十六、再会

 森を出て一時間程で町へと戻って来た。


「さて報告に行くか!」


「はい!」


 俺の言葉に笑顔で答えてくれるアリス。そして、町に入ってからという物、腕に抱き着いて話してくれない。


「アリス、どうして腕に抱き着いているんだい?」


「私がこうしたいからです。もうここは森じゃありませんしね」


「そうかもしれないが……」


「マイルさんは私にこうされるのは嫌ですか?」


「嫌とかではないんだが」


 周りの人の目線が痛い。まあ、アリスが良いならそれでいいか。凄く笑顔でいるしな。


 終始アリスに腕に抱き着かれながら俺達は冒険者ギルドへと向かった。そして、冒険者ギルドへと到着まだあと少しの所で、


「あ!」


「お前は」


 ケイル達と再会をした。いつもと変わらない三人、それと後ろに一人初めて見るちょっと怖めの体格のいい男性がいる。


「二日ぶりか」


「そうだな。出来損ないのクズがこんな所で何をしているんだ? まさか冒険者を続けているんじゃないだろうな」


「そうだが、なんか文句でもあるのか?」


「いや、だが何と言うか」


 ケイルは俺ではなく隣で俺の腕に抱き着いて満面の笑みを浮かべているアリスを見て、


「いつから子供の子守なんかを始めたのかと思ってな。それがお前の今の 冒険者としての仕事ならお似合いだぜ」


 キリエとライラがケイルの言葉を聞いて笑っている。ただ、男の方は俺へ真剣なまなざしを送って来ていた。


 確かにアリスは小さいが、それでも十三歳で立派な冒険者だ。


「子守なんかしてないさ。今このアリスと一緒にEランクの依頼に行って来たところだからな」


「Eランクの依頼ね~、お前が受ける依頼なんだから簡単な採取依頼なんだろうな~。だがEランクの依頼に採取依頼なんてあったかね~?」


 ニヤリとした顔で言ってくる。


「採取依頼じゃないよ。俺達は今ゴブリンの討伐に行って帰ってきたところさ」


「お前が討伐? 嘘はやめとけよ。スキルも持たない、ロクに戦うことも出来ないお前が討伐依頼なんてこなせるわけないだろうが! しかもそんなガキを連れてよ!」


 その言葉に対して先ほどまで俺の腕に抱き着いて満面の笑みでいたアリスが、腕から離れて一歩前に出る。先ほどまでの笑顔はなく、目がケイル達を睨んでいた。


「あなた方、いったい何様ですか! マイルさんはとてもお強く心優しいお人です。先ほどだってレッドウルフ十体に襲われたときも一人で七体も倒されました!」


「こいつがDランクのレッドウルフを倒しただ? しかも七体もなんてありえね~よ。嬢ちゃんは幻覚でも見せられたんだろう」


 まあ、俺のことを昔からよく知るこいつならそういうだろうな。


「そうよね。いつも私達の後ろに隠れて何もしない。ただ口出しをするだけの出来損ないにそんなこと出来るはずがないわ。この世界に意味を持たない異物なんだからねそいつは」


「無意味な人間」


 キリエにライラも行ってくる。確かに俺が赤い流星に所属していた頃は前に出て戦うことはなかった。だが、対象のモンスターを見つけて、誘導したり、いざという時にはアイテムを使いピンチを切り抜けてきた。ダンジョンに潜った時も罠を見つけて教えたりと、様々なことをしてきた。


「まあ、お前らになんて思われていようがどうでもいいがな。もう俺は、赤い流星とは何の関係もない人間だ。それに、もう新しいメンバーを入れているようだしな」


 俺は男へと視線を送る。


 すると、


「俺はルドラ=レーリック、Aランク冒険者としている」


「あなたがあの有名なルドラさんなのですね」


 噂はよく聞いていた。ドラゴンをソロで討伐したとか、様々な伝説を残している冒険者で、この街では一、二を争う実力を持つ冒険者だろう。そんな者がどうしてケイル達と一緒にいるのかと考えていると、


「このパーティーの新たな仲間だよ。頼りになるな。お前とは雲泥の差だよ。これで俺達はSランクになれる」


 その言葉に俺は何とも思わなかったが、ルドラさんはかなり驚いている。


「どうされましたかルドラさん?」


「いや、確かに俺は今日このパーティーに入ったが、今から依頼の報告をしたら抜けるつもりでいる」


「そうなんですか?」


「ああ、正直期待外れだったよ」


 何かがっかりした顔をしている。


「お前さんなら分かるのではないか」


 その言葉に俺は思い当たる節がいくらかある。赤い流星の急成長、これは俺の左目の力がかなりでかいだろう。それが故に、ケイル達は思いあがってしまった節がある。そういう意味では俺も少し悪いのかもしれないが、


「そうだな」


 その言葉を聞いてルドラさんは、


「やはりな」


「え!?」


 俺はその言葉に少し驚いた。この人は冒険者としての実力は文句なし。それどころか、今の言葉で確信した。この人は、人を見る目も一流であると。


「お前ら何をコソコソ話してやがる! こんな出来損ないと話していてもただの時間の無駄だ!」


 ケイルの顔は怒りに染まっていた。まあ、俺とルドラが普通に話しているのが気に食わなかったんだろうな。


「すまないなルドラさん、無駄な時間を取らせてしまって」


「別に俺は構わんよ。良い奴に出会えたしな」


 ルドラさんはそれだけ言ってケイル達の元へ戻っていった。


「マイルさん。何ですかあの人たちは!」


 そして、隣にいるアリスがかなりご立腹のようであった。

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