第84話 東郡・思い出という黒歴史・青州黄巾賊の予告
四月。
これにより
山積みの竹簡に埋もれた
勇猛な軍を持ち、官軍さえ掌握した董卓があっさり死んだ衝撃よりも、
そして一人になると、連合の思い出が心によぎった。
……毎日宴会に明け暮れる仲間たちを拒否し続け、孤立した事。
孤立しても平気だと強がり、あげくに単独で出撃して、壊滅状態の大敗北をした事。
兵士募集に失敗して全裸で大号泣したあげく、
……ろくな思い出がない。
少女は今さら気づいたように、眉をひそめて顔を赤らめ、うめいた。
湧き上がる羞恥にフタをするように、あわてて別の事を考え始める。
……救世主といっていい、
彼は以前、
つまり董卓を含めて、彼は父親殺しを二回もしたのだ。
彼が
事務の仕事の経歴がある。
当然、親孝行が大切と教える
それでもなお、二回も父を殺すとは……。
そして報告によると、彼は今、悲惨な状況に陥っているらしい。
……なんだか殺人鬼がうろついてるようで、スッキリしない話だ。
とはいえ私はこの人物と一切関係がないし、これからも関わることはないだろう。
もう故郷にでも帰って、静かに暮らせばいいのに……。
気持ちを切り替えるように、
机に広げられた竹簡と、雑に放り出された地図に視線を向ける。
自分の
十万人もの山賊集団、
軍事面も
このまま、穏やかな日々が続けばと、思い始めていた、そんなある日である。
「
その声に、少女は執務室の入り口まで駆け寄ると、彼を出迎えた。
「よく無事に帰った、
「もちろんです」そして再び一礼する。
「
少女の喜色は消えた。陳宮は構わず、言葉を続ける。
「彼らは超大軍なのに、移動速度が早い。
そして人の数に頼った狂暴な戦い方をいたします。
その数、兵士百万人」
「百万……!狂暴な百万の兵……」
呆然としてつぶやいた主人だったが、同時に、目を瞬かせながら、思考するように視線を動かす。そしてそれが止まると、すっと動揺の気配は完全に消えた。
まるで自分だけが取り残されたような気がして、陳宮は戸惑いながら尋ねる。
「ま、まさかとは思いますが……この一瞬で、百万の兵を倒す方法を思いついたのではないでしょうね……?」
「倒す?百万人を?」
その返答に、陳宮は自分が見当違いをしたと気づき、思わず固く口を閉じる。
……違うのか?ならば、追い返す方法だったか……?
どちらにしても、優れた軍人は迅速に判断し行動をするというが、その片鱗を見た気がする……。
「報告の続きはあるのかい?」
陳宮の思考を遮るように、主人は声をかけた。
底知れぬ気持ちを大きくしつつ、報告を続ける。
「兵士のほかには、その家族も一緒に行動しております。
ですので少なくとも兵士の数の二倍以上が、
この人数はもう、以前の
戦火で焼け出された者も合流し、この超大群になり彷徨っているのです。
流民にとっては、最後の拠り所となっているのでしょう。
彼らが強い理由が、私にはわかる気がしました。
きっと自分たちの居場所を守る為に、死に物狂いで戦うからでしょう……」
少女は無言でうなずいたので、陳宮は続けた。
「
ですが、
それで……」
ここで
二人の香が混じり合う。
「
そしてあなたに
ぜひ、来るべき戦いのために、最高の力を得るべきです」
少女はその提案に熱い鉄器に触れたごとく飛びのくと、彼の顔をまじまじと見た。
つづく
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