追放サイド 1
「ライラ! 回復魔法を早くしてくれ!」
「分かっている」
どうしてこうなってしまったんだ。自分に問いかける。昨日、このパーティーの邪魔者であるマイルを追い出した。これで俺達の力を百パーセントを引き出せると思っていた。なのに、今俺達は追い込まれている。相手はBランクのモンスターオーク。ゴブリン種で知能がない。攻撃手段も手に物棍棒と持ち前のパワーくらいでそれ以外には特にない。そのためBランクのモンスターの中でも比較的に倒しやすい部類に入る。
そのはずなのに、俺達の攻撃が全くと言うほど通用しない。いつもなら俺の剣で一撃か、キリエの魔法で余裕で倒せてしまうモンスターだと言うのにだ。
「どうなっているのよ一体? いつもならもっと魔法が効いたはずなのに」
キリエも魔法が効かず苦戦している。
「ケイル、回復完了よ! 私も加勢する」
ライラが背に持っている弓を構え矢を放つ。だがその速度はいつもの十分の一、しかもオークに当たるも刺さらず弾かれてしまう。
「え! 私の矢が効かない、なんで」
予想もしないことばかりどうしてこんなに起こるんだ。
「ケイルどうするの! このままじゃ私達全滅よ!」
「撤退しかない」
二人から声がかかる。
撤退? 何を意味の分からないことを言っているんだこいつら。今回の依頼はBランク、その中でも比較的簡単な依頼だ。そんな依頼を失敗したともなれば俺達赤い流星の信頼はがた落ちだ。そんなこと決してあってはならない。
「撤退はなしだ! ここでこいつらを倒して依頼を達成する」
「何を言っているの! こいつらはただのオークではないのよ。そうじゃなければケイルの剣が効かないわけないじゃない。しかもそんな奴が三体もいるのよ! 勝てるはずないわよ」
「ポーションも切れた」
「それがどうした。俺達はもうすぐSランクのパーティーなんだ。そのパーティーがこんなBランクの雑魚に負けられるか!」
俺は剣を持ち、目の前にいるオークへと向かって行く。先ほども攻撃は一切効かなかった。だから今度は剣だけではなく、
「ファイアーランス!」
火魔法のファイアーランスを放ちながら攻めていく。いくら防御力が高かろうと弱点はある。俺は目を狙ってファイアーランスを放つ。これで目を潰せば勝てると思っていた。
だが目の前で起きたのは俺の想像を裏切る光景。オークは自分の手で持っている棍棒で俺のファイアーランスをはじいた。そしてそのままの勢いで俺へと向かってくる。
「ケイル!」
心配する声で俺を呼ぶキリエは、
「障壁!」
結界魔法でオークの攻撃を防ぎ、俺を守ってくれると同時に、キリエとライラは二人そろって俺の腕を引っ張てくる。
「何をするんだ!」
「逃げるに決まっているでしょ!」
「このままでは死ぬ!」
二人は俺を必死に引っ張てオークから逃げようとするも、俺が必死でそれから逃れようとする。だがそんなことお構いなしに引っ張られていく。
そんな俺達を追いかけてくるオークに対してキリエが、障壁を発動して動きを止めている。
「離せ! 俺は一人残ってでも戦う。あいつらを倒す」
「何をバカな事を言っているのよ! そんなことしてたら死んじゃうじゃない」
「今は逃げるが勝ち。運が悪かった」
「そうよ。あんな希少種に会うなんてついてなかっただけよ。それに私達のパーティーには今一人足りないわ」
昨日マイルを追放して一日しか経っていない。そのため新たなパーティーメンバーを見つけることが出来ずに今日は三人で来ていた。
「そんなこと関係あるか!」
「認めて、私達は負けたのよ!」
ドストレートに言ってくるライラ。その言葉が胸に突き刺さる。
それから俺は何も言えなくなってしまい、町へと戻るまで一言も言葉を話さずにいた。街の中に入ってからもただキリエとライラの後ろを付いて歩くだけ。
「着いた」
ライラの言葉に顔を上げると、目の前には冒険者ギルドがある。既に空は暗くなり、ギルドから出てくる人は少ない。
扉を開けて中に入ると、酒場で食事をしている冒険者が数人いるくらいで他にはいない。俺は受付にいるミラーの元へ今日の報告にいった。
「あら、ケイルさんそんなにボロボロになってどうされたんですか?」
「オークにやられたんだ。いつもなら余裕で勝てるはずのな」
「そうだったのですか。では今日の報告は依頼の失敗ということですね」
「そう言うことになる。手続きを頼む」
「かしこまりました」
これで俺達の評価は下がることになる。どうしてこうなってしまったんだと頭を抱える。
「それとミラー、新しいメンバーの募集はどうなっている!?」
「それでしたら数名の冒険者より申し出が来ています。こちらがリストとなります」
俺はパーティーへの加入希望の冒険者のリストを受け取る。そこに書かれている名前は五人、その全員がソロでの冒険者ランクAランクのツワモノぞろい。その中でも一人目を引く者の名前があった。
ルドラ=レーリック、この街でもかなり有名なAランク冒険者で、ソロでドラゴンを倒したこともあるらしい。これほどの逸材がこのパーティーへの加入を希望してくれているとは嬉しいことだ。俺は、ミラーさんにルドラに会いたいと伝えると、
「分かったわ。ルドラさんにはこちらから伝えさせていただきます。明日の昼、ギルドへとお越しくださいませ」
「分かった」
それだけ言って俺はキリエ達を引き連れて宿へと戻るのだった。
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