十八、報告
冒険者ギルドへとやって来た俺達は早速受付へと向かった。既に日も暮れておりギルド内に他の冒険者はかなり少なくなっている。そのため、ミラーさんの所へも並ばずに来れた。
「マイルさん、今お戻りですか?」
「まあ、そんなところです。ミラーさん、依頼の報告をお願いいたします」
「分かりました」
俺はゴブリンの討伐の証拠部位と依頼書を出す。それを受け取ったミラーさんは査定をしてくれている。
「後ミラーさん、依頼の物じゃないんですが、モンスターの素材の買取もお願いできますか?」
「大丈夫ですよ」
俺はその言葉を聞き、アリスが寝ている間に剥ぎ取っていたレッドウルフ十匹分の素材をミラーさんに渡す。
「レッドウルフの素材ですね。こちらの買取額も合わせて報酬のお渡しをさせていただきますが、確かに今日マイルさん達が向かわれたの確か南の森ですよね。あそこにはレッドウルフはいないはずでなかったですか?」
確かに南の森にこれまでレッドウルフが出たという報告は俺も聞いたことがない。原因として考えられるのは、空気中の魔力量が増えていたことくらいだ。それも、俺達がレッドウルフを倒した後には元に戻っていた。
そのことをミラーさんに伝えておいた。
「そうだったのですね。後日、ギルドの方で少し調査をさせていただきます」
「お願いいたします」
流石はミラーさん、迅速な対応だ。
「それではこちらが今回の報酬になります」
俺は袋に入った報酬を受け取る。
「それと、今回の依頼達成とレッドウルフの討伐でアリスさんの冒険者ランクがDランクへアップしました。これによりパーティーフォレストガーディアンもDランクへランクアップになります」
「一気にツーランクアップですか!?」
「はい、今回のレッドウルフの討伐でアリスさんにDランクと戦える実力があると分かりました。それにマイルさんがいれば最悪の場合もなんとかなるでしょう。それに、出来る方々を低ランクで遊ばせておけるほどギルドに冒険者がいないので」
たぶん本当の事を言っているんだろうけど、それ以外にもミラーさんの思惑が隠れていそうな気がする。
初めてこの町にやって来て冒険者になった時からこの人は俺の力を認めてくれていた。だからこそ信用もおけるのだが。
「分かりました」
アリスもランクアップできるとことを喜んでいるし、まあ悪いことばかりでもないしまあいいかと思う。
それと、
「ミラーさん、パーティー用の金庫って使えますか?」
「大丈夫ですよ」
「では今回の報酬の内これだけを金庫の方に入れていただけますか」
「分かりました」
ミラーさんは俺達が金庫を使うために手続きをしてくれた。
「どうして金庫を?」
少し不思議そうな顔をしているアリス。
「ホームを買うためのお金を少しずつ金庫にためて行こうと思ってな」
「分かりました」
アリスも納得してくれた。
「マイルさんとアリスさんギルドカードをお貸しいただいてもよろしいでしょうか?」
「分かりました」
「はい」
俺とアリスはギルドカードをミラーさんに預ける。パーティー用の金庫を使えるのはそのパーティーに所属している者しか使えない。当たり前のことであるがそれをどうやって判断するのか、それが冒険者なら誰もが持っているギルドカードなのである。このカードを預けて本人かどうかの確認を取ることで金庫を使用することが出来る。つまり、カードだけでも、本人だけでもダメなのである。
そしてもう一つ、この金庫には便利な機能がある。それが、他の冒険者ギルドでも引き出すことが出来ると言うことである。ここで登録してある情報が他のギルドにも回されて、ギルドカードを見せて本人であることを確認出来ればそこで引き出すこと、預ける事が可能になるのだ。
そういった便利機能もあり、セキュリティー面でもかなり優秀なこともありかなり多くの冒険者がこの金庫を利用している。
「手続き完了です。お二人のギルドカードをお返しいたしますね」
ミラーさんからカードが返ってくる。
「今後パーティーの金庫を利用される際にギルドカードの提示と本人様確認が必要になりますのでよろしくお願いいたします」
「分かりました」
それだけ言って俺達は冒険者ギルドを後にするのだった。既に街の中を行き交う人も殆どいない。それもそのはず、既に夜も遅い時間となっているのだ。
「それじゃ帰るか」
「マイルさん、もう一つだけお願いを聞いていただけませんか?」
「なんだ」
「私もマイルさんと同じ宿に泊まりたいです。出来れば同じ部屋にも」
「同じ宿は別にいいが、何故同じ部屋なんだ?」
流石に男女で同じ部屋はまずくないか? 赤い流星にいた頃も俺とケイル、キリエとライラで部屋を分けていたぞ。
「節約です!」
「節約か~」
「はい、ホームを買うためには多くのお金がいります。そのために少しでも削れる出費は削っていかないとです」
「確かにそうだな。アリスの言う通りだな」
「それじゃ」
「ああ、いいよ。少し狭いかもしれないがその分頑張ろう」
「はい」
今日一番の笑顔を見た気がする。
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