第7話 告白
母が寝てからが、やっと私の自由時間だ。布団にくるまりながら、スマホの青い鳥をタップした。最近はずっとこの繰り返しだ。
『ただいまー』
物書きたちが集まるDMグループでの会話。ここだけが、唯一の私が私らしく……いや、それ以上でいられる場所だ。
『おかえりー』
『おつつーん』
ルームにいたコたちが次々に声をかけてくる。今日あったことや愚痴、ニュースやいろんなことを眠くなるまで会話し合う。ここ最近、ストレスから眠れなくなった私は、寝落ちする明け方までココにいることが増えた。そんな様子をみんなが心配してるのも分かっている。それでもリアルの苦しさから逃れられる、ココを辞めることは出来なかった。
『いつまで起きてるんだ? 寝ろ』
『あとで目が覚めてもきっとみんないるから、寝ておいで?』
『ん-。眠くないんやもん』
『眠れるYouTubeとか見てみたら』
『YouTube見たことない』
『え? じゃあ、眠れる音楽とか』
『うち、音出るモノ全部禁止やし』
そう打ち込んで、ふと悲しくなってくる。何もかもが禁止されて、布団の中のこの細やかな時間しか自由のない暮らし。私はいったい何のために、誰のために生きているのだろう。そんな疑問を持ち始めると、もう考えは止められない。
『1個聞いてもいいか?』
『なぁに?』
『いつも、家では、どんな風に過ごしてるんだ? ああ、嫌なら無理に言わなくてもいいんだけど。だけど少し……、気を悪くしたら、ごめんな? そこに自由はあるのか?』
『自由……』
みんなになら、ここの温かなメンバーたちなら打ち明けてもいいのかな。そんな軽い気持ちと、言えば少しは楽になれるのではないという気持ちから、私は自分のこと、母のことを話した。
帰宅後2時間で家事を終わらせ、その後は音も出せずに寝なければいけないこと。音楽もゲームもテレビすらも家では禁止されていること。食べるモノも限定され、食費はもらえないこと。基本、お酒も外食すらも禁止で、土日は母の散財に付き合わなくてはいけないこと……。
その場にいたメンバーたちは、ただ静かに相づちだけを打ち、私がすべて吐き出すまでずっと聞いてくれていた。文字にすると、たしかにコレは結構な生活だなぁと、一人私は
『言ってもいいか?』
『うん。なぁに?』
私が言い終えるのを待っていたように、先ほど質問を投げかけた子が声をあげた。この子とはよくココや個別でも、いろんな相談をしていて、とても仲の良いメンバーの一人だ。
『おまえのいるとこ、ソコは異世界なのか?』
『え? いや……日本だけど』
『それなら聞くけど、奴隷でもやってるんか? んー、もっと言えば、奴隷の方がまだマシな生活だと思うぞ』
奴隷という言葉に、即座にラノベを思い浮かべるあたり、物書きの癖だなぁと思う。確かに、昨今のラノベに出てくる奴隷は、奴隷と言っても綺麗な服を着て、ご主人様に仕えていたっけ。
『そうやねぇ。服も黒しか持ってないし……。ふふふ。使えないコ、不細工、どんくさい……。あぁ、確かに酷い言われ様やわwww』
『おかしいだろ。なんでそこまで我慢しなきゃいけないんだ? もう一度言うぞ? 奴隷のがまだマシだぞ』
『そっか……。私の生活、そんなに酷かったんやね……』
心のどこかでこの不自由過ぎる生活にも、苦しさにも、ずっとずっと疑問は持っていた。でもそれを認めてしまえば、自分の中の今までの全てが崩れ去ってしまう気がしたから。それが怖かった。自分を作ってきたモノ全てが、間違っていたと思うこと自体が。
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