十二、思わぬ告白

 俺の前を歩くアリス。先ほどから何度か声を掛けているんだが反応がない。


 そんな時、新たなゴブリンを発見した。さて、どうやって声を掛けたものか?


 考えても仕方がないと思い、


「アリス! 新たなゴブリンを見つけた」


「どちらですか?」


 やっと反応してくれた。


「ここから西に二十メートル程だ」


「分かりました!」


 返事は返ってくるのだが、こちらを見てくれない。どうしてなんだろうか、俺少し寂しいよ。


 俺はそんなことを考えながら前を行くアリスに付いて行く。先ほどよりも身体強化のスキルに慣れてきたのか、移動がスムーズになっている。それだけが理由ではないだろう。先ほどの戦闘でアリスのレベルは一つ上がっている。これも成長加速のおかげか。


 そんなことを考えている内に到着した。アリスは俺が指示を出すよりも早く近くの茂みに隠れた。


「一匹ですね」


「そうみたいだな。周りにも他のモンスターの反応もない」


「分かりました」


 アリスはそれだけ言って茂みから出て行く。さっきの戦闘で自信が付いたのだろう。俺は、先程と同じようにアリスの戦闘を見守る。


 ゴブリンもアリスに気づき向かってくる。さっき戦ったゴブリンより好戦的にようだ。


 だが、アリスはそんなゴブリンに目もくれずに何かブツブツと呟いている。声が小さすぎてよく聞き取れない。一体何を言っているんだろうか?


 だが、そんなことゴブリンには関係ない。


「キィー!」


 叫びながら棍棒をアリス目がけて振り下ろす。その棍棒がアリスに当たる瞬間、


「うるさーい! ウォータショット!」


 水の小さな弾が複数ゴブリン目がけて放たれる。水の弾はゴブリンへと命中、ゴブリンの体に複数の穴が空いてその場で意識を失った。


 前回の戦闘で使ったウインドカッターと今回使ったウォータショットはかなりいい感じに魔力が込められている。それに、発動時間も早い、確実に成長してきている。


「アリスお疲れ様、良い戦闘だったよ」


「ありがとうございます」


「う、うん。それにさっきの戦闘でレベルがまた上がったよ」


「……っえ! 本当ですか! 私のレベル上がったんですか!?」


「ああ、前回の戦闘も合わせて二も上がっているよ。それに、風魔法と水魔法のスキルの熟練度も一ずつ上がって三になってるよ」


「凄いです。私一人の時はレベルを二つ上げるのに一年もかかりました。マイルさんと出会って一緒に依頼をこなしているだけでこんなに簡単にレベルもスキルの熟練度も上がるなんてビックリです!」


 ふ~、やっと機嫌を直してくれたみたいで良かった。


「これも成長加速のスキルのおかげなんだけどね」


「成長加速ですか? そのスキルって確かレアスキルではありませんか?」


「ああそうだよ。先月偶然このスキルを持っている人を見つけたんだよ。本当にラッキーだったよ」


「……凄すぎます。マイルさんはレアスキルまで取得することが出来るなんて、私はてっきり通常スキルのみかと思っていました」


「まあね、それにさっき説明した魔力操作のスキルもレアスキルだよ。それに、アリスに付与したスキルの中にもう一つ、自動回復ってレアスキルもあるよ」


「そんなに凄いことが沢山出来るのに、マイルさんは優しくて、奢らない。凄く素敵な人、そんな人に出会えて本当に良かった。」


 アリスがかなり驚いている。少し言い過ぎたかな?


「大丈夫か?」


「マイルさん!」


「なんでしょうか!?」


 いきなり大声で名前を呼ばれた。


「好きです」


「え?」


 何を言われたのか理解できなかった。


「好きですマイルさん。あなたの事が大好きです」


「急にどうしたんだアリス」


 確かに俺もアリスの事が好きだよ。可愛いし、助けたくなるし、妹みたいだし、大切な仲間だしね。アリスもそうだと思っていたし、こんな所で改めて言わなくても分かっているぞ。


「急じゃないです」


「まあ、俺もアリスの事好きだぞ。大切な仲間としてな。じゃないと一緒にパーティーなんて組まないからな」


「はぁ~、そうですよね。マイルさんはそういう人ですよね~、何となくですが分かってました」


 あれ? さっき機嫌が治ったと思ったのに急に落ち込んだぞ。どうしたんだろうか、体調でも悪いのだろうか?


「体調でも悪いのか?」


「いえ、何でもないです。そんなことより、先へ行きましょうか」


「そうだな、丁度この先に開けた場所があるし、そこで昼食にしよう」


「そうですね。お腹がすきましたし」


「俺もだ。朝からいろいろあったからな」


「そうですね」


 俺達は北へと少し言った場所にある休憩を取るには丁度いい、開けた場所へと向かうのだった。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「は~」


 どうしてマイルさんは私の気持ちに気づいてくれないんだろうか?


 私は今は、マイルさんと昼食を取るために森の少し開けた場所へと向かっていた。その道中私はマイルさんの鈍感さにため息をついていた。


 でも、昨日からのマイルさんの言動、あんなことを平然と言えちゃう時点でそうじゃないかとは思っていたけどまさかここまでなんて思わなかったよ。でも、それならそれで別にいいんだ。まだ私とマイルさんは出会って一日しか経ってないんだから。これから一杯私の事を知ってもらってマイルさんに好きになってもらうんだもん。


 私は、これからマイルさんに惚れてもらえるように頑張ろうと誓うのであった。ただ、いつかはあの事を話す時が来るのではないかと考えると心が重たくもなる。

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