二十、ダンジョンについて

「アリスはダンジョンについて何か知っていることはあるか?」


「え~と、強いモンスターがいっぱい出てくる場所でしょうか?」


「そうだな。普段俺達が戦っているようなモンスターよりは確実に強いな。他に何かあるか」


「う~んと、中がとても広いことくらいです」


 まだ冒険者になって二か月程だと知っていてもそれくらいだよな。


「そうだな、中はとても広い。間違ってはいないが正解でもないな」


 俺はダンジョンについてアリスに説明する。


 ダンジョンはこの世界に無数に存在している物でどのようにして出来上がるのかはよく分かっていないと言う。その中は、異様に広く、外観で見る広さとは比例しておらず、初めて入る者はこのことに混乱させられてしまう。これについて冒険者ギルドの調査で何らかの魔法が働いていることは分かっているが、それがなんのかはよく分かっていない。そしてダンジョンにはもう一つ不思議なことがある。それは階層ごとに様々な空間が存在しているのだ。それこそ草原の階層や氷雪地帯になっている階層などダンジョンによっても様々である。


 ギルドではダンジョン調査の依頼をDランク以上からのみ受注可能とされているが、それ以外に隠し条件がある。それは、その冒険者がギルドから認められているかいないかと言う物である。こればかりは最終的に受付の担当の人の主観的な所もあるため百パーセントこうだと言うことが出来ないが、最低限言えるのはいつもの仕事態度が大事だということくらいである。


 その点においては俺達のパーティーは問題ないであろう。


「こんな感じだ。後は、ダンジョン調査依頼にしかない要素が一つだけある。正直これがダンジョン一番の醍醐味でもあるんだがな」


「何ですか?」


 アリスが机から身を乗り出して聞いてくる。これは、冒険者皆が欲している物。


「お宝だ」


「お宝、良い響きですね~」


 アリスにもこの良さが分かるみたいだ。


「ダンジョンには様々な場所に宝箱がおいてある。その中身はランダムになるが様々な物が入っている。そして、下の階層に行けば行くほどよりレアな物が手に入るわけだ」


「ですが、そのような物であれば今までに調査に入った人達に取られているのではありませんか?」


 ごもっともな意見だが、


「ダンジョンにはある魔法が働いていると言ったろ」


「はい」


「その魔法はダンジョンと外の空間を捻じ曲げるだけでなく、ダンジョン内部の管理もやっていると言われているんだ。モンスターを生み出したりとかな」


 これだけ言えば大体の者なら察しがつくはずだ。


「つまり、宝箱も新たに作り出されるわけですね」


「その通りだ」


 アリスは本当によく頭の効くいい子だ。


「そしてその宝箱の中に稀にスキルスクロールが入っていることがあるんだ。レアスキルの書いてある物もあるらしい」


 俺のスキル付与でも習得できないレアスキルをスクロールがあれば覚える事が出来る。だがこればかりは運的な要素も強いために何とも言えないが、もしも鑑定でスクロールを鑑定して作り方が分かれば、何かの役には立つかもしれないしな。


 俺の説明にアリスが目を輝かせている。


「では、マイルさん早速ダンジョンの調査依頼を受けにギルドまで行きましょう!」


「おお」


 アリスは朝食を急いで食べる。


「そう慌てるな。ダンジョン調査依頼は常設依頼だから誰かに取られることもないよ」


「早く行きたいんです!」


 超スピードで朝食を食べ終えてしまったアリス。


 そして、同時に食べ終わった俺の手を握り引っぱって行くのであった。


 宿を出るとき、


「今日も朝食美味しかったです」


 それだけ女将さんに言っておいた。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 冒険者ギルドへと到着したが、丁度ピークの時間でもあり多くの冒険者であふれかえっていた。


 普段ならこの数の冒険者を見ると入ることを少しためらうアリスも今日は自分から前に出て冒険者ギルドの中へと入って行く。その光景に好奇心とは凄いものだと思ってしまった。ただ、先に行くのは良いんだが、アリスは常設依頼であるダンジョン調査の受け方を知らない。そのため俺も急ぎアリスを追いかけるのである。


 アリスに追い付くと、


「マイルさん、ダンジョン調査依頼がどこにもありません。どうしてですか?」


「それはな。ダンジョン調査は説明した通り、Dランク以上からしか受けることが出来ない依頼だ。そしてアリスはDランクだがそのことを知らなかっただろう」


「はい?」


「それは、Dランクになった者全員に教えられる情報じゃないからなんだ。まあ今回に関しては俺が知っていると言うのも話されなかった理由の一つだろうがな。まあ。ギルドからの信頼を得られないと教えてもらえないと言うことだ」


「そうだったのですね」


「だから一般的な依頼を掲載している依頼ボードには張られていないんだ」


「そうなんですね~、ではどうしたらいいんですか?」


「それはな」


 俺はミラーさんの受付の列に並んで順番を待つことにする。


 俺の後ろに続きついてくるアリスは、ハッとした顔をする。


 そう、ダンジョン調査依頼は受付で直接依頼をすることで受けることが出来るのである。

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