第24話 しあわせ占い

「ちょっとそこの少年」


雅也はいつもの通り、銭湯に行こうと向かってたところ、銭湯手前のコインランドリーを通り掛かったところ、声をかけられた。

声の方を向くと、コインランドリーの前にいつもは無い木の机が置いてあり、そこに座ってる人がオレを見ていた。

「はい?オレですか?」

「そうだ、貴方です、少年」その人が言う。

「なんですか?」と雅也は尋ねると、

「ま、いいから、ちょっとこっちに来て、そこに座りなさい。」とその人が偉そうに言う。

雅也は恐る恐る近寄ると、その人はスーツ姿でサラリーマン風の男の人で、髪は子供みたいな裾を刈り上げたおかっぱ、四角い黒縁の眼鏡を掛けている。言われた通りにその人の前の椅子に座ってみた。机の上には台形の盾みたいなものが、立っていて、"しあわせ占い"と汚い字で書いてある。誰が見ても、怪しい占いのように見える。

雅也は「結構です」と言って断って立ち去ろうとすると、「貴方の背中に不吉な影が見える!」と怒鳴るように言うので、「え?」と立ち止まった。如何にも偽物の占い師が使いそうな手口じゃんと思ったが、

「まぁ、もう一回座って。私は幸せを導く占い師だから、とにかく聞いてください。」と占い師が言うので、聞いてあげることにした。渋々雅也は座ると、面倒くさそうに耳を傾けた。

占い師「貴方、好きな人いるでしょ?すごく大事な付き合ってる人。」

雅也「はい。まぁ。」

占い師「その人は近々、遠くに行ってしまうよ。」

雅也「ん!?まさかー。別れるってことですか?」

占い師「そう。別れて、その人は遠くに行く。」

雅也「ホントですか??」

占い師「本当です。10日後です。」

雅也「うそでしょ?」

占い師「本当です。今その人は苦しんでいます。」

雅也「苦しんでる?何を?」

占い師「事実をです。遠くに行かなくてはならない事実に迷って苦しんでいます。気づきましたか?」

雅也「全く気づきません。昨日も普通に電話で話しました。」

占い師「それはきっと言いたくても、話せないでいるようですね。」

雅也「何でわかるんですか?その人のこと見えるんですか?」

占い師「はい、見えます!」

雅也「えー、うそー!?」

占い師「では、、その方は貴方と小学校から一緒ですね?好きな色は水色ですね?テニスをやっていて、映画が好きですね?」

占い師は、美佐のことを次次当てていき、雅也はびっくりしている。

占い師「わかってもらえましたか?お相手の方が見えること。信じてもらえましたか?」

雅也「まぁ。で、美佐が遠くに行っちゃうことは確か?」

占い師「はい。残念ながら。ただし、やってみる方法があります。聞きます?」

雅也「はい。勿論聞きたいです。」

占い師「ではお話ししましょう。まずひとつ、その方の苦しんでる話しを聞いてあげてください。そして応援してあげてください。そしてもうひとつ、素敵なキスをしてあげてください。愛情持った素敵なキスをしてください。

雅也「あ、はい。それをすると、美佐は遠くには行かなくなる?」

占い師「は、はい。」

雅也「わかりました。」

占い師「期限はあと10日ですからね、急いでください。それとキスですが、強引にしたり無理にすると失敗となり、叶わなくなることがあるので気をつけてください。」

雅也「わかりました。10日か。。」

占い師「あとこれを、貸しますので持ってってください。」

占い師は何か手の平くらいの大きさの四角くて薄い無線みたいな物を手渡した。

雅也「これは?」

占い師「電話です。私とだけ話せます。困ったら電話してください。」

雅也「はい。わかりました。ところで何でオレを?」

占い師「いや、今日たまたま偶然ですよ。君にとってはツイてましたね。明日また私は違うところに行ってしまいます。ではがんばってください。」

雅也「お金は?」

占い師「要りません。貴方が幸せになってもらえばそれでいいです。では検討を祈ります。」


(美佐が遠くに??まず、確かめて話しを聞いてみよう。)雅也は占い師の言っていることは半信半疑だったが、ひとまず信じて行動してみようかと考えていた。




トントン

(美佐ー、入るわよー。」

美佐の家、お母さんが美佐の部屋に入ってくる。

母「美佐いい? 美佐ね、美佐の気持ちもわかるけど、お父さん、前からイギリスで研究の仕事したいって言ってたでしょ?やっと夢が叶ったんだから、一緒に行ってあげましょう。」

と美佐の母は、イギリス行きを美佐に納得してもらおうと話した。

美佐「わかってるんだけどさー、早くても中学卒業してからって、言ってたじゃない?」

母「早まったのは仕方ないでしょ。お姉ちゃんもイギリスの大学に行きたいって言ってるし、美佐もいつか留学したいと言ってたでしょ?そう思うと早くていいのよ。」

美佐「うーん、、わかったよ。でも••」

美佐は、折角楽しい今の中学生生活そして雅也との仲が、終わってしまうことが辛かった。





「え!?勝ったの?東郷に?」

その夜、美佐との電話。

雅也「うん!勝ったよ!先輩達皆カッコ良かったよー」

美佐「そっか、良かったねー。じゃ来週は準決勝?」

雅也「そうだね。勝ったから、来週末、準決勝、更に勝ったら決勝だー!」

雅也(ん!?がーん!!やばい!ってことは、土日はダメってことか、占い師の言う期限までの次の土日が使えないのは厳しいなぁ。どうしよう??)

美佐「もしもし?雅也くん?どうしたの?」

雅也「ごめん、ちょっと考え事してた。」

雅也(土日が使えない。じゃ8日間の内にしなくちゃ。)

雅也「ところで美佐さ、何か悩んだり苦しんでることない?」

美佐「え、、ないけど、、何で?」

雅也「例えば、遠くに行くか行かないかとか?」

美佐「え!?お母さんから聞いた?」

雅也「いや、お母さんとは話したことないから。」

美佐「そっか。。うーん、実は、、ちょっとある。」

雅也「えー!?やっぱあるんだ??」

雅也はあの占い師、偽占いじゃなかったんだとびっくりしたと同時に、ホントは偽であってほしいと願ってた淡い期待が崩れた。

雅也「そうなんだ。ねぇ、美佐。悩んでるんだったらオレに話してもらえないかなぁ?ダメ?」

美佐「うん。ダメじゃないけど、雅也くんショック受けちゃうんじゃないかなぁと思って。」

雅也「え??余計気になっちゃうじゃん!」

美佐「ごめん。雅也くんに話そうか、話さないままにするか、悩んでたんだ。」

雅也「そうなんだ。。でも美佐聞かせて。オレ大丈夫だから。まず遠くに行くってどれくらい遠いの?どこなの?」

美佐「うん。遠いよ。すごく遠い。。」

雅也「ん?どこ?」

美佐「えっとね、、、イギリス」

美佐は少し時間を置いた後言った。

雅也「•••イギリス!?」

美佐「うん。」

雅也「イギリスって外国じゃん。当たり前か。えーイギリスー!?」


イギリスかよー!!


10日後に美佐がイギリスに行っちゃうの!?


雅也は頭が真っ白になった。


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