、しかも既にダンジョン調査依頼を受けれるレベルにまでなっていると聞いた。


 俺はその情報からマイルはスキルを使わない後衛に支援職で、一緒にパーティーを組んでいるアリスと言う少女がメインアタッカーなのかと思っていたが、そうではなかった。


「こいつは既に俺よりも強いんじゃないのか」


 マイルの戦闘を見るに、かなりの手練れだと分かる。それこそAランクの冒険者で俺が一番信頼を寄せているルドラと同じかそれ以上、しかも一個一個の判断が的確で、あの年齢そんなことが出来るのには少し驚かされた。どれほどの修羅場を潜り抜けてきたらあのような戦いが出来るのだろうか。


「ギルドマスター、彼は一体何者なのですか?」


 俺の隣までやって来たルドラが聞いてくる。


「私は彼と一度だけ話したことがあります。その時は町中で偶然出会っただけでしたが、その時も何とも言えない雰囲気を纏っておりました」


「そうだな。俺もここに来るまでの間に彼と少し話したが、独特のオーラを見たいな物を感じた。それこそSランクの冒険者が持っているようなな」


 俺はマイルに話しかける時、そのオーラに気おされて一瞬話しかけるのを躊躇したくらいだ。


「ギルドマスターもでしたか。私は彼がスキルを持っていないということがどうしても信じられないのです」


「わしもだ。だが、確かにスキルは持っていなかった。ギルド登録時に使う水晶の結果だから間違いはないだろう」


 ギルドへと登録時、その者が持つスキルを見るため水晶を使い確認する決まりとなっている。


「そうですか」


「だが、今はそんなこと関係ない。彼はまだ若い。そんな彼一人に戦わせていては我々ベテランのメンツがないぞ」


「そうですね。では」


 俺がルドラと一緒にモンスターへと向かって行こうとした時、マイルの背後へと一匹のモンスターが回り込んでいた。俺達は、マイルに危険を伝えるため叫ぼうとした瞬間。一人の少女がものすごいスピードでマイルの元へと走っていった。

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