第23話 皆で勝つ

「岩田ー!ファール気をつけろー!!」

あのおじさんが叫んでる。おじさんもこの試合の経緯を知ってるいるのか??

イワケンくんの知り合いなのか?

大人雅也は、不思議そうにおじさんを見ていた。


七郷56-57東郷

昔通りに3pまで接戦だ。


さ、4p開始だ。

(ここからだったよな?)大人雅也は、試合を見ながら行方を思い出していた。

そして、美佐のことも。。

そうだ。美佐はイギリスの話し、2週間前に言われたって言ってたなぁ。7/12ってことは、もうお父さんから話し聞いて、悩んでる頃かも?そうだ、あの時、美佐の話し聞いてあげられなくて悪かったなぁと思ったんだった。


「わー」歓声が湧く。

スコア見ると、七郷56-59東郷

3点差か。


「岩田ー!この後焦るなー!一人でやるなよー」おじさんが一生懸命叫んでる。

大人雅也(そうだ!この後イワケンくん、ファール重ねて退場しちゃうんだった)

岩田はそうなることを勿論知らずに、左右にドリブルをして相手を振り、ディフェンス2人の間を強引にドライブで入って行く!

ピッ! (チャージング)


おじさん「ほらー!言ったろー!一人でやるのはやめろ!!シバケーン!お前もっと言えよー!村田もー!お前コーチだろ。岩田だけにやらすな!指示しろよー!!」


岩田「ん?さっきから叫んでるあのおっさん誰だ?誰かの親父か?でも、オレのこと呼びつけだもんな。知らねーんだけど。」

柴山「誰だ?でもまーそうだ。イワケン!お前マークされてるから、皆に回せよ。」

岩田「大丈夫だよ!」

柴山「イワケン、皆のこと信じろよ。今まで皆でやってきたじゃねぇか。」

村田「あの人知り合いか?失敬な人だな。ま、いいか。でも確かに、岩田、バスケはひとりじゃ勝てないぞ。お前勝ちたいんだろ?」

岩田「何が何でも勝ちたいです!」

村田「だろ。だったら皆で勝とう!お前がファールアウトなったらおしまいだろ?」

岩田「先生わかりました。皆もわかったよ。」

村田先生、メンバーもほっとする。

岩田「よし、皆で勝つぞ!」

メンバー「おー!!」

おじさん「がんばれー!勝つぞー!」

大人雅也(おじさんナイス!でもめっちや怪しまれてるよ。笑)

大人雅也(よしオレも応援するぞー!)

「そう!そう!みんなで!みんなで!」

「おーい!雅也ー!お前ももっと声出して応援しろよ!」

中学生雅也(誰だ?誰かのお父さんか?わかったよ。)「さー行きましょう!ディーフェンス!」


東郷の攻撃、小さいヤツからまたも大きい男に回す。すかさず、村山が「入れさせない」とつくが、大きい男にグイグイと押し出されシュートを決められる。

七郷 56-61東郷


「村山ドンマイドンマイ!次次!」七郷メンバーが声をかける。

「七郷!七郷!」七郷応援団もヒートアップしてきた。

七郷、木崎が「気持ちで負けんなよ!」と叫び、ボールを運ぶ。岩田はまたも東郷のディフェンスに完全に封じられている。柴山が走って行くのが見え、木崎が柴山にパスを出す。受けた柴山はサイドからスリーを狙う。が、惜しくも、リングに弾かれる。

リバウンドを取った東郷は、素早くオフェンス体制を作る。

小さいヤツからそして、大きい男にパスを出す。村山が大きい男の前に守りに入る。

岩田「村山頼んだがんばれ!」

大きい男が、村山を押し出しフェーダーウェイでシュートを放つ!

岩田(う、くそ。ダメか?)

村山は、咄嗟に限界まで手を伸ばし思いっきりブロックに飛んだ!

ボーン。大きい男のシュートに、飛んだ村山の指先が辛うじて当たってボールが落ちる。

「わー!!」歓声が湧く。

おじさん「ふー、ひとまずファールアウトの場面は防げた。」

木崎がすかさずボールを取りドリブルで全力で持ってきて岩田にパスをする。岩田に東郷ディフェンスが素早く付く。岩田はフェイクして、柴山にパスを。

岩田「頼む!」

柴山のスリーポイントシュートは綺麗にアーチを描きゴールに落ちた。

「わー!!!」歓声が大きく鳴り響く。

七郷59-61東郷


岩田「村山、シバケン、ナイス!」

村山は、照れ笑いしながら任してくださいのポーズをとった。

柴山は、岩田にナイスパス!と指差した後、天井に向けて拳を挙げた。

岩田「よし、逆転するぞ!」


東郷、いつもの小さいヤツが運んで、今度はシューターのヤツにパスを出した、と同時に菅田が飛び出しボールをカットした!七郷一斉にオフェンスに切り替えゴールに突っ走る!菅田のスチールから木崎、木崎から柴山へ。また柴山がスリーか?と東郷ディフェンスが飛んでくる。

柴山「イワケン決めろ!」と柴山が岩田にパスを出した。岩田は、スリーポイントライン、シュートフォームに入る。

ボールが飛んで行く。

•••

ストっ!

岩田のシュートが入った!

「わー!!!」今日イチの大歓声だ!

逆転!!

七郷62-61東郷

岩田、柴山、菅田がタッチし合う。


勢いに乗った七郷は、次の東郷の攻撃も村山が止め、もう一本追加点でまたも岩田がスリーを決めた!

「わー!!!」


ブー!試合終了


七郷65-61東郷



勝った!


勝った!!


七郷が勝った!!!


「イエー!!!やったー!!!」


「勝ったぞー!!」

岩田とメンバー全員飛び上がる。そこにベンチメンバーが合流して、抱き合いながら喜んでいる。


応援団も皆両手を挙げて喜んでる。

素晴らしい試合に、東郷応援団からも拍手が贈られる。久我山学院のコーチも拍手しながら感激している様子だ。


おじさんを見ると、しゃがみ込んで、何か言ってるような?胸の前で拳を握っている。



オレは、今起こったことを、感動してる。

これは夢なのか本当のことなのか、わからないが、本当であってくれと願った。

おじさんの正体は、イワケンくんじゃないか?と思った。背の高さとか雰囲気がよく見ると似てる気がする。老けてしまったが、きっとイワケンくんだ。

この試合に負けたことが、悔いだったんですね。これで見事、悔い摘出!になりましたね。イワケンくん、よかったですね。おめでとうございます!

オレはイワケンくんおじさんに向かってお辞儀をして、ガッツポーズを見せた。

イワケンくんおじさんは、涙を拭きながら、笑ってるように見えた。



階段を降りていると、横を麻衣子が抜いて降りていった。

大人雅也(あっ、麻衣子!この後オレと抱き合って、美佐と揉める原因になる、、)と思って止めようと思ったら、麻衣子と雅也はすれ違いに両手でハイタッチしただけだった。

そうか、勝ったことでこれも変わったんだな。


(色々よかったな。)大人雅也は学校を後にした。



さ、今度はオレの番だ。悔い摘出だ。

さて、どうするか。。


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