追放サイド2

 翌日、既に日は空高くの昇っている。俺は、ギルドのトビラを開けて中に入る。すると、


「ケイルさん時間どおりですね。お待ちしておりました」


 受付に立っているミラーが、俺を見て挨拶してくる。正直そんなことはどうでも良かった。俺はミラーの元へと行く。その間、キリエとライラはいつも通り酒場の方で待機させている。


「それでミラー、ルドラはもう来ているのか!?」


「はい、丁度あちらに」


 ミラーは酒場の方を指さす。


 その指の刺す方向には色黒で体格のいい髪のない男が一人いる。見た目からして確かに強そうだ。マイルとは比較にならない。


「あいつか」


「はい、あの方があなた方と同じAランク冒険者である、ルドラ=レーリックさんです」


「そうか、ありがとよ」


 俺はミラーから離れてルドラの元へ行く。これで俺達のパーティーも既定の四人になる。そうなれば、昨日のような失態を犯すことはない。それどころか、パーティーの大幅な強化にもなる。これでSランク冒険者も夢ではない。


「お前がルドラか!」


 俺は、ルドラに近づき声を掛ける。今日からお前が入るパーティーのリーダーなんだからこれくらいの堂々とした態度で行かないとな。


「なんだい兄ちゃん、俺になんかようかい」


 ルドラはゆっくりとこっちを見て一睨み効かせてくる。俺は一瞬それにビビってしまった。


「おいおい、今日から入るパーティーのリーダーの事も知らないのか! 俺はAランク冒険者パーティーのリーダーをしているケイルだ」


「ほ~、あんたが赤い流星のリーダーか」


 男は俺の体をじっとりと見てくる。


 そして、


「本当にそんな体でAランクなのかい」


「ああ、そうだ」


「ふ~ん」


 ルドラは少し考える素振りを見せる。


「どうしたんだ!」


「いや、何でもない。これからよろしく頼む」


 ルドラは手を差し出してきた。俺はその手を取り握手を交わす。


「それじゃ、パーティーのメンバーを紹介するから来てくれるか」


「ああ分かった」


 ルドラは席から立ち上がる。その身長は俺よりも頭一個分くらい背が高い。座っているときよりも迫力に威圧感が凄い。


 俺は、ルドラを連れてキリエとライラが待機している所へ向かう。


「二人とも待たせたな」


 俺は二人に声を掛ける。その声に振り向く二人は、一瞬ルドラを見て固まった。それほどにルドラの目力が凄い。


「紹介する。こいつがルドラ=レーリック、今日から俺達のパーティーメンバーになる」


 俺の紹介に合わせてルドラも、


「ルドラ=レーリックだ。色々と噂話を聞いているかもしれないが、気にせずに接してもらえると助かる」


 ルドラは俺にしたとき同様、キリエとライラに手を差し出す。先ほどまで固まっていた二人はルドラの自己紹介を聞いて、


「私はキリエ=ミリクサー、よろしく」


「私は、ライラ=レート、よろしく」


 二人は簡単な自己紹介と共にルドラの手を握り握手を交わす。


「二人ともよろしくな」


 これでひとまず紹介は終了、残るは手続きだけ。


「俺はミラーの所にパーティー更新の手続きに行ってくる。そのついでに、手ごろな依頼を見てくるよ」


「りょうか~い」


 俺はミラーの元へと向かった。その間に三人が仲を深めてくれれば連携にも幅が出ると思っていた。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 それから数分、


「ケイルさん、これで手続きは完了になります。それと、Bランク依頼承認いたしました。昨日の事もありますのでお気をつけてください」


「分かっている。それに今はメンバーも増えて四人になったんだ! 昨日みたいなことが起こることなどない!」


 俺は、承認印が押された依頼書を持ってメンバーの元へと戻った。今回の受けたのBランクの討伐依頼、タイガーウルフの討伐依頼である。本当ならAランクの依頼を受けたかったがあいにくなかった。だから、小手調べがてらBランクの依頼に行くことにした。


「今日はこの依頼に行くぞ」


 三人に依頼書を見せる。


「タイガーウルフの討伐か、いいんじゃないか」


「そうね。Bランクだしね」


「うん」


 他のメンバーも皆賛成のようだ。


「それじゃ、町の北にある草原へ移動するか」


「そうね」


「早く終わらせて戻ってくる」


 俺達三人が向かうとしたその時、


「おいおい、いきなり目的地に向かうつもりか!」


「そうだが、どうかしたか?」


「どうかしたかじゃないだろう。ポーションとか用意する物があるだろうが!」


「何を言っているんだ! 俺達はAランクのパーティーだぞ! そして今回行く依頼はBランクのタイガーウルフの討伐だ! そんな依頼に準備なんて必要ない! ポーションが三本あれば十分だ!」


 昨日の依頼で、ポーションは全部使ったために買い足しておいた。これだけあれば十分だろう。


「何を言っているんだ! そんなもん準備の内に入らないだろうが!」


「おいおい、ルドラこそ何を言っているんだ、俺達はAランクのモンスター相手でも一撃で倒してきたんだ。そんな俺達がBランクのタイガーウルフ相手にダメージを受けるわけないだろう。まあ一応何かあった時のためにポーションを三本持っておけば問題ないんだよ。それに無駄に荷物なんて持っていたらそれこそ何かあった時に動けないだろうが!」


「オーケイ、このパーティーのリーダーはケイルだ。ケイルに従おう」


 ルドラも分かってくれたみたいで良かった。有名なAランク冒険者がまさかマイルと同じことを言うとは少し驚いたがな。

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