十、スキル付与

 俺とアリスは町をでて一時間程で南の森へとやって来ていた。この森は基本的に初心者冒険者の狩場とされている。そのためにそこまで強いモンスターはおらず、精々EランクかDランクのモンスターしか出てこない。そのため、今回の狙いであるアリスの育成にはもってこいなのであった。


 俺は昨夜、寝る前に久しぶりに自分のステータスを確認した。



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 マイル=マイヤー 15歳 人族 LV13


 スキル:火魔法 熟練度2 風魔法 熟練度1 水魔法 熟練度2 土魔法 熟練度2 

     回復魔法 熟練度1

     剣術 熟練度4 弓術 熟練度2 魔力隠蔽 熟練度2 気配隠蔽 熟練度2 

     身体強化 熟練度3 魔力操作 熟練度2 武器強化 熟練度3 

     属性付与エンチャント 熟練度1 毒耐性 熟練度2 麻痺耐性 熟練度3

     睡眠耐性 熟練度3 自動回復 熟練度2 偽装 熟練度3 

     消費魔力軽減 熟練度3

     長寿 成長加速 無詠唱 異空間倉庫


 右目:鑑定の魔眼 左目:低下の魔眼


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 昨日の久しぶりの戦闘でレベルが三、それと使ったスキルの熟練度も上がっていた。実際の所、ゴブリンをたった七体倒しただけで三も上がるわけはなく、精々に一上がるかどうかだろう。今回これだけレベルが上がったのはスキル成長加速のおかげであろうと思う。このスキルはいわゆるレアスキルと呼ばれる物で、生まれながらに持っている事以外で入手法がないスキル。その上人の中で持っている者は殆どおらず、先月偶然持っている人を見つけたときはラッキーだと思った。


 そして、もう一つ俺の中でラッキーだったのはアリスに出会えたことである。パーティーを組むこと以外にも俺はアリスと出会えてよかったと思っている事がある。それが、スキル長寿である。これは種族特有の物で、エルフや竜人族と言った数百年、数千年を生きる種族のみが持つスキルと言われている。そのため人間では決して手にすることが出来ない物なのだが、俺の右目の鑑定の魔眼を使えば種族限定スキルであってもコピーできるのである。


 そして今日、どうやってアリスを育てるのかと言うと、俺の右目の鑑定の魔眼の能力で唯一まだ使ったことのない物がある。この能力に関して本当の意味で信頼のおける者にしか使いたくなかったために今まで使用せずにいた。だけど今日、アリスのためにこのスキルを使おうと思う。


「アリスには昨日俺の右目の事は話したよね」


「はい! 鑑定の魔眼の事ですね」


「そうだ。今からその魔眼の力を使って君にあることをする」


「はいです」


「ただし、一つ約束をして欲しいことがあって、このことは他言無用、俺達だけの秘密だ。それと、この能力を過信しすぎないで欲しいと言うこと」


「分かりました。どうしてかは分かりませんが、マイルさんが望むのであれば私は決して誰にも話しません」


「うん、アリスはいい子だ」


 俺はアリスの頭を撫でてやる。すると、とても嬉しそうで、顔が少しにやけていた。俺も、アリスの髪の触り心地のよさに浸ってしまっている。


「マイルさんそろそろ」


 アリスに声を掛けられてハッとなった。完全に自分を忘れていた。


「ごめん、ごめん」


「別にいいです」


 アリスは顔を少し赤くしている。他の人が見てないとは言え、少し恥ずかしかったのだろう。


「それじゃ、これからすることを説明するぞ」


 俺は、真面目モードに入りこれからの事を説明する。


 まず右目の鑑定の魔眼の今まで使ってこなかった能力について。この能力はある意味では強力でチームの力を何倍にもすることが出来る。ただし俺の持っているスキルの数と熟練度次第にはなってしまうのだが。この能力は俺の持っているスキルを対象へと一時的に付与すると言う物。時間は一時間程。ただし、その時間の間は俺同様の効果を発揮することが出来る。


 今回はこの能力を使い、アリスに成長加速と身体強化、魔力操作、自動回復に消費魔力軽減を付与する。そうすることで、レベルの上がる速度上げて基礎能力の底上げと、消費魔力軽減を用いて少ない魔力量で多くの魔法を使い魔法系のスキルの熟練度を上げることが目的だ。身体能力強化に関しては、いざという時に素早く動きモンスターからの攻撃を躱すためである。


「本当にそんなことが出来るのですか?」


「たぶんな。理論上は可能なはずだが、何せやったことがないから成功するかは少し自信ないがな」


「大丈夫です! マイルさんならきっとできますよ」


「アリスのためにやるんだぞ」


「そうでした」


 ベロを出して、忘れてたと可愛い素振りをするアリス。


 俺は右目に集中してアリスに俺のスキルを付与する。


 その後すぐに鑑定を使いアリスのステータスを確認する。


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 アリス=マーベリック 13歳 エルフ族 LV3


 スキル:風魔法 熟練度2 水魔法 熟練度2 回復魔法 熟練度1 麻痺耐性 熟練度1

     魔力強化 熟練度1 長寿


 制限時間(60)ありスキル:身体強化 熟練度3 魔力操作 熟練度2 

              自動回復 熟練度2

              成長加速 消費魔力軽減 熟練度3


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 アリスのステータスに新たな項目が追加されていた。制限時間ありスキル、括弧の中は時間を表しているのだろう。それと俺がアリスに付与しようとしたスキルは全て付与できている。


「マイルさん? どうされたのですか? し、失敗ですか?」


「いや、成功した。完璧にスキルを付与できたよ」


「ですが、マイルさんがなんだか浮かない顔をしているように見えましたので」


「ああ、そのことか。いや、鑑定の魔眼の凄さを改めて理解したと言うか、強力過ぎて驚いていたんだ」


「そうだったのですね。でも、確かにこのことが他の人、マイルさんを利用しようと考える人達に知られたらかなりまずいことになりそうですね」


 アリスの言う通り、本気で俺を操ろうとすれば、精神系の魔法を使えば可能だろう。そうなれば、俺のスキル熟練度次第にもなるが、国一つ落とすことも可能になるかもしれない。より一層、左目の事は誰にも話せないと思うのであった。

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