八、アリスと冒険者ギルドへ
翌朝、昨日もいろいろなことがあり宿へと戻って来てすぐに寝てしまった。今日は昨日よりも少し早く目が覚めた。
「もう、朝か」
重たい体を無理やり起こして起きる。
「わ、わぁ~あ」
大きな欠伸が出る。今日はアリスと約束をしているためすぐに着替えて冒険者ギルドへと向かわないといけない。時間的にかなりギリギリ。早くしないとアリスを待たせてしまう。
俺は急ぎ着替えて宿を出ようとした時、
「おはよう、今日は早いね!」
宿の女将さんに声を掛けられた。二日前、夜遅くに来た俺は優しく受け入れてくれた人だ。
「おはようございます。今日は少し急いでますので」
「そうかい。それならこれでも持っていきな」
俺は女将さんから袋を受け取った。中を見てみるとサンドウィと言うパンとパンの間に野菜などを挟んだ食べ物と水が入っていた。
「冒険者が朝食も食べないで仕事行くんじゃないよ!」
「ありがとうございます」
笑顔で手を振って宿を後にする。
冒険者ギルドへと向かう道中、女将さんから貰ったサンドウィを食べながら先を急ぐ。
「アリス、待ってないといいけどな」
アリスはエルフ族少女、このミールの町ではとても珍しい。アリスの場合はそれだけじゃないだろうがな。あの容姿だ、町に来てすぐの頃をは色々と苦労したんじゃないかと思う。
そんなことを考えている内に冒険者ギルドへと到着した。辺りをキョロキョロと見渡していると、入り口の近くで誰かを待つ少女がいる。
「アリス、だろうな」
確証があるわけではないが、他の冒険者が皆、冒険者ギルドへと入って行く中その少女だけは、入り口に近くから動かずにいる。他の冒険者も気になるのか、チラチラとその少女の方を見ている。
これは早く言ってやらないとと思い早足でアリスの元へと向かう。
俺がアリスに声を掛けようと思った瞬間、
「あ! マイルさんおはようございます」
笑顔で挨拶してくれる。
「おはようアリス。遅れてごめんな」
「大丈夫です。それに私も先ほど来たところなので」
俺に気を使ってくれているのだろう。そんなアリスの気持ちを考えると明日からもっと早く起きないといけないなと思う。
「昨日はゆっくりと眠れたか?」
「え~と、マイルさんの事を考えていて少し夜更かししちゃいました」
顔を赤く染めながら下を向くアリス。そんなアリスの事を可愛いと思ってしまった。
そして、そんな俺とアリスを見て周りの冒険者から鋭い視線を向けられているのだった。
「そうか、アリスも俺とパーティーを組んだ時のことを考えてくれていたのか。そうだな俺も楽しみだったしな。これからのアリスの成長を見るのが」
「いえ、そういうわけでは……」
「なんて言ったんだ? 最後の方がよく聞こえなかったんだが」
「いえ、何でもありません。それよりも早く中に入らないと良い依頼がなくなっちゃいますよ」
「そうだな」
俺はアリスに腕を引っ張られてギルドの中へと入って行く。そしてその間、アリスは俺の顔を一切見てくれなかったのだ。
冒険者ギルドへと入った俺達は昨日と同じく依頼ボードの前へとやって来ていた。時間帯的に丁度いいタイミングでまだそこそこ依頼が残っている。
「アリスはいつもどんな依頼に行っているんだ?」
「私ですか!? 私はまだFランクなので採取依頼をこの一か月間繰り返してきたのですが、昨日みたいにモンスターに襲われることが時々あって、失敗と成功の繰り返しです」
「なるほどね。それじゃ、アリスに一つ質問。もしもアリスが今日一日でモンスターに勝てるようになるって言ったらどうしたい?」
「私がですか!? しかも今日一日で? そんなの無理に決まっています」
俺の言葉に対して首を大きく横に振るアリス。俺はそんなアリスの目を真剣に見ながら、
「俺の言うことでも信じられないか!」
正直昨日会ったばかりで信頼なんて築けていないだろう。でももしここでアリスが俺の事を信じてくれるのであれば俺はその信頼にこたえる事が出来る。
「私は自分には自身がありません。でも、マイルさんの事は信じられます」
「うん、俺もアリスの信頼にこたえられるように頑張りますね」
俺の笑顔を見て、顔を赤くする。アリスは凄く感情豊かな子なんだと思った。
そしてまた、周りにいる冒険者の視線が痛いことに気づいた。
俺は依頼ボードにあるEランクの討伐依頼を一枚取る。
「アリス、今日はこの依頼に行くぞ」
「分かりました」
俺達は依頼書を持って受付へと向かう。ただ、今日冒険者ギルドでやることは依頼を受けるだけではない。俺とアリスのパーティー登録をする目的がある。
冒険者が他の冒険者とパーティーを組む際、ただの口約束で結成となるわけではなく、冒険者ギルドでのパーティー登録が必要となる。この登録は二人からできて、特に決まりなどはない。ただし、パーティーランクは仲間の中で一番ランクの低い者のランクが適用されることになる。そのため今回の俺とアリスの場合であれば、俺でなくアリスのランクが適用されてFランクとなる。パーティーを組む際、ランクの決まりはデメリットでもあるが、メリットもある。ソロでは一つ上のランクまでしか受けられなかった依頼が二つ上までなら受けることが出来る点である。
俺達は、パーティー登録と依頼の承認を貰うための受付の列に並ぶのであった。
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