十七、新たな目標

 今俺とアリスは、食事をしている。理由としては簡単、あのまま冒険者ギルドに行ってはまたケイル達と鉢合わせになるからだ。そしてもう一つ、アリスの機嫌がかなり悪い。


 今も、何かに当たるように食べている。


「アリス、そろそろ機嫌直さないか?」


「……だって、あの人達マイルさんの事を散々言ったんですよ。出来損ないとか」


「そうだったな」


「それに私の事をガキだとか言ってきて」


「そうだな」


 正直俺は昔から村の人からいろいろと言われてきた。それこそ出来損ないとか、クズだとか、この世界の異物だとか言われてきた。だからかしらないが、あの程度の事を言われても何とも思わない。


「だが俺は何にも気にしてないぞ」


「でも、私の……の人があんなに言われて怒らずにはいられません」


 大事な所だけ小声で何を言ったのか聞き取れなかった。


「正直アリスが俺の事を悪く言われて怒ってくれるの嬉しいよ。でも、ずっとそんな顔で追って欲しくないんだよ」


 俺の言葉を聞いたアリスは顔を赤くして下を向いてしまった。


「それに、俺は言われなれているんだよ」


「そんな、あたしならあんなことを元とは言え友達に言われるなんて耐えられません」


「そうだな。昔の俺なら耐えられなかったかもしれない」


 少し嘘を混ぜて話す。


「でも今はアリスがいるだろう」


「え!」


「信じられる仲間がいる。それだけ安心できるのものさ」


 その言葉にハッとした顔をするアリス。そしてまたいつも通りのアリスに戻った。


「一生マイルさんのそばにいますからね」


「ああ、一緒に頑張っていこうな」


 いつもの穏やかな雰囲気に包まれていく。


 食事も終わり時間的にギルドが混む時間帯も過ぎていい頃合いとなる。


 そのタイミングで俺は森でアリスが俺にお願いを聞いて欲しいと言っていたことを思い出して聞いてみる。すると、


「マイルさん、私と一緒に暮らせるホームを買いませんか!」


 突然の申し出に俺は少しビックリした。確かにパーティーを組む冒険者はそれぞれのホームと呼ばれる拠点を持っていることが多い。赤い流星の頃はケイルがいらないと言ったことでホームは造らなかったが。


「俺は別に構わないが、ホームは高いぞ!」


 そう、ホームは大体金貨数十枚から数百枚位する。今の俺達の仕事ランクからすれば夢のまた夢の話だ。


「そうかもしれませんが、それでもです。これから先新たな仲間も増えていきますよね」


「まあそうだな。いつかはあと二人新たなメンバーを加えて四人パーティーにしたいな」


「そうした時、日々の宿代だけでもバカにならないはずです。そのことを考えると、早めにホームを持つことは後々得になってくると考えます。それに、冒険者なら自分のホームを持つことは夢でもありますし」


 確かに、大体のパーティーを組んでいる者達の目標はホームを持つことだと聞いたことがある。俺の知り合いの冒険者も早く自分達のホームが欲しいとよく言っていた。


「わかった。なら俺達のこれからの目標はホームを手に入れる事だな」


「はい!」


「そろそろ冒険者ギルドに行くとするか」


「そうですね」


 俺達は食事を終え、冒険者ギルドへと向かうのだった。

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